アイシン・エィ・ダブリュ 経営企画本部 情報システム部 次長 神谷直氏

トヨタ系列の自動車部品メーカー、アイシン・エィ・ダブリュ(以下、アイシンAW)が、Lotus Notesの承認ワークフロー・システムを昨年末に刷新し、メールによる承認忘れの防止や検索速度の向上などの成果を上げている。7月25日にアプレッソが開催した「DataSpider 事例紹介セミナー」で、アイシンAWの経営企画本部 情報システム部 次長の神谷直氏が、同製品を用いたデータ連携の取り組みとして紹介したもの。

DataSpiderは、異なるシステム間でのデータ交換、連携、統合を支援するデータ/アプリケーション連携ミドルウェアで、ソフトウェアベンダー、アプレッソの主要製品の1つ。ノン・プログラミングをうたい、GUIでの迅速な開発・設定ができることを大きな特徴としている。

アイシンAWでは、このDataSpiderを利用して、同社が情報系システムの基盤として全社展開しているLotus Notes/Dominoの各サーバのデータを連携。Notesデータベースから承認依頼メールなどの重要案件を抽出したうえで、承認者がポータルサイト上で一覧して管理できる仕組みを整備した。

神谷氏によると、アイシンAWでは、1995年にNotes/Dominoを採用して以降、社内電話帳、稟議書作成・承認、品質・生産異常の掲示、PCサポートなど、1000を超えるデータベース、300を超える承認ワークフロー・アブリケーションを開発してきた。現在では、Notes/Dominoは、グループ1万6750名の従業員が日常的に利用する不可欠なIT基盤となっているという。

10年以上にわたってLotus Notes/Dominoを活用する同社では、Notes DB数は1000を超えているという

だが、そうしたなかで、「案件の申請や承認もすべてNotesメールを起点として行われていたため、メールが洪水状態となり、作業効率が著しく落ちるようになった」(神谷氏)という。例えば、ある部長のケースでは、スパムメールをのぞいて1日に受信する82件のメールのうち、半分以上の44件が承認依頼であり、重要な承認案件が見落とされることも少なくなかった。

そこで、まず、Notesデータベースの中からワークフロー機能が含むものを洗い出し、それらデータベースのデータのアウトプット部分を共通化。次いで、DataSpiderのNotesアダプタを介して、データを抽出したうえで、それらをDB2アダプタを介して、一元的なデータベースとなるDB2へと集約させた。データは、30分ごとに定期的に収集され、ポータルサイトの一覧へと反映される仕組みとなっている。

DataSpiderを利用して、ワークフロー情報を一元化

「従来は、メールボックスの大量のメールの中から承認案件を探しだし、承認するという流れだったが、現在は、ポータルサイト内の専用の場所を開くだけで、承認案件の一覧を確認できるようになった。これによって、承認忘れの件数が激減したほか、メールを検索するスピードが大きく向上した」(神谷氏)

この承認ワークフロー・システムは「承認くん」と呼ばれており、同時期に進めていたポータル・サイトの構築プロジェクトと平行して開発が進められたもの。開発・構築・テストに要した期間は約3カ月で、人員は7名。神谷氏は、「プログラミングが必要なく、定義済みのフローをコピペしていくだけで済んだ」とDataSpiderでのGUI開発の手軽さを評価する一方、苦労した点として、データベースのアウトプット部分を共通化するための改修作業を挙げる。この改修作業には、人員7名のうち6名が担当し、開発期間のほとんどを占めるかたちで作業にあたったという。

承認ポータル「承認くん」の画面。承認待ち情報が一覧表示される

「もっとも、データベースをプッシュ型に変更してデータの一元化を図るよりは、DataSpiderなどのデータ連携ソフトを活用してプル型でデータを収集したほうが開発工数ははるかに少ない。既存システムにできるだけ手を加えないというアプローチをとったことで、スムーズに新システムに移行できた」(同氏)

同社では、今後、データ収集の周期を短縮してデータの鮮度を上げるとともに、ドラフト文書や承認完了文書なども対象に加えるなど、対象を拡大させていく方針。また、他のシステム基盤についても、DataSpiderなどのデータ連携ソフトを活用しながら、ポータルサイトを情報共有・交換の場として強化する構えという。