【インタビュー】
――予想通りと言うか、激しい反発があったわけですね。それにもかかわらず、小委員会が7月16日にまとめた「中間論点整理」では、ネット法やフェアユース規定の導入に前向きですね。
中間論点整理のポイントは、さきほど申し上げた通り、ネット時代への対応という点で現在の著作権制度には限界があるとの認識に立っています。
デジタルコンテンツを流通させるために、「何らかの法的枠組みの構築が必要」としました。これは必ずしもネット法に限らないのですが、現在の著作権制度の抱える問題を克服しようというものです。
中間論点整理ではそのために、ネット法などの「強行規定により権利を集中させる方法」によるべきか、「任意規定により権利の集約を実現すべきか」の選択肢を示しています。 後者は少し分かりづらいですが、契約による権利の集約を法律で促すといったことを想定しています。
その上で、以下の点についてこれから議論をしていくとしました。
コンテンツの分野ごとに権利の集約化の実現状況は一様でないことを踏まえ、分野ごとにどのような法律の規定に対応するかの見極め。
公正な利益配分を行う仕組みについて、誰が使用料を決めるのか、いつどこで使用されたかの把握をどのように行うのかなどについて、シミュレーションを含めた検討。
コード付与による許諾・利益配分システムの有効性も含め、コンテンツに係る権利情報の集約・公開の仕組みのあり方の検討。
法的措置を講ずる場合の条約その他の関連法制及び諸外国の法体系との関係の整理。
この中で特に重要なのが、2の「公正な利益配分」のための議論です。
――「ネット上のコンテンツは無料」と考えているネットユーザーも多いですよね。確かに、課金から利益配分までの仕組みの構築が、最も難しい点だと思います。
この点に関しては、ヒアリングに来ていただいた方々からも「本当にできるんですか? 」との疑問が相次ぎました。
「現在でもネット上で権利を侵害されているのに、この上さらにコンテンツを流通させるなんてとんでもない」「『ドラマをインターネットで売りましょう』と軽く言うが、一人の俳優が成功するまでにどれだけの下積みを経験すると思っているのか」などの意見もありました。
小委員会では、こうした意見も考慮しながら、権利者の利益を守るためにこそ、新しい法的枠組みが必要だとの結論になりました。
今後の議論の項目として挙げた上記4点のうち、3の「コード付与による許諾・利益配分システム」は、ある企業などが考えたシステムで、どのコンテンツが何回利用されたかを記録するというものです。
こうしたシステムの導入も、今後の議論の中で検討していきたいと思っています。
――いわゆる「ネット法」では、権利者の許諾なしにネット上にコンテンツを流通させることができる「ネット権」を、放送事業者や映画製作者に与える案が示されていますね。ネットのインフラを整備する通信事業者には与えられないのでしょうか?
誰にネット権を与えるかなどについては、委員会では全く白紙の状態です。
ですが、コンテンツ産業こそ日本の大きな強みであり、海外への輸出などを促進するためにも、特定の業界だけがもうかるといった状態になることは避けなければならないと思っています。
――中間論点整理では、フェアユース規定の導入についても、「極めて有意義」とかなり前向きな方針が示されています。
何を「フェア」とするかは議論が必要ですが、フェアユース規定を導入すれば、企業のサーバを海外に置かざるをえないというようなことは避けることができます。
日本では、著作者人格権の考え方が強いですが、コンテンツ産業とIT・ネット産業の振興のために、フェアユース規定の導入は極めて有意義と考えています。
――最後に、中間論点整理までの議論を振り返って、どのような感想をお持ちでしょうか?
正直言って、ネット法やフェアユースは、政治家にとって「票になる」政策とはいえないというのが永田町の一般認識です。
ですがさきほども申し上げた通り、IT・ネット産業とコンテンツ産業は、これからの日本を引っ張っていくリーディング産業で、その発展の環境を整備することは極めて重要な政策課題です。
政策立案にはグローバルな視点が求められますが、日本とニューヨーク州双方の弁護士資格を持っているという自らの強みも生かし、ぜひ今後もそうした観点から考えていきたいと思っています。
牧原秀樹(まきはら・ひでき)自由民主党衆議院議員
1990年私立麻布高校卒業。1991年、東京大学法学部入学、同大学在学中の1994年に司法試験合格。1997年弁護士登録、あさひ(現西村あさひ)法律事務所国際部門入所。2001年、ジョージタウン大学ロースクール国際法学科卒業(法学修士)。2002年、ニューヨーク州弁護士試験合格。2003年に経済産業省に入省後、2005年に衆議院議員に初当選。
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