「とにかくユニークで今までに誰も見たことのないような映像を」

マーク・オズボーン
カリフォルニア美術大学で実験アニメを専攻。大学の卒業制作でストップモーションアニメと手書きのアニメを融合した作品『Greener』を制作。様々な映画賞を受賞。その後、監督したストップモーション短編アニメ作品『More』で高い評価を得る。それを契機に、2005年にはドリームワークスから映画『カンフーパンダ』の監督に抜擢される(※もうひとりの監督はドリーム・ワークスのジョン・スティーヴンソン)。現在、新作短編『The Better Half』を制作中

7月26日より公開されるフルCGアニメーション映画『カンフーパンダ』。その監督であるマーク・オズボーンが緊急来日。フルCGアニメーション映画の意義や可能性について熱く語ってくれた。

映画『カンフーパンダ』は全編が最新フルCGで描かれたアニメーション映画だ。この作品で監督デビューを成し遂げたオズボーン監督は、『カンフーパンダ』への想いをこう語った。

「私は元々、Pixer(※『トイ・ストーリー』(1995年)、『ファインディング・ニモ』(2003年)などのフルCG映画を制作しているスタジオ)の作品や、日本のアニメーションが大好きです。ただ、私が今回創ろうとしたのは、とにかくユニークで今までに誰も見たことのないような映画でした。具体的に言えば、リアルなカンフー映画を作ろうと思ったのです。過去のハリウッドで、リアルなカンフー映画は実写でも存在しません。CGアニメーションとはいえ、ジャンル物のカンフー映画としてしっかりとした作品を創りたいという想いがあったのです」

オズボーン監督は、「あくまでもフルCGアニメーションは手法に過ぎず、リアルなカンフーを描くのが目的だった」と強調する。

「CGアニメーションの技法を駆使して、カンフー映画を新しい方向に持っていきたかったのです。パンダなどの動物にリアルなカンフーシーンを演じさせるための手段として、CGアニメーションというテクニックを使ったんです」

リアルなカンフーシーンをフルCGで描くための準備作業として、「制作スタッフは実写映画を徹底的に研究した」とオズボーン監督は言う。

「香港のカンフー映画をとにかく研究しました。中でもジャッキー・チェンの作品は、カンフーとコメディを組み合わせて成功しているという意味でも『カンフー・パンダ』の参考になりました。僕たちは、過去のカンフー映画の名作シーンを1フレームごとに見て、動きを分析して、フルCGの作画の参考にしたのです。アニメーターはモーションキャプチャーを一切使わないで、今回のCGを描いています」

実写のカンフー映画を研究して本作の映像は描かれた

リアルなキャラクターの動きや表情から、あたかも実際の格闘家や俳優を撮影しモーションキャプチャーしたかのような印象を受ける『カンフーパンダ』のCG。驚くべきことにこの作品で、モーションキャプチャーは使用されていない。その事実は、オズボーン監督の誇りでもある。

「『他のカンフー映画と同じじゃないか』という批判を言われたら、逆に僕らの勝利なんです。実際のシーンをモーションキャプチャーせずに、そう思われるようなシーンを描いたのですから」

そんな監督のこだわりは、この作品のキャラクター作りにも表れている。

「大切なのは、俳優そっくりにキャラクターを描くことではなく、俳優さんのキャラクターからインスピレーションを受けて新しいキャラクターを作り上げることです。だから、この映画のキャラクターたちは、俳優の分身ではなく、俳優と我々が共に作り上げた全く新しい存在なのです」

キャラクターのリアルな表情の動きにも、モーションキャプチャーは使われていない。すべてこれらは「アニメーターにより描かれたもの」なのだ