【レポート】
日本音楽著作権協会(JASRAC)は25日、「動画共有サイトに代表される新たな流通と著作権」をテーマとしたシンポジウムを、東京都千代田区で開いた。パネルディスカッションではパネリストから、「テレビコンテンツをネットに流通させれば全てうまくいくというのは幻想」という意見が出るなど、新たなネットビジネスモデル構築の必要性を訴えた。
シンポジウムでは、文化庁長官官房 審議官の吉田大輔氏が「著作権行政の現状と課題」と題して基調講演。デジタル化の流れの中で、著作権法が改正されてきた経緯や、現在文化庁の小委員会で議論されている課題などについて紹介した。
その後開かれたパネルディスカッションでは、ニコニコ動画を運営するニワンゴを傘下に収めるドワンゴの代表取締役会長の川上量生氏、慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科 教授の岸博幸氏、立教大学社会学部 メディア社会学科 准教授の砂川浩慶氏、ホリプロ代表取締役社長 COOの堀義貴氏、JASRAC 常務理事の菅原瑞夫氏の5人がパネリストとなり、中央大学法科大学院 教授で弁護士の安念潤司氏をコーディネーターとして活発な議論が行われた。
菅原氏がまず初めに、JASRACが2007年7月に定めた「動画投稿(共有)サービスにおける利用許諾条件」について説明。動画投稿サイトに投稿する個人と利用許諾契約を締結することが難しいことから、JASRACではサイト運営者と契約を結ぶ方針をとっていることを示した上で、「動画投稿サイトの社会的ニーズを考慮し、排除に動くのではなく、運営者とライセンスを結ぶ上での包括的な条件を定めた」と述べた。
ドワンゴの川上氏はニコニコ動画と著作権の関係について、「テレビの丸投げコンテンツはニコニコ動画の人気ランキングの上位にはならず、著作物のパロディが主流。ネットがなかった時代には、カセットテープを友達間でやり取りしてたような世界がネットで拡散している」と説明。その上で「こうした文化は著作権を侵害しなければ残っていってもいいものではないか」と述べた。
著作権を侵害しているコンテンツについての対応については、「放送局のコンテンツなどは自主的に削除を行っているが、誤削除する場合もありユーザーからの批判をあびることもある。違法コンテンツ削除のルールを自主的に構築することを模索している」と現在の状況を話した。
通商産業省(当時)に入省後、小泉純一郎政権下で竹中平蔵氏の秘書官も務めた慶應義塾大学大学院の岸氏は、政府の政策立案などに関わった経験を基に、「デジタルコンテンツは流通の問題ばかり議論されるが、経済力が落ちていく日本において本当に必要なのはソフトパワー」と述べ、コンテンツそのものの魅力を高めていく必要性を主張した。
さらに、デジタルメディアにおいて放送コンテンツなどの流通がなかなか進まないことについて、「本当に著作権が悪いのか」と問題提起。「有害サイト規制の立法化の動きなど、デジタルコンテンツの流通を著作権法よりも阻害する要因が姿を現してきている。逆に言えば、現在の著作権法の下でも、JASRACなどが行っている地道な努力が、ネットにおける新たなビジネスモデルの構築に役立っていくのではないか」と訴えた。
また、海外の事情にも触れ、「米国で一番重要視されているのは、視聴者の視聴環境をいかによくできるかということであり、ユーザーがコンテンツの視聴において最も都合のよいメディアを選べる状態にすることが最も重要とする認識が広がっている。この面で欧米は進んでおり、日本は遅れていると言わざるを得ない」と苦言を呈した。
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