【レビュー】

ケビン・コスナーが奏でる"変態"三重奏に感服! 『Mr.ブルックス~完璧なる殺人鬼~』

    山田井ユウキ  [2008/06/05]

    ケビン・コスナー、久々に見たなー!

    それが『Mr.ブルックス~完璧なる殺人鬼~』を見たときの僕の第一声だったわけですが、もちろんケビン・コスナーは映画から遠ざかっていたわけではなく、コンスタントに出演はしています。

    ただ最近はあまりヒット作に恵まれていないイメージがあって、僕の中での彼は『ロビン・フッド』だとか、『パーフェクト・ワールド』の頃のまま止まっていたのでした。いくらなんでもブランクありすぎだろ自分……。

    そのケビン・コスナーが、久しぶりにがっつりと存在感を示してくれたのが本作、『Mr.ブルックス~完璧なる殺人鬼~』。

    たまに歳を取って残念なことになる俳優もいるけど、ケビン・コスナーはずっと男前! さすがだ!

    あらすじを簡単にご紹介しましょう。

    大企業の社長であり、美人の妻と娘に恵まれて何不自由なく生活するアール・ブルックス(ケビン・コスナー)には、誰も知らない裏の顔がありました。

    それは、彼が殺人依存症の快楽殺人鬼であること。
    しかも、殺した男女を死体のまま絡ませては写真を撮って楽しむというヤバイ趣味も持っており、一言でいうとつまり彼は変態です。

    映画の中では、その写真を見ながらブルックスが裸で「Oh…」とか喘ぐシーンがあるんだけど、良い感じに鳥肌が立つよ!

    これからはカッコイイ変態オヤジの時代が来る! ……のか?

    ……とはいえブルックス自身はこうした自身の依存症を克服しようと努力しており、その手のセミナーにも出たりしています。細かいところですが、そのセミナーの自己紹介で他の人が「アルコール依存症です」などと告白する中、ブルックスひとりが「……依存症です」としか言えなかったのはちょっと笑ってしまいました。そりゃ殺人依存症とは口にできんわな。

    そうした努力(?)の甲斐もあり、最近は殺人衝動を控えることができていたブルックスだったのですが、そこは依存症の恐ろしいところで、「我慢するなよ。殺そうぜ」と彼にささやきかけてくる心の声はどんどん大きくなっているのでした。

    この「心の声」であるブルックスの別人格マーシャルを好演しているのがウィリアム・ハート。こちらもケビン・コスナーと同じく、渋くてかっこいいオッサンです。

    大物同士のコンビはさすがに貫禄たっぷり(左:マーシャル)

    で、マーシャルにそそのかされたブルックスは我慢できず久しぶりに殺人を犯してしまうのですが、ここで彼のターゲットになったのが、自宅でカーテンを開け放したまま情事に耽っていたバカップル。こいつらはひょっとして、通行人に自分たちの営みを見せるのが趣味なのか。つまり変態か!

    それはともかく、「映画でのバカップルはすぐ死ぬ」という僕の中だけで通用することわざがあるのですが、この変態バカップルも例に漏れず、ブルックスにサクッと殺されてしまいます。

    しかしやはり油断はできないもので、なんと開いていたカーテンから、部屋の中を盗撮していた男がいたのでした。

    この盗撮男スミスを演じているのは、ヒゲもじゃのデイン・クック。役としては地味なカメラマニアって感じなんですけど、脱いだらすげーマッチョでした。ここに何か違和感を覚えるのは、僕が日本人だからなのだろうか……。

    スミス(左)とブルックスの奇妙な関係が本作品の見どころのひとつ

    と、筋肉談議はどうでもいいので置いとくとして、ええと、盗撮の話でしたっけ?

    あのね、ちょっと考えるとわかるのですが、殺人事件が起きるなんて普通は想像できないわけで、じゃあなんでスミスがバカップルの部屋を撮影できたのかというと、これはもうバカップルが普段からカーテンを開けたままで大人のプロレスをやってると知っていたことになります。

    つまりスミスは別に正義のヒーローでもなんでもなくて、ただの変態だったわけですね!

