東京・青海の日本科学未来館にて3月20日より、企画展「エイリアン展――モシモシ、応答ネガイマス。」が始まった。「エイリアン=地球外生命」をテーマにしたこの企画展は、フィクションの世界のエイリアンたちにはじまり、地球外生命の存在まで、科学的に迫る内容となっている。ロンドン発の世界的な巡回展となるこの企画展は、これまでに約60万人を動員。アジア圏では日本が初の開催国となる。開催期間は6月16日まで。開場時間は10時~17時(入館は16時30分まで)。料金は大人900円、18歳以下350円で、常設展示も見学可能。

開催に先立ち、同館の館長である宇宙飛行士の毛利衛氏が会見を行った。

毛利衛(宇宙飛行士・日本科学未来館館長)

「小学校に上がる前は月の裏側に宇宙人がいると思ってました。今回はそういう子どもの思いだけではなくて、科学的に見たらどうなのか、というのが売りです。ここ10年で望遠鏡の精度とコンピュータの速度が飛躍的に高まって深宇宙のことがわかってきました。宇宙には何億と銀河はありますから、確率的におそらく百万ぐらいは地球と似た星があるんじゃないかと思います。そう考えていくと確かに宇宙人はいそうだ、と最近科学者の間でも認められるようになりました。ちょうどいまも地球のまわりに宇宙人がいて、その宇宙人のひとりは日本人のDNAを持っています。建設中の国際宇宙ステーションでは、これからは1年のうち半年間ぐらいは日本人宇宙飛行士が宇宙人として働く時代になります。私も宇宙での経験から、地球のような天体はたくさんあるのだと実感しました。その可能性を今回の展示ではお見せして、若い人たちに影響を与えていきたいなと思っています」

それでは展示の見どころを画像とともに紹介していこう。

※一部にグロテスクな画像があります。苦手な方はご注意ください

挨拶に立った毛利館長。「宇宙飛行士の訓練でエイリアン遭遇のシミュレーションは?」との質問には「あったら楽しいんですけどねえ」とのこと

6月16日までの開催となる「エイリアン展」。最先端の生命科学を学ぶもよし、お化け屋敷気分でドキドキしながら楽しむもよし。非常に懐の広い展示内容となっている

会場に入るといきなり映画『エイリアン』のエイリアンクイーンがお出迎え。やっぱりデカい! 見たいものをすぐに見せてくれるのはうれしいもの

オーソン・ウェルズがラジオで読み上げ、当時パニックを引き起こしたと言われる『宇宙戦争』(右)、横には『エイリアン』(左上)、『プレデター』(左下)なども並ぶ

SF的要素を持った異形のキャラクターの代表例を展示。『スター・ウォーズ』(左)と『メトロポリス』(右)。映画ファンにとっても見ごたえのある展示内容

『スター・ウォーズ』のエイリアンから、イウォーク族が展示に参加。実際に見ると意外にゴツイ。さすが帝国軍を撃退しただけのことはある。奥にはウルトラマンなども

宇宙人による誘拐やミステリーサークルに関しての展示。UFOの伝承が広まる以前は、霊や妖精に関して同じような目撃証言をする人が多かったという

UFOや宇宙人に関する思い込みの代表例とされる火星の人面岩(上)。最近撮影された高解像度の写真(下)で、単なる岩であったことが証明されている

なんと会場で我々取材陣は宇宙人の撮影に成功した! これがその決定的な1枚である

宇宙人はどうやら墜落時に火傷を負って死亡したようだ。それにしてもよくでき……いや、よい保存状態である

つぎのゾーンは「科学としてのエイリアン」。深海のような特殊な環境に住む生き物たちを中心に展示。地球に実在するエイリアンたちにクローズアップ

これはどう見てもエイリアン! 海面下3,000メートルに生息し、「吸血イカ」の英名を持つコウモリダコ

これも明らかにエイリアン! 海面下6,500メートルにも生息しているというフクロウナギ。日本でも小笠原諸島近海に生息

ふと上を見ると黒光りする怪しい影が……。ギャー!! 身近ゆえに一番恐ろしいエイリアンと言えるだろう

放射線や高熱といったものに耐性を持つ微生物たち。つまり我々の常識で生物の生存に適さないと考える条件下にも生物はいるかもしれない、ということ

太陽系外には無数の惑星が存在する。UFOに乗って地球にやって来ているかどうかはともかく、地球以外の星に生命体が存在する確立は高い

つぎのゾーンでは、生命科学の研究結果と科学者たちの想像力によって作られた、架空の惑星の生態系が展示されている

架空の惑星、ブルームーンに生息する鳥のような生物「ストーカー」。3つの目と3つのクチバシを持っている

光を効率よく吸収するため、水素を作るバクテリアを使って風船のように膨張して上空に伸びる「バルーンプラント」

画像に映っている生態系は水面が揺れたり、動物たちが忙しく動き回ったりとどんどん変化していく。ときには超巨大な生物が横切ることも

動画
生物のアイコンにタッチすると、よりくわしい説明を見ることができる。アイコンにはしっかりタッチするのがポイント

映像は頭上から投影されているので、子供たちが盤面をバンバン叩いても大丈夫な仕組みになっている

1977年に打ち上げられた惑星探査機ボイジャーに積み込まれたレコード。地球上の様々な音が記録されている。ボイジャーが最初の星に近づくのは約4万年後とか

エイリアンとの交信を試みる装置も設置。英単語を組み合わせて文章を作成。メッセージは星となって画面に表示されていく

エイリアン展はポピュラーサイエンス(科学の一般への普及活動)の先進国である、イギリス発ということで、全体を通しての見せ方や、情報の噛み砕き方には非常に気が配られている印象。宇宙人目撃談のようなオカルト的要素が混じる部分には心理学的アプローチを行ったり、また生命科学の研究結果を使って架空の星の生態系をアクティブな形で見せたりするなど、多彩な内容となっている。「エイリアン」という切り口を使って、科学の様々な分野を誰でも楽しみながら学べる、おすすめの企画展だ。

開催期間中には、世界の辺境を飛び回り、海外からも注目を集める生物学者・長沼毅氏がゲストと対話するトーク・ライブを予定(下記参照)。また、これ以外に科学コミュニケーターによる実演プログラムも毎日2回予定されている。

長沼毅トーク・ライブ 脱「知的」生命調査のススメ!

第1回 3月20日(開催済)
「惑星―生命に満ち満ちている宇宙」(定員300名)
ゲスト: 佐々木晶(惑星科学/国立天文台教授)

第2回 5月6日
「人工生命―新しい生命をつくる挑戦」(定員300名)
ゲスト: 池上高志(複雑系・システム論/東京大学大学院准教授)

第3回 5月18日
「伝統―人工と自然の古くて新しい関係」(定員100名)
ゲスト: 千宗屋(武者小路千家若宗匠)

第4回 5月31日
「遺伝子―生命であり物体である細胞」(定員100名)
ゲスト: 福岡伸一(分子生物学/青山学院大学教授)

場所: 日本科学未来館7階
時間: 14時30分~16時
参加費: 「エイリアン展」入場チケットが必要
※インターネット優先予約制