【レポート】

奥只見発電所と森の意外な関係について知る--エコ×エネ体験プロジェクト

1 ナイトハイクで灯りの無い世界を体験

    寺田祐子  [2008/07/07]

    エコロジーとエネルギー。一見相反するように見えるこれら2つの言葉を融合するために生まれたのが「エコ×エネ」という概念だ。「×」には掛け合わせることで、環境と電力への理解をより多くの人に広め、さらには新しい行動を生みだすきっかけになれば、との願いが込められているという。

    全国67カ所(2007年6月末現在)の発電所を運営する卸電気業者、J-POWER(電源開発)。そして環境教育事業に長年取り組んでいるキープ協会。これら環境とエネルギーの専門家が協働して行う「エコ×エネ体験プロジェクト」は、奥只見発電所と周辺の豊かな自然林を舞台に、体験を通じて「エコ×エネ」を理解してもらうことを目的とする、ユニークな環境学習支援プログラムだ。

    キープ協会の増田直広さん

    筆者は今回、学生を対象とした「エコ×エネ体験プロジェクト」に参加するため、上越新幹線で東京から約1時間半、コシヒカリで有名な魚沼市があるJR浦佐駅に向かった。奥只見ダムへ向かうバスの中、キープ協会の増田直広さんは「ダム見学や森に入るなど、日常生活ではあり得ないことを体験する3日間です。当たり前ではないことに挑戦するというのは難しいことですが、そこから何かを発見してほしい」と参加者に呼びかけた。

    目的地に向かう途中、新潟県魚沼市にある景勝地、銀山平の駐車場にバスは停車。ほど近くの林で早速、ワークショップが始まった。まずは周辺から1人3枚の葉を集める作業。森の中を歩くと、たくさんの種類の葉があることに気づく。

    この葉を使ってちょっとした遊びをした。2人1組となり、集めた葉の中から「ギザギザが多い葉」「小さな葉」などお題に一番適した葉を選ぶ。そして、相手と背中合わせになり「ハッパッパ」という掛け声を合図に、ジャンケンのように葉を見せ合う。お題に近い方が勝ちだ。勝ち負けを争うのも面白いが、相手の採集した葉を見ると植生の豊かさを感じずにはいられない。

    「ハッパッパ」という掛け声を合図に、採取した葉っぱを見せ合う。お題に近い方が勝ちだ

    ワークショップが終わり、銀山平から遊覧船「おぜ」で奥只見湖を渡ること30~40分。眼前にコンクリート製の巨大な壁が現れる。目的地である奥只見発電所だ。

    遊覧船「おぜ」で奥只見発電所へと向かう

    眼前に広がるコンクリートの壁。奥只見発電所だ

    到着したこの日はダムのすぐそばにある「緑の学園」にチェックイン。その後、灯りを使わずに山を散策する「ナイトハイク」へと出かけた。外は街路灯もない。学園に灯る光だけが唯一だ。自然の声を掻き消さないよう、声を潜めながら、2班に分かれて散策する。

    真っ暗な闇の中に人の影がうごめく。少しずつだが、目が慣れてくると空と山の境がはっきりとしてくる。空はグレー、山は漆黒に塗りつぶされたようだ。耳を澄ます。泡がはじけるような音がモリアオガエルだ。リリリ……と涼やかな声を響かせるのがカジカガエル。この時期、カエルが産卵期を迎えており、にぎやかな合唱を聞かせてくれた。クククク……とモールス信号のような音を立てて飛ぶのはヨタカ。さらに、耳を凝らせば、川のせせらぎや虫の声も聞こえてくる。「皆さん思い思いに過ごしてください」と言われたので、ビニールシートを地べたに敷いて寝っころがった。自然の音を聞きながら過ごす時間は格別。東京では味わえない、特別な"体験"だ。

    声を潜めながら夜、自然探索へと向かった「ナイトハイク」

    周囲には20人程の人がいる。もちろん「いる」ことは分かるものの、闇に溶け込んでいて誰が誰かは分からない。孤独感が胸をよぎり、自分の吐息だけが耳元をかすめていく。ふと、キープ協会の方が「自然と人間ってイコールなんですよ」と力を込めて話していたのを思い出した。カジカガエルもヨタカも、闇に葉を閉じてじっとしているクローバーも、そして筆者も自然の一部。わたしたちは共に生きているのだ、そんな思いに駆られた。

    学園に戻ると空は明るいグレーからいつもの暗闇に変わっていた。灯りのそばにいるだけで、こんなにも見える景色が違ってくる。そんな驚きが新鮮だった。

    次の日、ナイトハイクをした場所を再び散策した。筆者たちが歩いたのは奥只見エコパークといって、奥只見発電所の増設工事で発生した掘削土岩で作られたビオトープ(生物群の生息場所)。元々あった湿地の生態系を残すため、湿地状の人工池を設置するなどの配慮がなされて整備されている。周辺にはホウバ、ハナウツギ、イタドリ、ウド、ゼンマイなど様々な植物が生い茂っていた。なかでもゼンマイは、乾燥ゼンマイにすると3kgで3万円という大変高価な商品になるため、春先はゼンマイ取りを業とする人も多いそうだ。こうした話からも発電所と環境、そして人間のつながりを感じる。

    元々の生態系を崩さないようにつくられた奥只見エコパーク

    ゼンマイ。乾燥させると高級品になるという

    モリアオガエルの卵

    2日目は、エコ×エネ体験プロジェクトのハイライトでもある「奥只見発電所」の見学とブナ林を散策する「森の体験プログラム」が行われた。

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