【レポート】

海賊端末が生んだ中国ケータイ業界の憂鬱 - 安くてハイレベルな「山寨機」

7 山寨機の正規化に立ちはだかる巨大利権の実態

    西山楓  [2008/10/15]

    検査体制の規制緩和こそ山寨機正規化の鍵

    最近、国内メディアの報道によると、深セン市工商局などの部門が政府に建議書を提出、携帯電話審査プロセスの簡略化、携帯電話のネットワーク加入審査コスト低減を求めたという。これは、業界筋からは山寨機メーカーへの「投降勧告」だとみなされた。深センの携帯電話市場を長年悩ませ続けてきた問題がこれで解消されるのだろうか。

    建議書の中身は、政府が携帯電話産業への各種規制を緩和し、一部の品質を重視し責任感のある山寨機メーカーについてはこれを「転向」させ、正規携帯電話メーカーとして今後遇するという狙いがある。その代わりに、品質を重視しない小企業に対しては、徹底した取り締まりを行うというものだった。

    しかし、ある型番の携帯電話では、審査テスト費だけで30万元(450万円)もかかり、ネットワークに加入したとの検査済みシールを貼ってもらうだけで十数元、その時間も約2カ月かかるという。

    山寨機が現れた根本的な原因は、従来の計画経済時代の名残である許認可制が携帯電話業界のスピーディな発展に適応できなくなったからだ。携帯電話審査テストプロセスは非常に冗長で、費用も高ければ効率も悪く、多くの企業がそれでビジネスチャンスを逃してきた。その結果、メーカーが良いほうへ頑張ろうとしてもその置かれている状況が許さず、結局、山寨機メーカーが多数出現することになってしまったのだ。

    これまで見てきたとおり、現在、山寨機は既に正規の携帯電話の生産総数を超えている。しかも非常に成熟した産業チェーンを作り上げている。

    もし、一部の実力ある山寨機メーカーが正規メーカーに転向すれば、山寨機の巨大な産業チェーンは切り崩されることになるだろう。

    悩み深い深セン市政府と工業管理部門

    しかし、こうしたやり方に懸念を持つ向きもいる。それは、政策が出ても山寨機メーカー経営者の出方次第で、「泥棒にすっかり慣れ、足を洗おうとしない」可能性があるからだ。

    というのも、最近中国中央電視台(CCTV)が深セン市における山寨機の現状を報道してからというもの、同市の関係管理部門がかなりのプレッシャーを感じているとのことだ。だが、山寨機メーカーを正規メーカーにできるかどうかは、工業・情報化部の検査テスト体制が緩和されるかどうかに直接かかっており、いくらプレッシャーをかけられても、深セン市政府が決定できるレベルのものではない。

    現状、携帯電話の認証をおこなう資格を持っている唯一の検査機関は、工業・情報化部傘下の泰爾実験室である。だが、同室にはまるで処方箋がない。業界筋が明かすところによれば、同室には毎年携帯電話の検査費により巨額の収入があると言う。こうした巨大な利権があるため、規制緩和を推進するのはなかなか難しいようだ。

    深セン市政府関係部門は、山寨機問題の渦中でジレンマに立たされてきた。深センに一体どれだけの山寨機メーカーがあるかは深セン市工商局も含めて誰にも分からない。山寨機を作っている業者自体もはっきりしたデータは持っていない。

    しかし、各種ルートからの不完全な統計によれば、深センの山寨機メーカーは1万社あり、従業員数は10万人、生産高は年間百億元(約1,500億円)にも上るという。このデータは、政府に衝撃を与えるに充分なものだ。

    山寨機問題は、とても今すぐ解決できそうな問題ではない。「3尺にも達する厚い氷は1日の寒さでできたものではない」という中国の有名な諺を思い出す。深セン市政府と、工業管理部門の悩みはまだ当分続きそうである。

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