中国でマスメディア政策を統括する中国国家広電総局の通達により、今年5月1日以降、輸入アニメーション作品のテレビ放送禁止時間帯が変更された。従来の17:00~20:00から17:00~21:00が新たな放送禁止時間帯となる。広電総局による海外アニメに対するこの「放送制限令」強化はなにを意味するのだろうか。また、過去2年間、国家の庇護の下にあった国産アニメ産業は、今どのような状況にあるのだろうか。

「飛ぶ鳥落とす」アニメ産業、中身を吟味すると不可解な状況が…

中国アニメ産業化のプロセスを振り返ってみると、2004年に国務院が「未成年者の思想道徳建設のさらなる強化と改善についての若干の意見」を発表。また、広電総局も同年「中国映画、テレビ、アニメーション産業の発展についての若干の意見」を発表した。これらは、中国のアニメーション産業の振興を促す政策的内容を持っていた。

その後、アニメーション産業は、飛ぶ鳥を落とすほどの勢いで「成長産業」となった。事実、全国34の省・市・自治区の中で、16地域が「アニメ製作振興」を旗振り、17カ所の国家が管轄するアニメーション産業基地が立ち上がった。これに伴い、アニメ製作企業とアニメ製作以外のアニメ関連業務(アニメ出版・販売など)を扱う企業を併せたアニメ関連企業総数は、5,400社にまで急増したとされている。そして、当然の成り行きとして、ベンチャー投資家も、この巨大な潜在力を秘める産業に注目するようになったのである。

しかし、その中身を吟味してみると、かなり不可解な状況が見えてくる。例えば、アニメ製作を手がける企業の中で、アニメ作品の年間製作量が2,000分間をオーバーしたのはわずか11社だけだというのだ。11社を除く他のアニメ製作企業の平均年間製作量は非常に少ない。わずかの製作量で、いったいどうやって社員を養うというのだろうか。

結論めいたことを先に言ってしまうが、中国のアニメ産業は、政策の庇護の下、「成人」に育つどころか、製作能力不足、製作コストと放送価格の逆ざや、融資の滞り、政策への過度の依存など、自立した産業発展を制約する深刻なボトルネックを次々とあらわにしてきたのだった。中国政府が肝いりで育成を図るアニメ産業、中国で言ういわゆる「文化創意産業」は、今後どのようにして真の成長を図ることができるのだろうか。