米Intelは8月19日(現地時間)、SSD(Solid State Drive)製品「X25-E」「X25-M」「X18-M」の3バリエーション、容量別を含めて計6種類を発表した。米Micronとの提携でNANDフラッシュへの取り組みを進めていたIntelは2007年春、Santa Rosaプラットフォームのリリースの際に「Turbo Memory(開発コード名: Robson)」技術を導入しているが、今回の一連のSSD新製品はこれに続く同社のNANDフラッシュへの取り組みの第2弾となる。

今回Intelから発表された1.8インチのSSDモジュール

IntelがSSD市場に参入する意図とは?

なぜいまIntelがSSDなのか? その理由の1つは、HDDがシステム全体において明らかにボトルネックになりつつあることにある。Intelによれば、1996年以来HDDのパフォーマンス上昇率が1.3倍程度とほぼ頭打ち状態となっており、ムーアの法則に則って倍々ペースで性能が向上するプロセッサに対して年々差が開く一方になりつつあるという。また、ことプロセッサに関して言えば、こちらもプロセッサコア単体のパフォーマンス上昇率は以前に比べて落ちているものの、今後はコア数の増加とソフトウェアの並列性の向上でパフォーマンス上昇カーブは再び上向くことになる。こうしたI/Oのボトルネックを取り除くのがNANDフラッシュへのシフトにあると、同社では考えているようだ。

IntelがNANDフラッシュ市場へと参入する理由として挙げるのが、プロセッサパワーが年々向上するなか、ストレージ(特にHDD)の性能向上がほとんど見込めず、ボトルネックになっている点だ

Intelが今回リリースしたのは、サーバなどのハイエンド向けの製品が「X25-E」で1種類、そして普及帯にあたるコンシューマや企業クライアントPC向けの製品が「X25-M」「X18-M」の2種類となる。X以降の2桁の数字がフォームファクターを表しており、25が2.5インチ、18が1.8インチとなる。またEがエンタープライズ(Enterprise)、Mがメインストリーム(Mainstream)のそれぞれ頭文字を象っている。NANDには現在SLCとMLCの2種類のフラッシュメモリが存在するが、Eシリーズには前者を、Mシリーズには後者を採用している。つまり「パフォーマンスや書き換え回数などの信頼性で有利なSLCはハイエンドに、普及帯の製品には容量面で有利なMLC」というわけだ。価格は現在公表されていない段階だが、実際Eシリーズのラインナップが32/64GBなのに対し、Mシリーズでは80/160GBと倍以上の開きがある。

今回提供が行われるのは、MLCならびにSLCのSSDモジュールで、容量は32GBから160GBまでのラインナップが用意される。現在サンプリングが行われているのは32GB(SLC)と80GB(MLC)のモデルで、それぞれ90日以内または30日以内での出荷開始が予定されている

ハイエンド向けのSLCモデルには1.8インチのモジュールが、コンシューマ向けのMLCモデルには1.8インチまたは2.5インチのモジュールが用意され、それぞれ容量に応じて2種類のモデルがあり、計6製品となる。将来的にはさらに大容量版が計画されており、順次ラインナップが拡充されていくことになる

ハイエンドのX25-EはSLCを採用した2.5インチモデルで、主にサーバやストレージ装置などのデータセンターでの高速動作が必要なケースを想定している

一方のX25-MとX18-MはMLCを採用したコンシューマ向けの普及型モデル。信頼性や速度面ではX25-Eに及ばないものの、容量面でアドバンテージがある

同社ではSSDのパフォーマンスをベンチマークを例に紹介しているが、普及帯のMシリーズのシステム上で標準的なアプリケーションを動かした場合で、HDDから40-140%ほどの性能向上が見込まれるという。またランダムR/WやシーケンシャルR/Wのベンチマークを行った場合、さらに如実にHDDと差が開くことになるという。

コーンシューマ向けPCや企業向けクライアントPCなどをターゲットにしたメインストリーム市場向けのX25-M / X18-Mのベンチマークの例。多くのアプリケーションで速度上のメリットを享受でき、さらにHDDばかりでなく、競合他社のSSD製品よりも高速だとIntelでは説明する

他社とは訴求ポイントの若干異なるIntel SSD

同社が「I/Oボトルネックの解決」をうたうように、IntelのSSDソリューションはパフォーマンス面での強力さを前面に押し出している点が特徴となる。これまでにも多くのメーカーからSSD製品がリリースされてきたが、「HDDと比較して大きくパフォーマンスが変わらない」「信頼性が低い」「容量単価が高い」という辛口評価が依然としてつきまとっており、SSD普及における障害となっている。この傾向はMLCで顕著だ。

ハイエンド向けとコンシューマ向けSSDでのそれぞれのメリット。X25-Eでは非常に高いI/Oスループットを誇っており、既存の15000RPMのHDDをそのままリプレイスできる能力があるという。またX25-M / X18-Mにおいてはパフォーマンス面での優位性だけでなく、MLCでたびたび弱点とされる書き換え寿命の長さを強調している。1日100GB程度のデータの書き込みでも、5年以上の寿命があるという

そうしたなかIntelは、ハイエンド向けのEシリーズではなく、あえて普及帯でMLCのMシリーズでパフォーマンスベンチのスコアや通常の使用で5年以上という長寿命を打ち出してきている。MLC登場で価格競争や大容量化競争の激化が予想されるSSD市場だが、あえてこうした懸念を払拭したいという考えなのだろう。一方でEシリーズではパフォーマンスと同時に、低消費電力な点も強くアピールしている。これは昨今の"グリーンIT"を強く意識したものだろう。

ONFI 1.0対応など、パフォーマンスや信頼性の面でIntelのSSD製品が最適化されているという

エンタープライズシステムにおけるHDDとSSDのパフォーマンス比較。速度向上だけでなく、消費電力だけで98%の削減と非常に大きな効果を上げている

また他社との差別化ポイントして、NANDインターフェイス標準のONFI 1.0への準拠や、独自開発のSSD内蔵コントローラ、そしてプラットフォーム提供ベンダーならではの強みであるSSDとシステムのバリデーションなどを挙げている。またLenovoやHPが同SSDを採用したThinkPadやEliteBookのリリースを表明しており、サンプル品を用いたベンチマーク結果を披露している。特にHPは以前に「効果が疑問」ということでTurbo Memoryの採用を見送った経緯があり、Intel SSDの登場にはある程度期待を抱いていることがわかる。

Intel SSDを搭載したThinkPad。パフォーマンス比較デモでも既存のHDDやSSDと比較して大きな差をつけている。このほか、HPのEliteBookのSSDモデルも会場では紹介された