待ち時間に関するトークセッションと『Dancingo』

安村教授と『NPO田舎時間』代表貴山敬氏、博報堂生活総合研究所の山本貴代氏のトークセッション『都会時間と田舎時間、OLから見たリッチな時間の過ごし方』では、農業や自然に流れる時間の対比、OLの過ごす秘境休暇での時間の切り替えのうまさ、待ち時間、富裕層は待たないなどを話題としてとりあげていた。

その話題と連動するような展示が山本侑未氏、古山亜人氏、村井洋子氏の『Dancingo』である。赤信号で止まっているのが普通の歩行者用信号だが、『Dancingo』では赤信号で静止している人が、楽しそうにダンスを踊っている。それを見ているだけで、つい待っているのが楽しくなる、不思議な信号である。エレベーターの待ち時間のイライラを解消するために、鏡をつけた、という解決方法がインタラクションデザインでは知られているが、それの現代版というところか。人はすることがあれば、いらいらしないものなのだ。

「待つ」行為は、楽しくもあり、いらいらすることもある、不思議な時間である。恋する相手を待つ時間なら、思いが胸いっぱいに膨れ上がって待つことも楽しんでいるのだろうし、電子レンジや信号やスーパーのレジを待つ2~3分は、ただ我慢の瞬間なのだろうし。携帯電話の普及は、「待つ」行為を変貌させたという山本氏の話も、筆者にとっては興味深いものだった。

広く問題を捉えてみると、環境問題を含む現在の状況は、「田舎ですごした子どものときの時間を取り戻すことはできるだろうか?」と、問われているのかもしれない。『時間展』。じつにテンポラリーな展示会である。

トークセッション。今回の展示会の主催者である安村通晃教授

トークセッション。左が『NPO田舎時間』代表貴山敬氏、右が博報堂生活総合研究所の山本貴代氏

トークセッション。貴山敬氏は、『NPO田舎時間』の活動について報告した。1泊2日の田舎体験については、写真が豊富なhttp://inakajikan.comを参照されたい

山本侑未氏、古山亜人氏、村井洋子氏の『Dancingo』「待ちたくなる赤信号」のコピーは刺激的だ。たしかに見ていると楽しくなってくる。待つのが楽しくなるかどうかは不明だが…

赤信号ではシルエットが躍っている