【レポート】
間もなく夏期休暇。まとまった休みを目前に控え、余った時間を知識に変えるための良書をお探しのエンジニアも少なくないだろう。本誌では、そうしたエンジニアの要望に応えるべく、数回にわたり、各分野のエキスパートが薦める書籍を紹介していく。
今回、推薦を依頼したのは、自らを「ソフトウェア芸人」と称する矢沢久雄氏。『プログラムはなぜ動くのか』などの筆者として知られ、エンジニアを明るく支援する同氏に、経験の浅いエンジニア向けの3冊を教えてもらった。
矢沢久雄
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グレープシティ アドバイザリースタッフ。フリーライター、セミナー講師としてソフトウェア業界の各方面で活躍する一方で、現役のエンジニアとして製品開発も精力的にこなす。『プログラムはなぜ動くのか』『コンピュータはなぜ動くのか』(ともに日経BP社)など、著書多数。近著に『JIS規格対応 標準C#入門 改訂第2版』(発行: ソフトバンククリエイティブ)、『ベテランが丁寧に教えてくれるハードウェアの知識と実務』(発行: 翔泳社)などがある。
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『コンピュータの発明 - エンジニアリングの軌跡』(著者: 能澤徹、発行: テクノレビュー) |
矢沢氏が最初に薦めるのが『コンピュータの発明 - エンジニアリングの軌跡』だ。同書を薦める理由を氏は次のように語る。
「ソフトウェアエンジニアを生業としていくのであれば、やはり今日のコンピュータが誕生するまでの歴史は知っておく必要があるでしょう。技術の登場背景を知り、考案者の考えに触れることで、エンジニアとしての資質が養えると同時に、前向きな刺激をたくさん受けることができます。もしまだご存じないのであれば本書をぜひ通読してほしいですね」
コンピュータの歴史を語る書籍は数多く発行されているが、矢沢氏は同書について「一番確か」と太鼓判を押す。その理由として、「さまざまな文献を非常によく調べ上げています。古い設計図面や写真など、どこで手に入れたのかと思える資料もたくさん掲載されています」と、裏づけがしっかりしている点を挙げた。
また、「この書籍がすごいのは、冒頭から他の書籍の間違いを名指しで指摘しているところ。これにはさすがに驚きました。こういう部分からも調査に対する自信が伺えますよね。私もこういう書き手になりたいです」と補足。書き手視点で見ても優れた書籍であることを強調した。
なお、現在のコンピュータは"ノイマン型コンピュータ"と呼ばれているが、「実は、その方式はジョン・フォン・ノイマン氏が開発したものではない」(矢沢氏)という。
「なぜ、彼の名前が残ることになったのかが、その時代背景も含めて、他の記事/書籍よりも詳しく、かつ誤解を払拭するかたちで解説されています。気になる方はぜひご一読を」(矢沢氏)。
歴史書として挙げられるだけあり、「堅い書の部類に入る」(矢沢氏)とのことだが、「読み進めるうえで前提知識は必要ないので、エンジニアに限らず、コンピュータに興味を持つ人はぜひ読んでほしいですね」(矢沢氏)と、夏期休暇の"課題図書"にすることを強く薦めた。
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『ワインバーグの文章読本 - 自然石構築法』(著者: Gerald M. Weinberg、翻訳: 伊豆原 弓、発行: 翔泳社) |
矢沢氏が「この10年で一番感動した実用書」と語るのが、『ワインバーグの文章読本 - 自然石構築法』である。ただし、感動したのは、「文章読本としてというよりも、サブタイトルにもある"自然石構築法"というメソッドに対して」(矢沢氏)だという。
自然石構築法とは、Weinberg氏流の文章術である。石壁作りの経験をヒントに着想したもので、文章の題材を「石」に見立てている。それを普段から収集し、適切に積み重ねることで文章を組み立てていこうという手法だ。
「題材を"自然石"と表現しているところが素晴らしい。身近に存在し、鉱石のように貴重なものではありません。本を1章読んだ後に、また普段の生活で何か気づいたときに、その内容を石として気軽に拾っておこうというわけです。いつか役に立つかもしれないし、立たないかもしれませんが、自然石なのでもったいないということはありません。でも、なければ石壁はできないので、普段から収集しておくことは大事なのです」(矢沢氏)
著者のWeinberg氏は、米IBM出身のエンジニア/コンサルタント。評価の高い著書を多数残しており、ソフトウェア関係者の間では名の知れた人物だ。翔泳社のサイトでは「執筆した論文は400を超え、40冊以上の著作がある」と紹介されている。そのWeinberg氏が、文章の"作り方"に焦点を置いて執筆したのが同書である。
「自然石構築法は、執筆に限らず、人生のさまざまな場面で役立つはず。ぜひこの本を読んで石を拾うという習慣を身に付けてほしい」(矢沢氏)
補足しておくと、同書は題材の集め方に限らず、さまざまな話題に触れている。文章を作るための演習問題等も用意されているほか、「例えば、執筆を長期中断してもスムーズに再開できるテクニックなども掲載されている」(矢沢氏)という。
夏期休暇の最初の1冊として良いかもしれない。
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『頭の回転が50倍速くなる脳の作り方 ~「クリティカルエイジ」を克服する加速勉強法~』(著者: 苫米地英人、発行: フォレスト出版) |
「この本は"なるほどね"と思うことがたくさん書いてある」――矢沢氏がこのように紹介したのが『頭の回転が50倍速くなる脳の作り方』だ。
「例えば、優秀なサッカー選手とそうでない選手の違いは、一段上(抽象化した視点)から状況を見れるかどうか、と説明しています。つまり、目の前のボールだけを追うのではなく、全体の動きも視野に入れることが大切。これはなんにでも当てはまると言っており、なるほどねと感心しました」(矢沢氏)
同書には上のような話がたくさん載っているが、なかでも印象に残っているのが英語の勉強術だという。
「英語を身に付けるには、英語の環境に身を置くことが大事なのだそうです。日本語に翻訳できるものではないとも書いています。では、どういう学習法が適しているかと言うと……それは本書で確認してください(笑)」
英語に限らず、何事においても適した環境に身を置くのが重要という点は、矢沢氏の身近にも具体例があり、特に納得できたそうだ。
「私が師事しているJazzの先生は昔、演歌を演奏していたのですが、Jazzを始めた当時、"演歌をやめないとJazzはできない"と叱られたそうです。その先生は当時を振り返り、"実際にそのとおりだった"と話しています。やはり環境は大切なようです」(矢沢氏)
業務に追われて勉強から遠ざかった結果、覚えることに抵抗感を持ってしてまったエンジニアも少なくないだろう。同書はそうしたエンジニアを前向きにするうえでも役立つようだ。
「軽い気持ちで読めるし、読後感もさわやか。皆さんもぜひ一読してほしいですね」(矢沢氏)
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