夏の旅行シーズン、レジャーや帰省などで遠出する機会も多くなるが、この夏はガソリン代や食料品の高騰が家計を直撃。マイカーでの遠出は、高速料金やガソリン代がかさむのに加え、高速道路のPAやファミレスなど外食の機会も多くなり、お金は見る見る減っていく。この夏は、できるだけマイカーでの遠出を避けて、できるだけ公共交通機関を使いたいところだ。

公共交通機関といっても、飛行機、鉄道、高速バスなどがある。割引やおトクなチケットを使うと、びっくりするほど安く移動できることもある。夏休みで時間がたっぷりある場合は、各駅停車の旅でのんびりと旅をするのも楽しいもの。新幹線や特急列車に乗らずに、快速列車、普通列車に乗ると、ビジネスで移動するとは違った、ゆったりとした旅を満喫できる。

行き先に応じて、どんな方法があるかをチェックして、時間とお金のバランスを考えながら、プランを練ってみよう。

飛行機は早めの予約がおトク

表は広島、九州・福岡、札幌に行く場合の交通費。普通運賃は割高だが、「特定便割引」が設定され、便によっては新幹線よりも安い。特定便割引はJALの場合、「先得割引」、「特便割引7」、「特便割引1」がある。「先得割引」は搭乗の28日前、「特便割引7」は7日前、「特便割引1」は前日までに予約すれば割引になる。ただし、各割引とも座席数が限られているので、夏は早めに購入しないと利用できない。また、予約変更ができないので注意。早朝便や最終便はさらに割安な運賃が設定されているので、早朝に空港まで行ける人は、底値で利用できる。ANAにも「旅割」「特割7」、「特割1」と、同様の特定便割引がある。

東京から広島、福岡(博多)、札幌まで飛行機を利用した場合の交通費(単位 : 円)

■東京から広島

JAL(多客期 : 普通)
普通運賃 往復割引 特便割引1 先得割引 株主優待
33,100 28,500 14,100~17,100 13,100~16,600 16,600

■東京から福岡

JAL(多客期 : 普通)
普通運賃 往復割引 特便割引7 先得割引 株主優待
39,000 34,900 18,800~24,800 14,100~18,100 19,550

■東京から札幌

JAL(多客期 : 普通)
普通運賃 往復割引 特便割引7 先得割引 株主優待
35,700 32,100 21,800~25,800 15,400~19,400 17,900
※1航空運賃には国内線旅客施設使用料(大人100円)を含む。
※2特定割引運賃は日によって違う。表は一例。※3夜行バス「はかた号」は新宿発着。

企業の夏休みが集中する8月中旬は特定便割引が設定されていない路線や、あっという間に売り切れになることも多い。株主優待割引は特定便割引が設定されていないときにも利用できるので、株主はこの機会に利用するとおトク。株主優待券は金券ショップでも売られているが、1枚8,000円~1万円が相場なので、それなりの金額になってしまう。

繁忙期の新幹線はエクスプレス予約で

新幹線は所要時間が飛行機よりもかかるが、乗車定員が多いのと、頻繁に運転されているので、利用しやすい。また、都市の中心部にそのまま到着するメリットも。飛行機の場合、特定便割引なら新幹線よりも安くなるケースも多いが、出発時も到着時も自宅や目的地までのアクセスに別に交通費が必要なので、空港アクセスの交通費を合計すると、特定便割引でも新幹線とあまり変わらないことが多くなる。

東京から広島、福岡(博多)、札幌まで新幹線・特急を利用した場合の交通費(単位 : 円)

■東京から広島

新幹線(のぞみ) JR在来線
繁忙期 エクスプレス予約 運賃のみ ムーンライトながら+青春18
18,750 17,170 11,340 4,260

■東京から福岡

新幹線(のぞみ) JR在来線
繁忙期 エクスプレス予約 運賃のみ ムーンライトながら+青春18
22,520 20,730 13,440 4,260

■東京から札幌

新幹線+特急 JR在来線
繁忙期 運賃のみ 青春18×2回 北海道&東日本パス(連続5日間有効)
22,980 14,070 4,600 10,000
※3新幹線の料金は繁忙期のもの(夏期は7月21日~8月31日まで)。

新幹線で見逃せないのはエクスプレス予約。JR東海のエクスプレスカード、JR西日本のJ-WESTカードを持っている人が利用でき、繁忙期も通常期と同じおトクな料金で予約ができる。

もしまとまった休みをとれるなら、青春18きっぷを利用すればびっくるすほど安く旅ができる。青春18きっぷはJR全線の快速列車、普通列車が乗り降り自由。値段は1万1,500円で1日乗り放題が5日分(連続している必要なし)。一人で5日分利用しても、1枚で5人分利用してもよい。JR全線が1回2,300円で乗り放題になる計算になる。この夏は8月31日まで販売されている(利用期間は9月10日まで)。

青春18きっぷを利用する鉄道ファンや節約旅行の達人たちに大人気なのが、東京駅から大垣駅までの夜行の普通列車「ムーンライトながら」。「ムーンライトながら」を利用すると、関西方面、中国、四国地方、九州も格安で行くことができる。「ムーンライトながら」は全席指定席の快速列車。指定席料金が510円かかるが、必ず座って寝ていくことができる。日付が変わる最初の停車駅、小田原まで普通乗車券1,450円を買い、小田原から先で青春18きっぷを使って乗りつぐのがポイント。この方法で東海道本線、山陽本線と乗りつけば、広島でも福岡でも4,260円で行くことができる。

夜行はしんどいという人は、東京から新大阪まで「ぷらっとこだま」で1万円(8月11日~20日は1万1,500円)で行き、その先を青春18きっぷで在来線を乗り継ぐという方法もある。

北海道方面は東京から夜行の快速列車はないので、青春18きっぷを2枚使って途中下車して宿泊代を1泊5,000円以内に抑えれば、割安に北海道まで行ける。また、「北海道&東日本パス」はJR東日本とJR北海道の快速&普通列車が5日間(連続5日間)乗り放題になるきっぷで値段は1万円。青森~札幌間の夜行急行「はまなす」に乗車できるので、1万円で東京~札幌間を往復することも可能だ。

長距離夜行バスは座席もゆったり

節約旅行には長距離バスも見逃せない。東京~広島間、東京~博多間といった超長距離の路線バスは、東京~大阪間よりも座席もゆったりとしている。「はかた」号は各座席カーテンで囲むことができ、コンパートメント風に利用できる。フリードリンク(セルフサービス)や軽食サービスもついていて人気が高い。

東京から広島、福岡(博多)まで夜行バスを利用した場合の交通費(単位 : 円)

■東京から広島

夜行バス
ニューブリーズ号
11,600

■東京から福岡

夜行バス
はかた号
15,000

各駅停車や夜行バスで旅をすると、通り過ぎる街も飛行機や新幹線で行くのとは違った姿を見せてくれる。ガソリン代、食品高騰のこの夏、ひと味も二味も違った節約旅行を楽しんでみてはどうだろう。

丸田潔(マルタキヨシ)

1952年東京都生まれ。76年早稲田大学文学部卒業。編集プロダクション勤務を経て90年フリーに。マネーライターとして生活情報誌、主婦向け雑誌、マネー誌などで活躍中。金融商品や保険に関する記事のほか、家計や節約の実例記事を数多く手がけ、今までに取材した貯蓄・節約体験の実例は1,000例を超える。近著に『お金がたまる人たまらない人ーなぜあの人はお金がたまるのか』(主婦の友社)