NECエレクトロニクスは25日、同社相模原事業所に2007年11月15日に設置した「半導体ものづくり推進センター」における海外からの研修生の受け入れ人数を2008年度下期で2008年度上期比で30%程度増員し、40名程度受け入れることを決定した。また、それに併せて同センターの詳細を報道陣に披露した。

背景は海外生産の推進

同センターの設立の背景には、同社が2007年2月に発表した再生プランがある。同プランを確実に遂行するためには、海外工場における生産拡大に伴う人材の増強および指導者の早期育成がコスト面でも品質の面でも欠かせなかったという。この海外シフトは中国の首鋼日電電子(SGNEC)およびマレーシアのNEC Semiconductors Malaysia(NECSEM<)を中心に行われており、後工程における海外生産の展開状況は2007年度では50%以下だが、2008年度で50%を突破し、今後も増え続けていく計画だ。

後工程の海外生産展開状況の推移

NECエレクトロニクス 生産本部 半導体ものづくり推進センター センター長 中嶋正博氏

同社 生産本部 半導体ものづくり推進センター センター長 中嶋正博氏は、「海外工場の競争力を上げるためには、次代の幹部候補の育成まで含めて国内並みの人材育成を行う必要がある。半導体ものづくり推進センターはそのために設立された組織」としており、同センターを中心とした海外現地法人に対する支援を行っていくことを強調した。

現在同センターでは、高い技術レベルと実践力を兼ね備えた後工程装置の保全トレーナの育成、保全業務に必要な知識を教えられる講師であるテクニカル講師の育成が行われており、将来的には管理監督者の育成も行っていくことが予定されている。

いずれの育成についても、加工技術や組み立て技術といった伝承すべき技能・ノウハウに対し、インダストリアルエンジニア(IE)による作業の分析、ノウハウの調査が行われ、標準化(ベストプラクティス)やビデオによる説明化(見える化)などを基にカリキュラムなどを作成、技術の定着に向けて使用されている。

伝承すべき技能やノウハウを科学的な手法により見える化し、形式知化する

育成期間は2カ月以上

トレーナの育成は、基本は同社が定める4段階のスキルレベルの内、レベル2の人を対象に相模原事業所での基礎的な部分の教育を1カ月行い、その後国内の工場に出向きOJTを1カ月行うことで、スキルレベルを4まで引き上げようというもの。

トレーナ育成教育の概要

育成もこの2カ月で終了というわけではなく、6カ月後にフォローアップを入れるなど、アフターケアも行っている。「通常、装置メーカーで行われる教育は1週間程度と短い。そのため、応用的なメンテナンスなどが難しかったのが現状。2カ月にわたり教育を行うことで、場面場面で異なる対応ができる人材が育成できるようになった」(同)とする。

スキル評価による技能水準の把握(レベルは1~4まであり、レベル3に達して1人前とのこと)

テクニカル講師の育成は、同社の標準カリキュラムの教育を海外工場で教えることができる講師を育成することが目的。そのため、教育期間は6カ月と長めとなっている。「6カ月を一気に行うことは非常に難しいのが現状。そのため、期間を分割して行っている」(同)というのが実情だという。

テクニカル講師育成の概要

後工程に関する基礎から応用まですべてを集約

同社相模原事業所内に設置された同センターのトレーニングルームの広さは400平米。ここに2つの教室が用意されさまざまな授業が行われるほか、複数のトレーニングユニットや各工場などから持ち込まれた生産設備などが配備され、それを用いた学習なども行われる。

トレーニングルームのレイアウト

教室での講義風景(同ルームの公開時は海外研修生を対象にアナログ電子回路に関する講義が行われていた)

トレーニングユニットは、実践に役立つ教育教材ということで、自社開発されたものが用いられている。主なものとしては、ネジの締め付け強度を測るためのユニットや故意に回路やセンサ、リレーなどを不具合の状態をすることで、状態を確認するためのユニット、電気やメカ・エアーの複合回路をいかに調整するかを学ぶユニットなどがある。

トレーニングルームに置かれたユニット各種(左が複合調整ユニット、右が保全実務ユニット)

また、装置に関しては後工程ということで主にボールボンダやワイヤボンダ、ダイボンダなどが8種13台用意されているが、これには装置メーカーからのレンタルも含まれており、「時期を見て入れ替えも行っており、すでに新たに借り入れる装置についても決定済み」(同)とのこと。

後工程用の装置がずらり並ぶ(この他にもロジックテスタなどが置かれている)

装置の傍らには不具合要因などを表すパネルなどが置かれている

このほか、ビデオによる学習もトレーニングルームで行われる。これも単に作業を映して流すだけではなく、上部に作業のタイトル、下部に作業手順を表示、数値などを具体的に表示するなどの工夫が施されている。対応言語は日本語のほか英語が用意されており、今後中国語についても対応を検討していくとしている。

実際にビデオを見て手順を確認する

数値なども表示することにより目安を分かりやすくしている

なお、同社ではこうしたトレーニングルームをSGNECやNECSEMにも設置するよう準備を進めている。すでにSGNECについては2008年5月に開設しており、レベル3以上のトレーナの養成に向けた教育が開始されている。一方のNECSEMには2009年4月にトレーニングルームを開設する予定としている。