13日、横浜市のパシフィコ横浜で無線通信技術に関する専門イベント「ワイヤレス・テクノロジー・パーク2008」が開幕した(主催:情報通信研究機構(NICT)・YRP研究開発推進協会・YRPアカデミア交流ネットワーク)。会期は14日までの2日間。

総務省総合通信基盤局移動通信課 渡辺克也課長

講演会場で開催された、今後導入される新しい通信方式について説明する「ブロードバンドモバイルフォーラム」では冒頭、総務省総合通信基盤局移動通信課長の渡辺克也氏が、我が国における移動体通信の今後の動向見通しを概説した。

当初は通話のためのシステムとして始まった携帯電話だが、個人のための情報ツールとして進化し、今では、かつてADSLなどで提供されていた数Mbpsのインターネット接続がどこでも可能になりつつある。渡辺氏は携帯電話網における今後の通信量について、2010年には2007年と比較して「音声はせいぜい2割くらいしか増えないが、データは約4倍に増える」との予測を示す。しかも、今後さらに高速な通信方式が導入され、より大容量のコンテンツなどが登場してくると、データ通信量はこの予測よりさらに伸びる可能性もあるとした。

2010年には、2007年比で音声は約2割増なのに対しデータは約3倍増になるとの予測。高速な新方式が導入されればさらに伸びる可能性も

現在の3G(第3世代)携帯電話を発展させた3.9G、そして新たな周波数帯を使用する次世代方式の4Gが検討されているが、まず3.9Gについて渡辺氏は、世界的に多くの通信事業者がW-CDMA方式の発展系にあたるLTEを採用する見通しであることに触れ、グローバルに大きな市場が生まれるため「国際競争力的な観点ではチャンスでもある」と述べた。また、総務相の諮問機関・情報通信審議会の分科会では、今後2010年3月末までに1.5GHz帯における2G(PDC方式)のサービスが終了するのに伴い、この帯域を3.9Gで利用することについて技術条件の検討が開始されている。4Gに関しては、昨年秋に開催された国際電気通信連合(ITU)の会議で国際的な周波数の確保が行われており、今後国内外で標準化活動が本格化していくことになる。

既に3.9Gの方式を決定している世界の主要事業者は、ほとんどがLTEを選択している

現在携帯電話に使用されている周波数帯と、今後の検討対象となる周波数帯のまとめ

3.9Gや4Gが携帯電話から発展した通信システムであるのに対し、無線LANを広域化するイメージで発展させようとするのが「広帯域移動無線アクセスシステム」で、2.5GHz帯を利用した無線ブロードバンド接続サービスの準備が進められている。具体的には、KDDIらが設立したUQコミュニケーションズのモバイルWiMAX、ウィルコムの次世代PHS、そしてCATV事業者などが地元を対象に行う"地域WiMAX"のサービスがこれに相当する。

全国サービスを展開するUQとウィルコムからは「四半期毎に状況の報告をもらうことになっている」(渡辺氏)とし、事業計画通りに準備が進んでいることを注意深く監督していく方針を示した。あわせて、「これを契機に、携帯に並ぶ新しいマーケットを」(同)開拓してほしいと述べ、既存携帯電話事業者の参入を規制した意図は新しいビジネスモデル・市場の創生にあることを説明、参入2社への期待を示した。

また、地域向けのWiMAX事業は全国で41社から免許申請があり、現在審査が行われている。早ければ6月ごろ免許が付与される見通しで、「早ければ年内にもサービスが始まる」(渡辺氏)という。ADSLなどの利用できない地域でのブロードバンド接続手段としての利用が期待されている。

2.5GHz帯の無線ブロードバンドでは、携帯電話とは別の市場の創生を求めている

地域WiMAXには全国で41社が名乗りを上げた