はとバスは創業60周年を記念したイベント「はとバスEXPO」を23日、開催した。東京・晴海の晴海客船ターミナルを中心にした特設会場で、はとバス車両展示や資料展、写真展が行なわれた。中でも「はとバスガイド・歴代制服ファッションショー」「はとバス2008新制服発表会」は注目が集まった。保存されていない制服の一部は復刻したというこのショー。その模様を紹介しよう。


ファッションショーでは、はとバス歴代ガイドの制服は古い年代の順から登場した。まずは1960年代前半。濃紺のもっともオーソドックスなデザインで、白い襟カバーが軽やかさを出していたという。モデルを務めた現役はとバスガイドさんいわく、「私は歴代の中でもこれが好きです」とのこと。

スタンダードな制服の1960年代前半

次は森英恵デザインの1960年代後半のもの。当時流行だったミニスカートを採用している。クラウン型の帽子がある制服とセットのはずだったが、今回はなかったようだ。時代はオイルショックなどで景気は後退していくが、はとバスはその後も積極的に大胆なデザインの制服を採用していく。

1960年代前半の制服をベースに、時代の流行を取り入れているのがわかる

ひと昔前の航空業界の客室乗務員を想像させるほどの華やかな黄と赤をあしらった制服は1970年代前半に登場。黄と赤の千鳥模様のスカーフが印象的なスタイルは、今でも新鮮に見える。このモデルを務めた現役ガイドさんは「スカートが短くてちょっと…」と。この時代から今までの紺一色から黄色がアクセントとして加えられはじめた。

一気に明るいイメージへと変わる1970年代前半。今着てもおかしくないデザインだ

1970年代中ごろ。こちらも森英恵デザイン。鮮やかなオレンジを基調とした制服は、オーソドックスでありながら、大きく開いた白い襟で流行のファッションテイストを取り入れている。当時はファッション雑誌がこぞって「ニュートラ」「ハマトラ」を紹介したころで、横浜・元町商店街のフクゾーの服、ミハマの靴、キタムラのバッグがハマトラの定番といわれていた。

鮮やかなオレンジは当時の時代の勢いを髣髴させる

今までの流れと変わって、男性的?なデザイン

はとバスガイドの制服ヒストリーでも珍しい存在なのが、1970年代後半登場のカーキグリーンもの。着物の帯のようなウグイス色のアクセントと、ビビッドな黄色のボウタイが印象的だ。また、最大の特徴はパンタロンタイプのパターンがあったこと。今、女性の進出が目覚ましい鉄道業界の現在の制服に重なるイメージではないだろうか。

そして時代は1980年代へ。このころ、はとバスのイメージカラーとなっていく黄色一色の制服に。黒のベルトがアクセントとなり、スカートが再び長めになっているので、派手な色ながら大人っぽく落ち着いた印象になった。時代はデザイナーズ&キャラクターズ・ブランド・ブームへ。この時代のプロモーション画像も見事だ。

スチュワーデスの制服にもありそうな華やかかつ落ち着いた雰囲気の制服。帽子も上品だ

イメージカラーの黄色で突き進むと思いきや、その後はとバスはまた別の色を採用している。まずは先ほどの黄色からすぐにローズカラーの制服へ。スカートは長めのままだ。このころ、夏は浴衣姿でガイドを務める夜コースのサービスも登場。冬にはケープ付きの異色の制服も登場した。歴代の中ではツバのある珍しい帽子も着用した。ちなみに今回モデルを務めた現役ガイドさんたちから「あの赤がいいな」という声が多かっていた。そして、イエロー路線に落ち着く前の、最後となる制服は1990年初頭に登場。モスグリーンを基調とし、高級感ある色づかいと襟元の複雑な処理が特徴的だ。このころ、東京・芝浦に収容人数2,000人の超大型ディスコ「ジュリアナ東京」がオープン。はとバスのコースにもディスコ施設が加えられた。

1970年中ごろのオレンジ色の制服を想起させるようなローズの制服

時代が"ディスコ"に夢中だった時期とは思えないほど、シックなモスグリーン調の制服

1990年代前半にはとバスの黄色が再び台頭。スカートをタイトにし、丈を短くすることでより行動的な印象を持たせた。紺・赤・黄色のスカーフがアクセントだ。動きやすさや着心地など、機能性を重視するタイプに移っていった時代だ。このころ、スカーフの色や巻きかたを好みに応じて変えられるなど、さりげなく個性を主張できた。

アクティブなイメージの黄色の制服

1990年代後半。ボトムは巻きスカートかキュロットが選べるタイプに。襟元もスカーフかリボンが選べるなど、ガイドの好みに幅を持たせていた。このころ、渋谷発のファッションブランド「エゴイスト」などが火付け役となり、女子高生の間に茶髪と派手なメイクが流行。ルーズソックスなどのムーブメントも起きた。

濃い茶系の制服は袖口のラインにイエローを取り入れることで高級感をかもし出している

そして今年60周年を迎える同社は、今秋リニューアルされる制服がお披露目された。夏服と冬服を着た男女が登場。夏は白をベース、冬はエンジと紺でどちらも首にはスカーフを巻くスタイルとなる。「お客様に対して恥ずかしくない気品と格調の高さ、期待と不安の入り交ざったお客様に対して、安心感につながる親しみやすさ」を心がけてデザインされたという。

今秋からの制服。右から夏服、冬服となる

「はとバスこども制服試着」コーナーで堂々とポーズを撮る"将来のガイドさん"

足早に、制服に着目しながらはとバスの歩みと時代背景を紹介してきたが、いかがだっただろうか。60年間で様々な変化を見せていた制服だが、変わらないのはツアー客の思い出のひとかけらとして記憶に残るように、というはとバスの思いだ。これからも発想豊かなでユニークなツアーを展開し、われわれの期待に答えてくれることを望まずにはいられない。最後に、小さな"将来のガイドさん"をみていただき、"ファッションショーinマイコミジャーナル"を終えることにしよう。