【レポート】
「がんばってください」「『蒟蒻畑』が大好き。また食べられる日を待っています」-。兵庫県の1歳男児が窒息死した事故を受けマンナンライフ(群馬県富岡市)がミニカップ入りこんにゃくゼリーの製造を中止して2週間。同社にとって「思いがけない事態」が起きている。連日多数寄せられているメールや電話の98%が同社を激励する内容だというのだ。ネット上の署名サイトでもこんにゃくゼリー販売中止に反対する署名数が2万を突破。同社への"エール"は大きくなる一方だが、いまだ製造再開のめどは立っていない。地元からは"市のシンボル的存在"である会社の"危機"がもたらす地域経済への影響を心配する声も上がっている。
同社品質管理室によると、メールや電話は国民生活センターが兵庫県の事故を公表した先月末から急増。今月2日、野田消費者相が同社の幹部に自主回収などの自発的検討を要請したことが報道されると、「製造を中止しないで」と激励する内容のものが特に増えたという。8日には「対策を講じるには時間的に困難」としてミニカップ入りのこんにゃくゼリー「蒟蒻畑」の製造を中止。それ以後は一段と多くのメールや電話が来るようになった。「事故の責任は大きく、(製造中止)は当然」といった非難の声もあるにはあるが、98%は激励する内容だという。
また、さまざまな社会問題などに関する署名活動をネット上で始められるオンライン署名サイト「署名TV」では今月3日からゼリーの販売中止に反対する署名が集められているが、23日午前9時現在の署名数は2万4,000を超えている。署名者が書き込んだコメントを見ると製造・販売の再開を願う声のほか、「こんにゃくゼリーが悪いわけではない」「こんにゃくゼリーを与えた側にも責任はある」といったこんにゃくゼリーの"擁護論"も目立っているとのこと。同サイトを運営するユナイテッドピープル(横浜市)では「(署名の)勢いが止まらない。生活に密着した問題ということもあり多くの人が自分の問題としてとらえているからでは」と分析、「来月3日の期限までに4万を超える可能性もある」とみている。
マンナンライフにとってもこの事態は"想定外"だったようだ。「これだけ支持いただいていることはとても励みになっている。一日も早くみなさまのご期待にお応えできるよう安全な商品をつくっていきたい」とコメント。しかし一方で「小さなお子様の命が失われたという結果は重大。今後の対応についてはしっかり検討していきたい」と話している。
「全国こんにゃく協同組合連合会」など業界3団体は16日、ゼリーの形状や弾力性などの改善に向け国民生活センターや食品総合研究所からもメンバーを集め「こんにゃく入りゼリー物性等改善方策検討委員会」を発足させた。また、自民党内でもこんにゃくゼリーについて、形状などを規制する議員立法の策定に向けた動きがあると報道されている。
こんにゃくゼリー問題ではさまざまな動きが出てきているが、同社自体は製造再開に関して「まだ何も決まっていない状態。年内の再開はないだろう」(同社品質保証室)という状況。業界の検討委員会や国の動きなどを注視しながら、ゼリーの形状や警告マークの改良などについて協議を重ねていく"我慢の日々"はまだまだ続きそうだ。
「『蒟蒻畑』は市のシンボル的存在。地方への視察のお土産にはいつも持って行った」。そう話すのはマンナンライフが本社をおく富岡市の市議会議員だ。富岡市は隣の下仁田町とともにコンニャクの産地として知られている。地場の大きな食品会社であるマンナンライフが"復活"できないとなると地域経済への影響も大きいとみられている。また「こんにゃくの富岡市」のイメージが定着しているなか、「今回の事故や製造中止で、富岡市自体の印象も悪くなってしまうのでは」(同市議)と市のイメージ悪化を心配する声もある。
従業員数は非正規社員10数名を含む約70人とそれほど多くはないものの、同社は100~110億円とみられるこんにゃく市場の売上の3分の2を占める「最大手」だ。昨年度の売上は約70億円に上り、その9割弱がこんにゃくゼリーだったという。「クラッシュタイプ(液状ゼリータイプ)の蒟蒻畑の製造は継続しているので、現時点では雇用状態に変わりはない」とのことだが、主力のミニカップタイプの製造中止が続けば従業員の不安も大きくなっていくはずだ。
また、市の財政への影響も懸念されている。同市の年間法人市民税7億円の「かなりの部分を同社に依存しているからだ」(同議員)。電話取材に応じたこの議員も「わたしも『蒟蒻ゼリー』をよく食べていた。地元の有力企業で、テレビCMを全国に流せるほどの会社はここにはほかにない。地域のためにもぜひ早い時期の製造再開にこぎつけてほしい」と祈るように話している。
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