【レポート】

クリエイター教育を支援するアドビのEducation Vanguards

    矢澤哲  [2008/06/18]

    アドビ システムズ、マーケティング本部教育市場部部長、増渕賢一郎氏

    アドビ システムズは大学、専門学校など、高等教育機関の教員の授業を支援するコミュニケーションプログラム、「Adobe Japan Education Vanguards」を公開している。このプログラムでは、クリエイティブに関連する専門分野の教員の先駆的な取組みを紹介し、他の教員から学ぶ機会を提供する。それととともに、教育上の課題などの、情報共有を目的としたもの。アドビ システムズ、マーケティング本部教育市場部部長、増渕賢一郎氏にEducation Vanguardsとアドビ システムズの取組みについて聞いた。

    高等教育機関が抱える課題

    「大学、専門学校など、高等教育機関においては、デザインに対する思考やコンセプトなど、本質的なデザイン教育が求められる反面、急速に進展する最先端の技術動向に伴って、プロの世界で求められるスキルセットが変化し、高度化がはかられています。さらに入学時における学生のIT知識、操作スキルの個人差は広がり、操作スキルを学校以外で自己習得する環境が必要となってきています。また学部、学科の専門化、高度化により分野の縦割り化が進んでおり、同じデザイン分野であっても、他の学部の学生と交流したり、刺激し合う機会は減少しています。このような状況の中、より高いクリエイティビティを学生に発揮させるために、学科の壁を越えた横断的な視座、発想が求められています」と増渕氏は高等教育機関の教員が直面している課題を指摘する。

    これら高等教育機関の抱える課題に対して、アドビは教員、指導者のニーズに対応したさまざまな支援や情報提供、さらにクリエイターを目指す学生に向けた支援、スキルの育成をはかるプログラムなどを発表している。

    教員向けプログラム「Adobe Japan Education Vanguards」

    まず、ひとつは学生に対する取組み。これまで同社は美大生、専門学校生、高等専門学校生に焦点を合わせた取組みを特別に行ってはいなかった。しかし、ここ1~2年、アドビはクリエイターを目指す学生を非常に重要なマーケットとして位置づけ、適正な価格での製品の提供やクリエイターになるにあたって必要なスキル取得の支援する、クリエイティブ分野の学生コミュニティ「Adebe Creative Canpus」を設立した。

    もうひとつが教員、指導者に対する取組みだ。デザイン、デジタルメディアコミュニケーション、情報技術などを専門にする教員の授業を支援するために、コミュニティをつくる取組みを行っている。それが2007年12月からはじまった、Adobe Japan Education Vanguardsだ。

    Adebe Creative Canpus(左)とAdobe Japan Education Vanguards(右)のサイト。クリエイティブ分野の教員、学生のためのコンテンツが用意されている

    Adobe Japan Education Vanguardsは、高等教育機関(大学、専門学校)でデザイン、デジタルメディアコミュニケーション、情報技術などを専門にする教授、准教授、講師、およびメンバーより推薦を受けた助手を対象としたプログラムだ。端的に言うとクリエイティブ分野の教員のコミュニティをつくり、教育現場における共通の問題の把握や、他の教員から学ぶ機会を提供するなど、アドビでできることをサポートするものだ。

    具体的には、月1回のHTMLニュースレターの発行、各専門分野の先生方のインタビュー記事などメンバー向けに厳選したコンテンツが提供される。また、通常よりも長い期間を設定した試用版の提供、製品発売前のベータ版テストプログラムへの参加など、新製品に関する情報も提供される。そのほかにWeb会議システムのフリーアカウントの提供、Adobe Acrobat Connect Professionalによる製品のオンラインセミナーなどが用意されている。

    注目は先駆的研究者のインタビュー

    Adobe Japan Education Vanguardsに掲載されるインタビュー記事は、専門分野の立場から、情報やテクノロジーとの関係、社会への影響や新たな可能性について、教員の取組みとともにその背景にある先駆的な思考を紹介するもの。教員が何を研究しているかだけでなく、どういう理由で研究しているのか、その経緯まで含め一歩踏み込んだ情報を提供している。

    現在、ひとつの研究分野に対しても多くのアプローチがあり、従来のようにひとつの学会に出ればある程度の情報が入ってきた時代ではなくなっている。実際、複数の学会に参加し、幅広く情報収集している教員も多い。アドビでは、カリキュラムの選択や、速すぎる技術の進展に悩んでいる教員に、問題点や解決法などの情報共有をする場にしたいとしている。

    「従来のデザインだけでなく、開発プログラムもできなければ高い給与は得られなくなっています。ところがデッサンを勉強し美大に入った学生にどうプログラミングを教えるのか。そのギャップなど、解決しなければならないこと、伝えなければいけないことが数多くあります」と増渕氏は語る。

    さらにアドビでは、教育者、研究者の生の声に触れられるコンテンツを用意することで、そうした声を反映したマーケティング施策を打っていく予定で、今後はメンバー同士の意見交換を行う仕組みも取り入れていくという。

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