中国を代表するIT企業で通信設備メーカーである、華為技術 (Huawei、本社:深セン市、以下「華為」)で、若手職員が相次ぎ自殺する事態が起こっている。その背景にある問題とは、いったい何か。

2007年夏から相次ぐ華為社員の自殺事件

2007年7月18日の午後、華為社員の張鋭氏(当時26歳)が首つり自殺をした。同年8月11日には、長春事務所社員の趙某氏も飛び降り自殺した。

華為と業界関係者のみならず、中国社会全体を震撼させた自殺事件はこれだけで済まず、今年3月6日には、深セン本社社員の張立国氏(当時36歳)が食堂の3階から飛び降り、自ら命を絶った。さらにこの事件の10日ほど前には、四川省成都市にある華為研究開発センターで同社社員の李棟兵氏(当時25歳)が自殺していた。

実は2006年にも、華為社員であった胡新宇氏の「過労死事件」が中国社会に大きな衝撃を与えたことがあった。昨年来華為で相次いだ職員連続自殺事件により、輝かしい名声をほこる中国通信業界の巨人が、再び自殺という暗い話題で注目を集めることとなった。一連の事件により、2006年当時ではあまり議論されなかった、華為の経営管理システム、人事制度、教育体制、企業文化、同社従業員の労働環境や健康状態などが論争の的になっている。

ネットでは華為の企業文化を批判する声

3月6日に張立国氏が飛び降り自殺した事件の目撃者によると、自殺現場は社員食堂で、周りにはあらかじめ警戒線まで設置され、2人の巡査が警備していた。当時張氏から3メートルほど離れた席では、ほかの社員たちが普通に食事をしていたが、張氏が奇妙な挙動をしたときも、誰一人席を立とうとはしなかったし、見ようとさえせず、何事もないように食事を続けていたという。

中国国内では、この一件に華為の「企業文化」を見るという意見も聞かれる。華為とは一体どのような企業なのだろう。

前述のように、ほんの10日ほどの間に、華為では社員の飛び降り自殺事件が立て続けに発生した。3月6日の事件を含めれば、過去2年間で6件の従業員死亡事件が発生したことになる。中国国内でも、ネット上で華為の企業文化を批判する声が強くなってきている。その多くは華為を「妖怪視」するような内容だが、華為の人事制度と企業文化の問題といった本質的な面を指摘する声も多い。

華為の広報部門は、一連の職員連続自殺事件はそれぞれ個別の事件に過ぎず、偶然が重なっただけであり、仕事上のストレスなどとは一切関係がないと主張している。だが、外部の見解は様々である。水掛け論的な論争はさて置き、「華為での連続自殺事件を契機に、業界全体が健康的な企業文化の確立を模索する道について猛省すべき」と復旦大学教授の顧暁鳴氏は語っている。