【レポート】

Microsoft中国にみる経営現地化戦略 - 管理職人材のローカライズがカギ

1 北京の中関村にMS研究開発の世界第二の拠点が開設

    西山楓  [2008/07/24]

    今年5月、Microsoft中国研究開発集団(以下、MS研究集団)はハイテク企業や大学が集まる北京中関村で、グループの中国本社ビルの定礎式を行った。同ビルは中関村の中枢業務地区である中関村広場に位置し、敷地面積は1万1,600平方メートル。2年後には、中関村西部に集まるIT企業である、新浪、百度、新東方などの本社に隣接する場所に、新たな本社としてツインタワービルを竣工する予定だ。2棟のビルは総建築面積15万平方メートルあり、完成の暁には約5,000人のスタッフを収容することができるという。

    5月6日に行われた定礎式では、銅鑼と太鼓の音だけでなく、出席する来賓を迎える竜舞隊も登場した。来賓の祝辞の中にも、「各位領導(指導者の方々)」という、非常に中国的な会議用語が加えられ、まるで国有企業の催事のようであった。こうした細部にも、Microsoftが「現地化」でその他の多国籍企業より先を行く状況が垣間見える。

    北京各所に点在するMicrosoft中国の拠点

    過去2年間、MS研究集団は、総裁を務める張亜勤氏の主導の下、「中国智造、慧及全球」の理念を掲げてきた。これは、製、智が中国語の発音で同じことに掛け合わせ、中国政府の悲願である「中国製品」のグレードアップを目指す理念を表している。

    Microsoft中国の所在地は北京海淀区知春路の希格瑪センターで、約3,000人の優秀なITエンジニアが働いている。その大部分は北京大学や清華大学の出身者、中国各地から集まったIT業界の俊英である。今や、知春路にある目立たない7階建てのビルの6階までMicrosoftが入居しており、同ビルの物件管理会社はしぶしぶ最高階に押し込まれている。

    Microsoftが中国に進出してから、2008年で16年になる。現在、MS研究集団の一部は、清華大学近くのオフィスエリアに置かれており、マーケティング部門は北京東部の中枢業務地区である宵雲路に置かれている。

    広い北京、しかも昨今は悪夢のような交通渋滞が常態化した北京で、このように事務所が散在しているのが、Microsoft中国の現状である。

    「購入より賃貸」の常識を覆す本社ビル購入

    7年前、Microsoftは、中国研究院をアジア地域全体を統括する亜洲(アジア)研究院に格上げし、アメリカ本土に次ぐ基礎研究の一大拠点と位置づけた。その後2003年には、中国にMicrosoft Research Asiaを設立、基礎研究開発へのさらなる投資を行った。

    2006年1月には、MS研究集団を設立。基礎研究、インキュベーション、製品開発などの機能を持たせ、Microsoftの中国でのすべての研究開発業務を統括するという位置づけであった。

    MicrosoftでMS研究集団の候補地選択に当たった部門は、かねてより中関村地区に注目してきた。ここには、北京大学、清華大学をはじめとする一流大学が68校もあり、中国科学院を代表とする213の科学研究機構があり、中国科学院と中国工程院の「両院」研究者が211人も集まっている。

    これだけ「知力」が集中した地域は世界中を探しても滅多にない。また、前述のように、ここには大手ポータルサイトを運営する新浪、国産検索エンジントップの百度、パソコン周辺機器のトップメーカーである愛国者、中国最大手のIT系専門学校である新東方教育科技集団など、中国を代表するIT企業が集積している。

    中国では、とくに外資企業の場合、圧倒的に「購入より賃貸」を活用する。外資系企業は、管理職の車使用に関し、4年間のリース代で車が買えるとしても、車を買い与えるよりはリースする。こうした通例からみれば、MS研究集団が北京で本社ビルを購入するという行動は、滅多にないことである。同社なりの中国に対する経営方針、戦略があっての判断であると思われる。

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