【インタビュー】

携帯が怖くなる…スピルバーグ総指揮『イーグル・アイ』 - 監督D.J.カルーソが語る10年越しの製作秘話

    光岡三ツ子  [2008/10/17]

    テクノロジーに翻弄される恐怖――ごく普通の男女が巻き込まれた驚愕のミッション

    「私に従いなさい。さもないと死ぬことになる」――突然かかってきた正体不明の女の電話。その瞬間からごく普通の青年ジェリー(シャイア・ラブーフ)の平凡な日常は急展開を始める。

    テロ容疑によるFBIの拘束、大掛かりな脱出劇。謎の女は携帯電話、ATM、GPS、電光掲示板、監視カメラなどあらゆるネットワークを駆使してジェリーの行動を徹底的に監視し、コントロールしていく。当局に追われる身となったジェリーは、同じく謎の女に導かれたシングルマザー、レイチェル(ミシェル・モナハン)と合流。ふたりはその姿なき女が敵か味方かもわからぬまま、超大国アメリカを激震させる巨大なミッションの遂行を強いられていく。

    全世界67億人の中から選ばれたのは2人の男女。生き延びるには、従うしかない

    『イーグル・アイ』はスティーブン・スピルバーグ製作総指揮による、デジタル・テクノロジーが呼び覚ます現在の悪夢を描いたアクション・スリラー大作だ。今回は来日したD.J.カルーソ監督に単独インタビューを行うことができた。

    早朝からテンション高く取材に応じたD.J.カルーソ

    ――『イーグル・アイ』では、登場人物が携帯電話を一方的に乗っ取られたり、監視カメラで行動をすべて見張られてしまうという状況に非常にリアリティがあります。観終わったあと、自分の携帯や街中の監視カメラが怖くなりました

    携帯電話やカメラは日常的に使われる便利なテクノロジーですよね。でもこのテクノロジーというものは、ジョージ・オーウェルの『1986年』に出てくる"ビッグ・ブラザー"みたいに独裁的な体制が入り込む入り口にもなり得るんです。この映画では、愛すべきテクノロジーが我々に敵対したときにどうなるかを描いています。撮影後は僕も少しパラノイアックになりましたね(笑)。

    でも「映画を観終わったあと、思わず携帯電話のスイッチをOFFにしてしまうようなものを作りたい」というのが、そもそもこの映画を企画したスティーヴン・スピルバーグの狙いなんです。だから観客のみなさんがそんなふうに感じてくれれば、映画の目的達成ということになるでしょうね。

    10年前は"SF"だったものが今や現実に

    ――『イーグル・アイ』の着想を得たのはだいぶ前だそうですね

    10年くらい前です。スピルバーグはアイデアを考えた時に、映画よりゲームにするのがいいんじゃないかと思っていたそうです。当時としてはちょっと現実味が薄い設定だったので。しかし結局この企画の実現は、日常生活の中でもっとテクノロジーが普通に使われる時代が来るまで待つことになったんです。

    ――劇中に登場するテクノロジーはまるでSFのようですが、実際には現在、日常で使用されているものがほとんどだそうですね

    『イーグル・アイ』では映像もストーリーもリアリティを追求しています。だからSFといっても「サイエンス・フィクション」ではなく、「サイエンス・ファクト(事実)」だと言えるでしょうね。

    姿なき声はPC、電光掲示板などを自在に操り、2人を意のままに翻弄する

    しかし中にはサイエンス・フィクションの要素もあって、実現化していないテクノロジーも出てきます。でも、あの先見の明があるスピルバーグの『マイノリティ・リポート』に出てきたコンピュータだって、今見るとiPhoneの巨大版みたいな感じですからね。近い将来には映画と同じようなテクノロジーが出てくるかもしれません。

    憧れのスピルバーグとタッグを組んだきっかけは

    ――あなたがスピルバーグと仕事をするのは『ディスタービア』に続いて2回目ですね。どのようなきっかけで組むことになったのでしょうか。

    アメリカでは大変人気があるTVドラマなんですが『ザ・シールド ルール無用の警察バッジ』のエピソード監督をしていたとき、番組を観たスピルバーグからじかに電話がかかってきたんです。

    友だちでいつも僕をからかうジャックという男がいて、実はその時もてっきりジャックの悪戯だと思って(笑)。でも、スピルバーグ本人だとわかったときには自分をつねりそうになりましたよ! だって彼こそが、僕も映画業界に入りたい、映画を作りたいと思わせてくれた監督その人だったんですから。


    とても歯切れよく情熱的に語ってくれたD.J.カルーソ監督。目を輝かせていかにも楽しそうに映画を語るその性格は、製作パートナーであり憧れの大先輩でもあるというスティーブン・スピルバーグとの共通点を感じさせる。"同族"を見出すスピルバーグの目は流石と言えそうだ。この2人の才人が組むことによって生まれたスリルとサスペンスあふれるエンターテインメントをぜひ堪能したい。

    D.J.カルーソ プロフィール

    1965年アメリカ・コネチカット州生まれ。

    プロデューサーとして活動する傍ら『ザ・シールド ルール無用の警察バッジ』『ヤング・スーパーマン』など多数のTVドラマや劇場版映画で監督をつとめる。2007年、スピルバーグに招かれ『ディスタービア』の監督に着任。全米No.1を記録するヒットとなった同作は、主演のシャイア・ラブーフがスピルバーグに見出されるきっかけにもなっている

    作品情報

    『イーグル・アイ』

    監督:D・J・カルーソ
    製作総指揮:スティーブン・スピルバーグ
    出演:シャイア・ラブーフ / ミシェル・モナハン / ビリー・ボブ・ソーントン他 2008年10月18日(土) 丸の内ピカデリー1他 全国ロードショー

    (C) 2008 DREAMWORKS LLC. All Rights Reserved.

    インタビュー撮影:石井健

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