北海道限定販売の菓子として有名な石屋製菓の「白い恋人」。2007年8月、賞味期限を改ざんしたとして一時販売休止となったが、同年11月に再発売したところ再開を待ちわびていたファンが殺到、各店舗とも即日完売となった。今回は「白い恋人」の製造ラインなどが見学できる白い恋人パークを訪れ、販売再開後の製造や人気の秘密について探ってみた。

別世界が広がるお菓子のお城

白い恋人パークは、石屋製菓が運営するチョコレートの博物館。内部には白い恋人の製造ラインをはじめ、ショップ、カフェ、ラウンジ、お菓子作り体験工房、昔の子供のおもちゃ箱、コンサドーレ札幌コレクションハウス、宮の沢サッカー場、ローズガーデン、ソフトクリームハウス等が集まっている。

「白い恋人パーク」は「チョコレートの博物館」と呼ばれる複合施設

パークの中庭に足を踏み入れると、敷地中央にそびえ立つのが「札幌からくり時計塔」。毎正時にはからくり人形のラッパ隊が、ファンファーレを鳴らしながらショーを繰り広げる。そして、その目の前には約480平方mの敷地にバラが咲き誇る「ローズガーデン」。さらに満開のバラの向こうに見えるのは、15世紀頃の英国のチュダー王朝時代に流行した建築様式を再現した「チュダーハウス」だ。ここには、日本の古いブリキのおもちゃ等を展示している「昔の子供のおもちゃ箱」があり、そのコレクションは質・量ともに全国でも珍しい規模である。

毎正時にからくり人形によるチョコレートカーニバルを繰り広げる「札幌からくり時計塔」

約480平方mの敷地にバラが咲き誇る「ローズガーデン」

色取り取りの陶器の上を水が鮮やかに流れ落ちる「オーロラの泉」

中庭から見た「チュダーハウス」

早速、白い恋人の製造ラインがある「チョコレートファクトリー」に足を運んでみる。受付で入館料を支払うと、白い恋人パークの館内案内などが書かれたパスポートと一緒に、白い恋人1枚が手渡される。そして、建物内にはお菓子の甘い香りが。嫌が応にも期待が高まる。製造ラインにたどり着く前に、チョコレートの歴史などを学ぶことができるのもポイント。2階の「チョコレートカップ・コレクション」では、ヨーロッパのチョコレートカップが展示されており、18世紀頃まで「飲み物」としてチョコレートが楽しまれてきた歴史を物語っている。また3階には、19世紀のイギリスのチョコレート工場をジオラマで再現した「マジックビジョン」。一定時間ごとに映像の映し出しが行われ、ジオラマの工場内に子供たちの映像を映し出し、チョコレートの美味しさの秘密を探る仕組みとなっている。

昔のヨーロッパのチョコレートカップが展示「チョコレートカップコレクション」(マイセンなど)

19世紀イギリスのチョコレート工場をからくり人形と映像で見学する「マジックビジョン」

「白い恋人」はこうして作られる

マジックビジョンの先がいよいよ「白い恋人」の製造ラインだ。ラインは2階にあり、3階から見下ろす形で見学できる。まずは「白い恋人」のクッキー(ラングドシャークッキー)の生地を作る工程。バター・砂糖・卵白を、機械でよく混ぜることで、たくさんの空気を含んだフワフワの生地ができるという。次にクッキーの生地を四角に形取り、大型のオーブンで約8分焼く。工場内の柱や壁には、世界各国をテーマにした人形などのオブジェが飾られている。見学者だけでなく、世界中のいろいろなものから注目されるまさに"夢のお菓子工場"といった雰囲気だ。

