富野監督からは、モビルスーツについての発言もあった。以下は富野監督のコメント。

「人が乗るロボット、子どもが乗るということを設定して動かしてみたときに、あんな嫌な乗り物に乗りたくないよってことが、演出すればするほど分かってくるんですよ。あんな上下動をする乗り物、誰が乗るかって。気持ち悪くなるし、大体、絶対に船酔いなんていうレベルじゃないはずなのね。となったら、4輪車のほうが絶対にいいって僕は言い切ります(笑)。だから、ロボットの開発なんてやめましょう(場内爆笑)」

さらに、ニュータイプについては、以下の発言があった。

「今回のことがありまして、例えば東大生、特に理工科系の学生さんたちの性質というものを教えていただいて、正直びっくりしています。ほとんどの大学院生がノーベル賞をとるつもりで勉強なさっているようです。が、ノーベル賞って中世期的な、つまり規範に則った賞でしかないのではないか。それから人類・文明というものは発達するもの、発展するもの、右肩上がり論。人類はずーっとニュータイプになっていくぞ、っていう思想であったのではないか」

「どういうことかっていうと無限論なんですよ。だけどそれは、果たしてそうなんだろうか。つまり石油の埋蔵量の問題が心配されるようになったころから考えれば当然なんですけれども、すでに地球有限論っていうものがあって、本来その有限の地球の中で、我々は1万年も2万年も、ひょっとしたら10億年ぐらいは生きていたいんだよねっていうのが動物の欲望ではないのか。一見これは文明論であるから文科系の人が考えていいようなことなんですが、実は地球っていうシステムで考えていったときに、完璧にシステム論にのっかってるはずなんですよ」

一方で、下山教授からは、次のような発言があった。

「21世紀の科学とか工学というのは、今、さまざまな社会的な課題が出ています。例えばそれがエネルギーの問題だったり、それから地球温暖化の問題だったり、さらに少子高齢社会の話ですね。少子高齢社会はですね、これから統計的に見て、非常に厳しい時代が来る。じゃあどういう解決があるかということで、私たちが考えなくちゃいけないことはたくさんある。そういった社会的な課題に対して、私たちは東京大学の中からですね、どうやったらそれが解決できるのかっていうのを発信していかなくちゃならない。ただ、私たちの発信力というのは非常に弱い。これは認めるところでですね。そういう意味ではジレンマを感じていますが、しかし、富野監督のおっしゃられた文脈を私たちは真摯に受け取って21世紀の大学にしようとしています」

さらに、自らをオールドタイプとする富野監督からは、こんな発言も。

「工学という問題をやはりもう中世までのレベルで考えている、ただ、科学技術を高度に達成させるという、どこを目指すべきなのかということの視点は、間違いなく旧世代にはできないわけだから、ニュータイプである諸君たちがやはり解決してもらわなくちゃ困る。ていうのが、オールドタイプの逃げ口です(場内爆笑)」