――伊上さんと相談してお書きになったのが、『クロスファイヤー』の企画書だったんですね。石ノ森章太郎先生のところに持ち込まれたときは、いかがでしたか?

「僕が持ち込んだ案を石ノ森先生に見てもらってね、さっそく『クロスファイヤー』の絵を描いてもらって。先生早いんだよね。企画書読んでるときに、もう頭の中にできてるんだよ。すぐにラフができちゃうわけ」

――石ノ森先生らしいエピソードですね。

「で、石川さんて人がいてね、先生がペン入れと色付けを指示して、で、『明日の朝には、でき上がりますから』って。で、でき上がったの見たら、かっこいいんだよ、すごくかっこいいんだ。ブラックフェイスに赤い十文字でしょ」

――上司や局の方々のリアクションもよかったんですか?

「渡辺さんも『うん、これはいい』って。それで毎日放送にもってったら、みんな『いける』と。それで、大阪へ送った。局長も見て、『よし、やったぞ』(笑)」

――ところが、それがボツになってしまう……。

「その晩に石ノ森先生から電話がかかってきて、『平山さん、申し訳ないですけど、今日渡した絵は取り止めにしてください。ズキンとくるものがない。あれはダメです』。ダメですったって、『先生、困るんですよ』(笑)」

――関係者の方々の意見がまとまっているときに、それを取り消すのは難しいんでしょうね。

「偉い人がみんなのってるんだから、それをダメですって取り返すのは、ホントに大変。それで石ノ森先生のところへ行ったら、さっそく、替わりにスカルマンを描いてくださった。ガイコツイメージね。僕ら、紙芝居の『黄金バット』でガイコツがどれだけの神秘性をもってるかってことは知ってたわけ。ところがね、後に『仮面ライダー』を一番後押ししてくれた箱崎営業部長がね、『平山さん、ガイコツだけは勘弁してください』って」

――毎日放送東京支社の営業部長、箱崎賞さんのことですね。ずいぶん、ガイコツも嫌われましたね(笑)。

「つまり、『スポンサーのお偉方っていうのはね、お年を召した方が多い。そこへガイコツをもってったらね、縁起が悪いって絶対嫌がられるに決まってます』って言って、頑として聞き入れないんだよね。『ガイコツ以外なら、なんでもいいです』って」

――営業部長ともなると、スポンサーサイドの地位のある方々との交渉の最前線にいらっしゃるわけですよね。ずいぶんご苦労なさったことでしょうね。そうおっしゃりたくなる気持ちも分かるような……(笑)。

「『そんなのは、大人の考え方でしょ。子どもから見たら、黄金バットのことはご存知のことと思いますけど、日本中で大人気なんですよ』って言ったんだけどね」

――それでも、どうしても、箱崎さんには受け入れられなかったんですね(笑)。

「しょうがないから、また石ノ森先生のとこへ行ってね(笑)」