東京・国立にある鉄道総合技術研究所は4日と5日、「鉄道総研技術フォーラム 2008 ─環境と調和した鉄道を目指して―」を開催した。同イベントでは、鉄道総研が進めている技術開発・研究テーマを、講演会・テーマ展示・実験設備の見学ツアー・開発成果等の紹介という4つのカテゴリーに分けて公開。普段は入ることができない鉄道総研の所内一部を無料開放するとあって、両日とも多くの人でにぎわった。

鉄道総合技術研究所は、日本国有鉄道(国鉄)の鉄道技術研究所などから業務を引き継いで発足した研究機関。「新幹線ひかり号」もこの地から誕生したといわれる

同フォーラムの会場の中でも、最も場所をさいていたのがテーマ展示だ。各ブースとも、技術者向けのやや難しい話題がメインであるものの、「急速充電技術適用の架線・バッテリーハイブリッド電車」や、「燃料電池ハイブリッド車両」などの車両の話題をはじめ、「列車運行・旅客行動シミュレーションシステム」「ダイヤ乱れ時に運転再開を待つ旅客数の予測手法」といった情報技術を駆使した研究例など、我々に身近な鉄道の"ちょっと先の話"が紹介されていた。

環境面に配慮した「ハイ! トラム」

実験設備の見学ツアーの中にある「架線・バッテリーハイブリッドLRVの1500V急速充電」というプログラムでは、2007年に登場した架線ハイブリッド(架線レス)LRV「ハイ! トラム」の試乗も体験することができた。

省エネ、環境面に配慮したこの「ハイ! トラム」は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の全額補助を受けて研究・開発が進められている

ハイ! トラムは、昨今の電気自動車と同じようにリチウムイオン電池を搭載し、架線のある電化区間はもちろん、電池の力で走ることで非電化区間も走行可能。ハイ! トラムのその他のメリットとしては、「架線と電池のハイブリッド制御によって、ブレーキ時などの回生エネルギーを無駄なく充電・放電できて、省エネに貢献」「異なる架線電圧に対応して、鉄道線(普通のいわゆる電車など)と軌道線(路面電車など)の直通運転もできる」「架線を張りたくない、または取り除きたい軌道線に導入することで、都市景観の向上が図れる」「エンジンなどを積まず電気エネルギーのみで動く車両なので、メンテナンスも容易に」などがあげられる。

構内軌道に停車中のハイ! トラム。レールの向こうには一般家屋が隣接している