赤レンガ倉庫前に並ぶスバルの最新モデルたち

スバル(富士重工)は、同社製自動車の第1号「スバル360」(1958年)の発売50周年を記念し、全国8地区で入場無料のファン感謝イベント「スバル ファン! ファン! フェスティバル」を開催する。その第1弾が、去る5・6日に横浜・赤レンガ倉庫で開催された。好天に恵まれ、入場無料ということもあって、スバルファンやモータースポーツファンのみならず、家族連れを含む大勢の来場者が訪れた。その様子をお届けする。

人気を集めていたのは、実車が日本初登場となる最新ラリーマシン「インプレッサ WRC 2008」。市販車「インプレッサ WRX STI」がベースとなっているハッチバックタイプのWRカーで、2008年の第7戦アクロポリスラリー(ギリシャ)で、WRC世界ラリー選手権にデビューした。今回の展示車輌は、残念ながら実際にラリーを走ったマシンではなく、自走可能なレプリカ車。エースのペター・ソルベルグ仕様ということで、カーナンバー5があしらわれているほか、ソルベルグとコ・ドライバーのフィル・ミルズの名が記されていた。

日本初登場のインプレッサ WRC 2008(ペター・ソルベルグ車)の実車

インプレッサ WRC 2006(ソルベルグ車・2007年モンテカルロラリー仕様)

インプレッサ 555 WRC98(コリン・マクレー車1998年サンレモラリー仕様)

SUPER GTのGT300クラスに参戦中のクスコ ダンロップ スバル インプレッサ。今年の第4戦で優勝

また、同車が展示されていたモータースポーツコーナーには、ほかにも「インプレッサ WRC 2006」(ソルベルグ車・2007年モンテカルロラリー仕様)、昨年事故で急逝したコリン・マクレーが10年前の選手権で乗車した「インプレッサ 555 WRC98」(コリン・マクレー車・1998年サンレモラリー仕様)、SUPER GTの08シーズン第4戦マレーシアラウンドでGT300クラスにおいてクラス優勝を遂げた77号車「クスコ ダンロップ スバル インプレッサ」なども展示され、多くのファンがカメラにその勇姿を収めていた。

会場を絶句させた王者の走り

トークショー中の新井選手。11日からはラリー北海道に参戦

さらにモータースポーツ関連で「インプレッサ WRC 2008」に並ぶ注目を集めていたのが、2005年と2007年の二度に渡り、PWRCプロダクションカー世界ラリー選手権の王座に輝いた新井敏弘選手によるデモンストレーションラン。実際に今年の選手権で使用しているハッチバック型の「インプレッサ WRX STI」によるデモ走行が行われた。

赤レンガ倉庫から徒歩5分に位置する直線路をデモンストレーションエリアとし、王者の驚愕の走りが詰めかけた多数のファンに披露された。ちなみにこの直線路、片側一車線/対面通行のごく普通の道路。Uターンするには、市販車だったら数回切り返さないと無理である。それにも関わらず時速120km/hで突っ走り、なおかつその速度域でスラローム走行や直線ドリフトを決め、折り返しではスピンターンで何回転もして見せ、歓声を浴びていた。

新井敏弘選手によるデモランの様子。ファンが鈴なり

スピンターンで何回転もしている様子。タイヤスモークがすごい

なお、同マシンは、12日からスタートするアジア・パシフィックラリー選手権と全日本ラリー選手権併催の「ラリー北海道」にも出走するマシン。ぶつけたりするとまずいわけだが、取材した初日の2回目の走行では、攻めすぎてバンパーをこすってしまったそうである。初日の3回目では予定より多く走行した上、圧巻だったのがラスト。普通、クルマの待機スペースには、減速して進入するものだが、完全に90度になる直線ドリフトを決めると、歩道にある待機スペースに一気に突っ込むという荒技を披露した。

スピードも、直線ドリフトもすごいが、植え込みと植え込みの間のクルマが歩道に入るためのすき間がクルマ1台分しかなく、そのコントロールの絶妙さに、来場者はみな絶句していた。ちなみに、待機スペースから7~8メートル進むと、途中に頑丈な鉄柵があるとはいえ、もう海である。停車スペースに飛び込んだときは、とても停車できるようなスピードに見えなかったため、歓声というよりは悲鳴が上がりそうな1シーンだったが、全部新井選手の計算の内。改めてラリードライバーの凄さに全員が酔いしれていた。

 そして新井選手は、1日2回のトークショーも実施。新井選手は、25歳の時からスバルのドライバーとして活躍しており、今年で16年になるという。それ以前は、いすゞのドライバーだったそうだが、同社が乗用車生産を取りやめたため、スバルに移籍したそうだが、その時に声をかけてもらえなければ、これだけのつきあいはなかったかもしれないと語っていた。また、トークショーのスペシャルステージが暑かったことから、ラリーカーの車内温度の話に。ドライバーは耐火用にレーシングスーツの下にさらに3枚のインナーを着るのだそうだが、トルコでは車内温度が70~80度にも達し、大変だったという。

実際のラリーで走る道は、デモンストレーションエリアの片側車線はまだ広い方で、もっと狭い道はいくらでもあるそうだが、そんな道を時速200~230km/hで走るという。崖から後輪が半分飛び出すこともあるそうだが、乗っている最中は「アブねぇなぁ~」ぐらいの感覚しかないのだという。ラリードライバーの尋常じゃないタフさに、トークを聞き入っていた人たちから驚きの声が上がっていた。

さらに、今年のラリージャパンは札幌が拠点のため、アクセスがよく応援に行きやすいというという話題では、「みんな札幌に行ったら、どこか違うところに行っちゃうんじゃない?」と、ややアダルト寄りなボケで会場を笑わる一幕も。トークショーの最後にはチャリティーオークションが行われ、熱心なファンが高額で市販されていないスバルチームスタッフシャツや実際に新井選手がラリーで使用したホイールなど、レアアイテムをゲットしていた。