【レポート】

米国産牛肉輸入問題で、交通情報・動画サイトのお株まで上がる - 韓国

    佐々木朋美  [2008/06/11]

    米国産牛肉輸入問題で揺れる韓国。連日行われている数万人規模の街頭デモは収束するところを知らず、興奮したデモ隊とそれを防ごうとする警察との衝突もしばしば。イ・ミョンバク大統領の支持率は20%以下に急落し、閣僚たちが次々と辞職するなど、牛肉輸入という1つの問題があらゆる方面に波紋を呼び、内政は大揺れしている。

    交通情報を必須にした街頭デモ

    そんな一連の出来事の影響を受けている意外なサービスもある。それがTPEG(Transport Protocol Expert Group)だ。TPEGとは、地上波DMB(日本で言うワンセグ)や衛星DMB(日本で言うモバイル放送)のデジタル放送信号を通じて、交通情報やニュース、天気、観光情報などを提供するサービスだ。

    地上波DMBか衛星DMBに対応したナビゲーションさえあれば、別途追加購入する装備なしに利用が可能。利用料金は端末代にあらかじめ含まれていたり、あるいは2万8600ウォン(約2,900円/1円=0.1040ウォン)程度の年払い形式となる。対応地域は全国の高速道路や国道といった主要道路だ。

    サービス業者は現在のところ、衛星DMB事業者のTU Media、衛星DMB事業者のKBS、MBC、YTNとなっている。これらの企業と、道路交通情報提供業者などが提携する形で、ナビゲーションの地図上に色つきで渋滞情報が表示されたりしている。

    このような仕組みのTPEGと米国産牛肉輸入反対デモには、なんら関係がないように見えるが、実は深い関係があった。

    交通情報収集・提供業者のSKエナジーでは最近、TPEGによる「RTM(Road Traffic Message)」サービスが脚光を浴びていると明らかにした。

    RTMは、道路上で起きている各種事故や統制情報を知らせてくれるサービス。ここではもちろん、大規模街頭デモの情報も表示される。牛肉反対関連の街頭デモが行われるのはおもに青瓦台(大統領府)付近だが、この周辺は多くの政府機関や企業が位置し、大きな道路同士が交わる交差点によって道が四方に別れる交通の要地でもある。そんなところでデモを行うので、普段から混雑しがちの道路がさらに混雑することとなる。そのためTPEGのRTMサービスが注目を浴びるというわけだ。

    SKエナジーによると、RTMサービスの評判は、インターネット上のナビゲーションコミュニティにおいて、以前にも増して高まっている状態で、こうした口コミの評判がさらなる人気を呼んでいるようだ。

    こうした注目度の高さに応えるべく、交通情報収集・提供業者たちは、通常のモニタリングカメラなどを通じた情報収集のほかに、実際に現場にモニタリングスタッフを送りつけ、デモのような変わりやすい事態に対応しようとしている。大規模街頭デモが、TPEGサービスの利用者側だけでなく、企業側をも活性化させているようだ。

    デモ風景生中継で最大手抜く

    大規模街頭デモは、動画サイトをはじめとした各Webサイトも活性化させている。

    インターネット調査会社のRankey.comは1日、動画投稿サイトの「afreeca」が72万人のユニークユーザー数を記録したと発表した。同社によると、これは「2週間前の5月18日と比べ108%増加した数値」ということだ。同社の統計では、投稿動画サイトとしては韓国最大手の「Pandora.TV」が継続してユニークユーザー数1位を記録していたものの、この日にいたっては、AfreecaはPandora.TVをも抜く勢いを見せた。

    突然のafreeca好調の理由も、やはり米国産牛肉輸入問題にある。街頭デモの現場を個人が撮影して公開したり、生中継をしたりするといったことが、afreecaで盛んに行われているからだ。記者顔負けの映像生中継を行っているのは、afreecaの「BJ(Broadcasting Jockey)」と呼ばれる会員たちで、afreeca上の多くのデモ映像は彼らが「ノートPCとカムコーダを持って、直接現場を撮影」するという、積極的な行動のたまもののようだ。

    afreecaによると、5月25日から6月1日のデモ映像視聴者は400万人に上ったという。6月1日に個人による生中継数は最大500個に達したほか、同時視聴者数は10万人に達するほど、注目度は高かった。

    5月18日から6月2日までの、afreecaおよびPandora.TVのユニークユーザーの変化。6月1日の、afreecaのユニークユーザー数が、Pandora.TVのそれを追い越している

    afreecaでは現在、「平和のろうそくの火集会(ろうそくに火を灯して集会を行うことから、韓国ではデモのために集まることをろうそくの火集会とも呼ぶ)現場生中継」と題した、デモ映像専用のWebページまで用意している。

    ここで実際に映像を見てみると、多くの市民がろうそくを手にして行進する様子や、デモ現場で起きたちょっとおかしな小事件のほか、警察と市民との衝突など、ニュースなどでもなかなか接することのできないリアルな映像を見ることができる。

    afreecaの「平和のろうそくの火集会現場生中継」サイト

    米国産牛肉輸入問題は、当初は予想していなかったさまざまな方面に影響を与えているようだ。そうした現象も大変大規模なデモが長期間続いており、社会的な注目度が高いことによるものかもしれない。TPEGにしろ動画投稿サイトにしろ、こうした人気を一過性に終わらせず、定着させたいというところだろう。

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