本格的な夏が到来し、毎週末のように全国各地で花火大会が開催されている。駅や街が観客でごった返す混雑ぶりを想像すると、筆者のように一歩引いてしまう読者も多いのでは?! それでも"夏の風物詩"である花火を満喫したい、独り占めしたいという読者のため、約300種類もの家庭で楽しめる玩具花火を揃える花火問屋「山縣商店」(東京都台東区)に社長直伝のディープな玩具花火を教えてもらった。

江戸時代も玩具花火は『たまごっち』並に大人気だった?!

山縣商店は大正3年(1914年)創業の老舗の花火問屋。今では、花火師の派遣やインターネット上での販売なども行う。一方で、国内の線香花火工場が次々と廃業に追い込まれた中、約8年の歳月をかけて東奔西走し、2000年には消滅しかけていた純国産線香花火を『大江戸牡丹』として復活させた。

老舗花火問屋「山縣商店」は約300種類の玩具花火を取り揃えている

同商店が復活の火を灯した『大江戸牡丹』(1袋10本入り525円)。はかなさ、繊細さ、芯の強さ、潔さ、そして華麗さ……という純国産線香花火の本来の姿を見ることができる

山縣商店のサイトに掲載されているコラムによると、そもそも日本の花火の歴史は、1613年に駿府城で徳川家康が英国の特使が打ち上げた花火を見たのが最初と言われているという。あっという間に全国に広がり、特に江戸では急速に広まった結果、花火禁止令が出るほどだったようだ。玩具花火については、1659年、奈良県篠原村から江戸に出てきた弥兵衛が花火製造元「鍵屋」を開業し、手筒の中に球を入れたものを作り、今で言う『たまごっち』のように大人気になったという。

人気なのは大人向けの本格的な打ち上げ花火--子供には煙が出ないタイプなど

山縣商店では現在、手持ち花火から打ち上げ花火まで多種多様な花火を取り扱っている。中でも、今年人気の花火を、生粋の江戸っ子である山縣常浩社長に聞いた。「真ん丸く打ち上がるタイプや、噴火山のように勢い良く噴き出すタイプなど、本格的な花火が大人層に人気だね。海や山での行楽の"アフター"の盛り上げ役になるようだ」。玩具花火自体、大人をターゲットにした商品が増えているという。打ち上げ花火は税別300円から2,000円まであり、2,000円になると真ん丸の花火が3つも出るという。一方、子供も楽しめる花火では、10色が次々と現れながら2分間燃え続けるタイプや、煙が出ないタイプなど1本100円程度で楽しめる手持ち花火が人気だ。

花火は目で楽しむだけでなく、耳で音を楽しむのも醍醐味。花火大会でお腹に響く「ドーン」という音を聞くのが一番だが、家庭ならば手持ち花火に火を付けた途端、「シャー」という音とともに暗闇に鮮やかな火花が噴出す瞬間を思い浮かべるだろう。「まさにソーダ水の泡音のよう」(山縣社長)という、噴火花火『はじけてSHOOWAH 炭酸噴出』の変り種もある。そのほか、最近は「火を付けてからのお楽しみ」(山縣社長)というような、ユニークなネーミングの打ち上げ花火の種類が増えているという。打ち上げ花火『秘伝 奉納花火』も"秘伝"というからには期待がかかる。

噴火花火『はじけてSHOOWAH 炭酸噴出』(1個105円)。ソーダ水の炭酸の泡が弾ける音が花火から?!

ネーミングにそそられる打ち上げ花火『秘伝 奉納花火』(1本1,575円)。火をつけてみるまで正体は分からない、まさに"秘伝"

アニメ花火『MOBILE SUIT ガンダム』(1箱1,260円)。マニアにはたまらない?!

打ち上げ花火『ちゅら花火』(840円)。波照間島西浜の砂のおまけつき。南の島で夏の思い出を作ったつもりに?!

『ジャパンブルー』に火を灯し、北京五輪日本代表を応援しよう!

山縣社長のお勧め『ジャパンブルー』。左がトーチ(1袋1本入り105円)、右がスパークタイプ(1袋3本入り105円)。花火では難しい青色を堪能できる一品

中でも山縣社長のお勧めは、もちろん独特の「和火」が魅力の純国産線香花火だが、最近で言うと『ジャパンブルー』に他ならない。「花火大会で青色の花火を目にしたことはあるかい? 青色を出すのは難しく、研究が進んだ今だからこそ出せるようになってきたが目にするのはまだまだ珍しい。明るく、強い、目が覚めるような青色が素晴らしいんだ!」と大絶賛だ。「ジャパンブルー」といえば、サッカー日本代表のユニホームの青色を指す通称として思い浮かぶが、元々は明治初期に外国人が日本人の身にまとう和服の鮮やかな藍染の色を見て「ジャパンブルー」と言ったという。北京五輪期間中には、この花火に火を灯して日本古来の色で夜空を彩り、遠く北京での日本選手の活躍を応援してはどうだろう。これらの花火を手に入れるには、店舗に足を運ぶ人が多いとのことだが、インターネット上でオリジナル線香花火や10~30名が楽しめるレジャーセット(10,500円)などの花火セット、限定品などごとに注文することができる。

「昔は花火ってもんは、親と子の絆を深めるもんだった」--ルールを守って楽しもう!

最近は一部に花火のマナーやルールを守らない人がいるため、周辺住民への迷惑問題が深刻化し、やむを得ず条例を設ける自治体も増えている。「昔は家の前や公園で花火を楽しむ家族の姿が見られたが、今では音などを気にしてやる場所がなくなってきて子供たちが可哀想。ルールやマナーを守りさえすれば……」と山縣社長も寂しげだ。「花火をしながら一家で話が弾むし、親と子の絆が深まるもんだった。親が火は危ないよ、と教えるいい機会なんだ。現代でもそうあってほしい」と願う。

日本煙火協会もサイト上で、「ルールを守って楽しい花火」を呼びかけている。具体的には、(1)時間、場所についての条例を守りましょう(2)音の出る花火は人の迷惑にならない場所と時間を選びましょう(3)風向きを考え、煙で迷惑にならないようにしましょう、とある。高く上がって音のする花火はマンションなどに飛び込んで破裂し驚かせ、怪我をさせた事例もあるという。自分自身の安全のためにも、たくさんの花火に一度に火をつけたり、花火をポケットに入れたり、花火をほぐして遊ぶようなことは危険なので絶対にしてはいけないと注意している。「広い場所で」、「子供は大人と一緒に」が原則だ。今年は花火のマナーやルールを再確認した上で、花火で熱い夏の思い出を作ってはいかがだろうか? 後始末用の水の入ったバケツやごみ袋をお忘れずに-。