    ……以上、本作『Mr.ブルックス』を一言でまとめると「変態が変態を殺すところを、変態が見て大変なことになりました」ということになるわけですが、じゃあお前は変態じゃないのかと問われると僕も人のことは言えないので、うん、変態の話題はここまでにしとこうか!

    さて、今まで完璧に殺人をこなしてきたブルックスがスミスに撮影された時点で、現実なら「やっぱり悪いことはできないものだね。シャバよサヨナラ」となるわけですが、そう簡単にはいかないのが本作の上手いところ。

    ここから物語は急展開を見せるのですが、ネタバレになるので後は映画館でどうぞ。

    あとは登場人物についてもう少し語っておきましょうか。結局ここまで男しか紹介できてないので、そんなにむさくるしい映画なのかと思われても困りますしね。

    まずは、ブルックスを長年追い続けているトレーシー・アトウッド刑事。
    資産家の娘なのに刑事、しかも銃撃戦も普通にこなす肝っ玉の持ち主というキャラクターとしての魅力もさることながら、演じているデミ・ムーアのハマりっぷりがすごい。これだけの迫力を出せる女優ってちょっと他には見当たりません。

    影のある強気な女性を演じさせたらデミ・ムーアの右に出る者はいないんじゃないかな

    彼女はブルックス追跡とは別に、自身の離婚や、昔逮捕した凶悪犯に命を狙われるという問題を抱えており、そうした要素が物語にさらなる厚みを加えています。

    また、ブルックスの妻であるエマ(マージ・ヘルゲンバーガー)と、娘のジェイン(ダニエル・パナベイカー)もぜひ鑑賞時には注目してほしい重要な存在です。オヤジであるブルックスの"秘密"を知ることもなく、一見幸せに暮らしているように見える2人の女性ですが、ところがどっこい娘のジェインのある告白を機に物語は思わぬ方向へ……。このへんのメイン線とサブ線の絡ませ方は実に見事です。

    あとどうでもいいのですがジェイン役のダニエル・パナベイカーは僕の好みど真ん中だったので、華やかさを期待して見にいってもしっかり満足できるはず!

    これだけ見ると親子の愛情がテーマのヒューマンストーリーみたい

    ……といったところで、本作を見るための下地はOK!

    単なる刑事VS殺人鬼とはせず、そこに多くの魅力的なキャラクターと複雑な人間関係を持ち込んで、ともすればごちゃごちゃになりかねない話を綺麗に纏め上げた『Mr.ブルックス~完璧なる殺人鬼~』は、文句なしにオススメできる一本でした。

    『Mr.ブルックス~完璧なる殺人鬼~』


    人は誰もが秘密を持っている。あなたの周りの恋人や家族も、そしてあなた自身も、きっとささやかな秘密を胸にしまって生きている。しかしこの映画の主人公アール・ブルックスの秘密は、あまりにも"特別"だった。周囲の誰ひとりとして想像もできない、彼のもうひとつの邪悪な顔。彼は世間を震撼させている連続殺人鬼だった――。

    出演:ケビン・コスナー / デミ・ムーア / ウィリアム・ハート / マージ・ヘルゲンバーガー / ダニエル・パナベイカー / レイコ・エイルスワース

    監督・脚本:ブルース・A・エバンス
    脚本・制作:レイノルド・ギデオン

    渋谷Q-AXシネマほかにて全国ロードショー中
    山田井ユウキ

    レビューサイト「カフェオレ・ライター」主宰。サイトでのP.N.は「マルコ」。映画はもちろんマンガ、ゲーム、さらにはBL作品に至るまで幅広くレビュー記事を執筆、その独特な視点とテンポのよい文章で人気を博し、連日30.000以上のPVを誇る。現在、小誌にてコラム『珍DVD、愛を込めてブッタ斬り』を連載中

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