ユニクロ・勝部健太郎氏(左)とProjectorの田中耕一郎氏(右)

webデザイナーのための学園祭「.Fes 2008 TOKYO」(ドットフェス2008)のメインステージにて「UNIQLOCK, aroud the world -世界を席巻するユニクロのWeb戦略-」が開催された。「UNIQLOCK」を手がけるProjectorの田中耕一郎氏とユニクロ・勝部健太郎氏が登壇し講演をおこなった。

「UNIQLOCK」は、ブランド認知向上などを目的とし、「MUSIC×DANCE×CLOCK」という言語の壁を越えたコミュニケーションをコンセプトにしたユニクロのWEBプロモーション。ブログユーザーを対象に、音楽とダンスで時刻を表現するオリジナルブログパーツ「UNIQLOCK」を配布。エンタテイメント化させたブログパーツを世界のユーザーが愛用。ユニクロの世界観をグローバルに発信した。そして同プロジェクトは2008年の世界三大広告祭すべてでグランプリを獲得することになる。

第1弾は2007年6月から9月まで展開。ドライ商品のプロモーションと、ユニクロのグローバル規模でのブランド認知向上を目的としてつくられた。この時点で、世界7,000万のブログユーザーをターゲットとして展開

世界66カ国、約1万3,000(累計)に波及していた「UNIQLOCK」に、新作ダンス映像を含めた第2弾を、2007年10月から2008年4月まで配信。あらかじめ設定した時間に好きなメッセージを配信できる「WORLD.ALARMPLAY」を追加した

そして現在も好評配信されている第3弾は、モバイルやSNSへの展開も開始。現UNIQLOCKガールズに加えて新メンバー4名が参加し、アニメキャラクターとの融合も図られている。2008年4月時点で視聴数が1億を超えた

「UNIQLOCK」はこのイベントが開催された10月13日現在、214カ国で配信され、1億6,700万PVという驚異的な数字をたたき出している。

勝部氏は「これからの広告展開の手法は今までと180度変わってくると思います。目的に合わせて適切な媒体へ適切に流通させていくことが求められると思います。だから、テレビというメディアありきといったコミュニケーションは企業にとっては大きなリスクになってくるはずです。広告は自分たちのコンテンツを作り発信していくというスタイルに変わっていくと思います。今後は広告会社とメディアという関係から、企業とクリエイティブ・ディレクターという非常に単純な組織で情報を流通させるというのが世界の潮流になると思います」と語った。さらに、「このプロジェクトでは、意思決定を簡素化し、決定については僕と田中さんだけで行いました。簡素化した意思決定のレイヤーを持つことで、クリエイティブ純度を高く保ちながら外へ発信できる。そこにクリエーターと企業がいっしょに成長していく機会があると思う」とも語った。

一方、田中氏は「UNIQLOCK」実現までの経緯を語った。「WEBで本当におもしろい企画は何か考えたとき、メディアとしてのWEBのポテンシャルが何かを見つけて、メディアと表現が重なるアイデアを作るということを心がけました。『UNIQLOCK』に関しては、ブログやSNSというメディア上で最適の表現は何かを考えました。様々なブログを見ていると、右左のスペースが空き地だと思ったんです。そこに貼られているものはユーティリティのあるものでなければならない。ユーティリティとしての視点と、コンテンツとしての面白さをうまく繋げようとしました。そこでユニクロらしい表現を考えたときに、『服を着たパフォーマンス』プラス『時計』となったんです」

ユニクロの服を着たパフォーマンスと時計の組み合わせという、ユニークなコンテンツが支持された

さらに田中氏は、第1弾から続くこだわりや「UNIQLOCK」の拡張性についても語った。「シリーズ化してずっと続けていくと決めていました。一方で、毎回トピックに上がるような、新しい変化を加える必要があるので、毎回考えています。時計とは時の表現。時というものをある種いろいろな視点でビジュアライズするということが『UNIQLOCK』に与えられているお題だと思っています。そういう観点から『MIDNIGHTモード』が生まれました。また、今後はWEBの外側に出て行く設計も考えています」

最後に田中氏は「目的を達成するためにベストなアイデアやプロセスは何なのかを問い続けるということが大切です。僕は常に物事を逆説的に捕らえたい。常に目的に対して、今までにないアイデアや方向とは何なのかということを考えるんです。僕がこだわるのはそこだけかもしれない」と語った。

勝部健太郎(UNIQLO)

1998年に慶応義塾大学を卒業後、銀行のマーケティング担当などを経て株式会社ユニクロに入社。2005年にメディア情報発信チームを立ち上げ、UNIQLOブランドのWeb戦略を推進。「UNIQLOCK」、「UT WEB」、「UNIQLO JUMP」、「UNIQLO TRY」、「DRY IN MOTION」など、数々のWebプロモーションを担当している。「UNIQLOCK」で世界三大広告賞であるカンヌ国際広告祭、The One Show、CLIO AWARDSのすべてでグランプリを受賞

田中耕一郎(Projector)

1973年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。広告制作会社TYOを経て、2004年にProjectorを設立。CUPNOODLE FREEDOM PROJECT、BEYES表参道ヒルズ店インタラクティブインスタレーションなど、 独創的なインタラクティブプロジェクトで広く注目を集め、2007年から手がけているUNIQLOのblogパーツプロモーション「UNIQLOCK」では、世界中からの注目される存在に。