【レポート】

裸眼立体ライブ映像システムを支えるカメラアレイの開発 - 東京大学

2 意外と手ごろな"最先端"のカメラアレイシステム

    渡邉利和  [2008/06/25]

    同研究室で使用しているカメラアレイ。AXISのネットワークカメラが8×8台並んでおり、すべてのカメラはギガビットEthernetを通じて1台のPC(Dell製)に繋がっている。カメラアレイから出る配線は,通信用のEthernetケーブル1本と電源ケーブル1本にまとめられるため、アレイシステムの移動も容易。AXIS 210を選んだ理由のひとつは「コストパフォーマンスの高さ」(苗村准教授)だという

    ユニークな点は、このカメラアレイが市販のネットワークカメラを組み合わせて実現されている点だ。特殊なモジュールではなく市販品を利用することで低コストで十分な品質が得られることがメリットとなる。使用されているのはAXISのネットワークカメラ(AXIS 210、最大性能は640×480×30fps)だが、製品の特徴としてカメラ自体がネットワーク接続機能を備え、JPEG圧縮によって映像サイズを圧縮して出力する点が挙げられる。これは各カメラとPCとの接続の負担を軽減することにも役立っている。実際、このカメラアレイとPCとの接続はGbEケーブル1本に集約されている。多数のカメラを接続するにはケーブリングだけでも大変な負担になりかねないが、研究途中でありながら、すでにカメラアレイ全体を1台のカメラとして扱えるほどに洗練されているのだ。

    もちろん、多数のカメラを並べることに起因する困難さもあったという。たとえば、カメラごとの微妙な特性のばらつきの問題だ。ユーザーとしては、同じ機種のカメラで同じシーンを撮影すれば、得られる映像も同質になることを期待するが、実際はそううまくはいかない。それぞれの映像を別々に見ると気がつかないが、並べてみると違いがわかる程度の差は出てしまうという。

    カメラアレイの前に立つと、64台のカメラがそれぞれ異なる視点(多視点)で被写体を捉えている様子がわかる

    64枚の画像はGPU上で合成され、1枚の画像となる(GPU→CPUへのデータ伝送はない)。なお、本システムのPCは、Intel Xeon 5160×2(3GHz)、メモリ3GB搭載の市販品だ

    また、圧縮によってデータ量が小さくなっているとはいえ、64視点分の映像データを途切れなく受信し、さらにデータを分析・合成して3D映像を作り出す処理をリアルタイムで実現するために、さまざまな工夫が凝らされ、技術開発が行われている。わかりやすい部分だと、その合成演算には画素ごとに並列処理できる部分が多いため、グラフィックスカード(NVIDIA GeForce 8800 Ultra GPU、ビデオメモリ: 768MB)を利用した演算、いわゆるGPGPUを使うことで高速化されているという。

    デモを見ながら視点を移動してみると、たしかに通常のビデオ映像とはまったく異なる動き方をするのがわかるのだが、静止画ではわかりにくいのが残念だ。本来であれば、表示デバイスも3次元映像表示に対応した、いわゆる3D TVが必要になるのだが、こちらもまだ研究途上であり、現時点では試作レベルに留まっている。先端の研究分野ではたいていそうだが、3D TVも入力から出力まで、各レイヤが同時並行的に研究開発が進められており、門外漢には全貌が掴みにくい状況だ。ただ、現状ではSFの中の小道具と捉えられがちな3D TVも、小サイズで低解像度ではあるにしても、現時点ですでにデモができる段階に達しているということは知っておいて損のない話かもしれない。家庭で3D TVの映像を楽しめるようになる日は、意外に早く訪れるのかも、と期待を抱かせるだけのレベルに達していた。

    本取材に協力してくださった苗村准教授と研究室の皆さん

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