次に焼いたクッキーにシートチョコレートをサンド。「白い恋人」はクッキーとチョコレートだけのシンプルなお菓子であることに改めて気づく。一日何枚ぐらい白い恋人ができるのかについて聞くと「最近生産量を増やしていまして一日60万枚焼いています」とのことだった。その後、冷却、賞味期限の印字、包装、X線と金属探知機を用いた検査という製造工程を経て「白い恋人」は完成する。大量の「白い恋人」が、流れ作業で作られていく光景はまさに圧巻。問題となった賞味期限の印字の行程については、設備の新規導入が行われ、科学的根拠に基づき設定した120日の賞味期限と製造年月日を袋ごとに印字している(同社広報)とする。

設備の新規導入が行われていた「白い恋人製造ライン」

体験工房で「私の白い恋人」

製造ライン見学を終えて4階にあがると「お菓子作り体験工房」がある。ここでは子供から大人までお菓子作りが体験(有料)できる。

クッキー作りには、ハート型の白い恋人を作る「私の白い恋人」、クッキー生地を型で抜き、オーブンで焼き上げる「型抜きクッキー」、北海道の形をしたクッキーに絵や文字を書く「お絵かきクッキー」、クッキーを型抜きし、立体の家を組み立てる「ミニクッキーハウス」などがある。

オススメはやはり、白い恋人を実際に作ることができる「私の白い恋人」。ラングドシャの生地をハート型に抜き、焼くこと10数分。アツアツの生地にホワイトチョコレートを挟み、チョコペンで好きな文字や絵を書き入れる。最後はパッケージに入れて完成となる。専用の箱にも「私の白い恋人」と書かれ、裏側の製造者欄には自分の名前をボールペンで書き入れることができる。なんとも心憎い演出だ。

同社広報によると、贈る人へのメッセージを添えることが多いらしい。「お絵かきクッキー」は北海道の形をしているので、旅行の記念としても人気が高い。また、バレンタインやこどもの日等に合わせたイベント体験もある。

お菓子作りが体験(有料)ができる「お菓子作り体験工房。料金はコースにより異なり、私の白い恋人(所要時間約1時間10分)が1枚1,050円、お絵かきクッキー(所要時間約30分)1,050円。型抜きクッキー(所要時間約50分)840円、ミニクッキーハウス(所要時間約2時間)1,575円

復活した「白い恋人」、より美味しくなったそのワケは?

2007年8月、賞味期限を改ざんしたとして一時販売休止となった「白い恋人」は、インターネット上で「お宝」として売買されていた時期もある。同社広報は復活の際「販売再開を第2の創業と位置づけ、安心と安全を第一に考え、設備と気持ちを入れ替えた」と振り返る。

あわせて製造再開にあたって「白い恋人」の味も見直したとのこと。同社が創業60余年の歴史の中で作り上げてきた「白い恋人」をさらに美味しくするため、原料や工程をもう一度見直し、「クッキーのさくさく感やチョコレートの口溶けを増した」(同社広報)という。

新しい「白い恋人」の評判は上々で、「柔らかくデリケートになって、さらに美味しくなった」と多くの顧客に受け入れられ、銘菓の地位を再び取り戻しているようだ 。「白い恋人」の売上は今年度、前年同時期の115%を達成。同社広報によれば「夏の繁忙期を過ぎないと本格的な回復軌道に乗ったかどうか判断できない」と慎重な姿勢を崩さないものの、「ホワイト&ブラックの36枚缶入り、54枚缶入りなどのアイテムも増やし、着実に販売を進めていきたい」と期待を込めている。

白い恋人パーク

住所 : 北海道札幌市西区宮の沢二条2丁目11番36号
営業時間 : 9:00~18:00(入館は17:00まで、売店は19:00まで)
休館日 : 無休。なお6月16日より19日まではメンテナンスのため製造ラインは稼働していない。
料金 : 大人600円、中学生以下200円(団体20名以上は一般500円、中学生以下150円)3歳児以下無料
アクセス : 地下鉄東西線終点「宮の沢駅」下車徒歩約7分、札幌駅バスターミナルよりジェイアールバス「西町北20丁目」下車徒歩7分。
駐車場 : 108台、1000円(1000円以上買い物、又は有料施設利用の場合は無料)