【レポート】
今回の提携は、SaaSのメリットを最大限に活かした最たる例だろう。Benioff氏はイベントでの講演のたびに「すぐに始められる」「使用量に応じた明確な料金体系」「アップグレード/メンテナンスの容易性」というSaaSの3つのメリットを強調してきた。今回、Salesforceにこれまで欠けていた「Officeアプリケーション」「メール等のコラボレーション・ツール」がGoogle Appsで補完されたことで、新規ソフトウェアを一切インストールすることなくSalesforceアプリケーションの利用が可能になった。デモストレーションに使用されていたのは「Mac OS X+Firefox」の組み合わせで、これもまた「プラットフォーム非依存」を象徴するものだった。CRMという分野限定ではあるものの、アプリケーションが従来のインストールベースの枠を超えてWebブラウザで完結しつつあるのは面白い現象だ。既存のSalesforceユーザーにとっては「すべてをWebブラウザで完結させる」という選択肢が出現したメリットがあり、これはサーバのメンテナンスを行う余力のない中小企業にとって特に大きい。
一方でGoogle側のメリットについてはどうだろうか。今回の提携ではGoogle Appsの利用で料金の追加徴収はなく(Supportedバージョンを除く)、金銭上の大きなメリットはないようにも見える。この点について両社はコメントを避けているが、Googleが比較的苦手とするエンタープライズ市場にGoogle Appsをアピールすることで、同市場でのプレゼンスを高めつつ、広告収入での躍進を期待しているようだ。場合によっては有料版Google Appsの利用拡大にもつながる可能性がある。前述のようにWebブラウザに比重を移す企業が増えることでサービスの利用機会も増えるため、Microsoft対抗を念頭に置きつつ、比較的長期の作戦で考えているのかもしれない。
オンライン・アプリケーションの弱点であるオフラインでの利用についてBenioff氏は「Salesforce自体はすでにオフライン向けのソリューションを用意しているが、今後はブロードバンドだけでなく、(携帯電話や無線LANなどの)ワイヤレス技術により人々がオンラインでいる機会も増え、そうした心配はやがて無用になるだろう」とコメントした。先日の米AppleによるiPhone SDKの発表に触れ「Salesforce自身も携帯電話などのモバイル機器の活用を積極的に進めていきたい」と述べ、インフラの発展がオフラインという弱点をカバーすることになると強調した。一方のGoogleも「Google DocsがすでにGoogle Gearsに対応しており、今後もGearsのサポート拡大でオフライン・ソリューションを順次充実させていく」(米Google エンタープライズ部門ゼネラルマネージャ兼バイスプレジデント Dave Girouard氏)とコメントし、オフライン・サポートが課題の1つであることを認めた。
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