モバイルインターネット向けの検索連動型広告サービスを提供しているサーチテリアはこのほど、モバイル広告の新サービス「OPAST(オーパスト)」を6月上旬より開始すると発表した。サービス名の由来となる「OPtimized Ads by SearchTeria(訳:サーチテリアが提供する、最適化された広告)」を推進し、3年目には約38億円の売り上げを目指す。

OPASTは、テキスト広告やピクチャー広告、検索連動型広告といった「広告商品」には分類されない。広告を出稿する広告主・代理店と、広告枠を売る媒体社との間で、広告が円滑に取引されることを企図して開発された、「アドマーケットプレイス」(広告の取引市場)と呼ばれるサービスだ。OPASTそれ自体は広告ではなく、モバイル広告の枠を売買するプラットフォームという位置づけになる。

本サービスでは、「ニーズマッチ配信」と「オファー配信」というふたつの広告配信方法を広告主に提供する。まず「ニーズマッチ配信」についてだが、

  1. 広告主/代理店が広告の原稿を制作し、OPASTに入稿する。
  2. OPASTは、配信ネットワーク上にある媒体社のサイトに広告の配信を始める。
  3. OPASTは、配信実績によってニーズの高い媒体社を分析する。
  4. 分析結果に基づき、OPASTは最適な媒体社を自動的に判別し、広告を配信する。

また、「オファー配信」では、「ニーズマッチ配信」の分析結果をもとに導き出された相性の良い媒体社に対して、広告主/代理店が広告の種類、掲載期間、露出数などを指定して広告を配信することができる。

企業の広告業務の効率化と予算の最適化をサポート

サーチテリア 代表取締役 三浦光氏

電通が発表した「2007年日本の広告費」によると、昨年度、インターネット広告市場全体における取引額の伸び率は前年度比124%の6,003億円、その中でモバイル広告は、前年度比で159%の621億円を達成している。会見に臨んだサーチテリア代表取締役の三浦光氏は、モバイル広告の成長を評価しながら、その課題について言及した。

「課題は2点ある。ひとつは、モバイルの媒体数とトラフィック、ページビューが急激に伸びたおかげで、広告主や代理店がモバイル広告に出稿するプランを描きにくくなってきていること。もうひとつは、インターネットにアクセスできる携帯電話の台数が8,000万台を超えている状況で、未成年へのフィルタリング規制などの社会的な要請が徐々に高まってきている。OPASTでは幅広いモバイル媒体に向けて、広告を効率的に運用・管理できるしくみと、広告主と媒体社が最適にマッチングできる場を提供したい」と本サービスの意義を説明。「モバイル広告業界のさらなる発展に寄与していきたい」(同氏)とした。

OPASTの導入によって得られるメリットを考えると、まず広告主/代理店サイドにとっては広告出稿業務の効率化と、広告出稿予算の最適化が挙げられる。掲載先をOPASTの配信実績を参考しながら選択・決定できるため、プランニングの負担が軽減される。効果の薄い媒体に出稿する機会も減るため、広告出稿の費用負担も軽減される。このことからは、これまでにモバイル広告を掲載した経験や実績がない、ノウハウを持っていない広告主でも新たに参入しやすいという利点が生まれる。モバイル広告市場の拡大にとっては、プラス要因だと考えられる。

一方の媒体社にとっては、自社サイトを訪れるユーザーとの親和性が高い広告や、コンテンツを把握しやすいという点が挙げられる。また、掲載期間やインプレッション数を指定できる「オファー配信」を受け入れることによって、サイトの広告枠を有効的に活用し、売上げ機会の損失を防ぐことも可能だろう。

課金システムについては、「ニーズマッチ配信」ではクリック課金制を採用。最低単価は1クリックあたり10円からの入札競争制で、1日の上限予算を設定することができる。また「オファー配信」はCPM(Cost Per Mile)での課金を採用(CPM単価は掲載1,000回あたりの料金を指し、広告料金=CPM単価×サイトの閲覧数÷1000で算出)。OPASTのシステムでは、ニーズマッチのクリック単価×1000で換算したCPM単価に対して、「一定の割増しをしたCPM単価以上でのみオファー可能」としている。

サーチテリア 代表取締役社長兼CEO 中橋義博氏

OPASTのねらいは、モバイル広告のプランニングにおける負担を減らし、モバイル広告市場の拡大を目指すことにあるとも考えられる。だが、業界全体に与える影響について、同社の代表取締役社長兼CEOを務める中橋義博氏は「どの程度のインパクトをもたらしうるかということについて、数字を算出してはいない。OPASTでは、従来の広告商品をより便利に使っていただけるよう、広告主、代理店、媒体社の要望を聞きながら、そのニーズに沿うものを目指した」と述べるにとどまった。また、「モバイルインターネット先進国の日本を発として、今後は世界のマーケットへ展開する計画」(代表取締役兼COO 滝田秀樹氏)であるという。