ひとつのIDで複数のWebサービスにログインできる「OpenID」を推進する国内団体が、シックス・アパートら3社で設立される予定だ。ニフティやミクシィ、ヤフーらの国内大手のサービス提供者も参画、4月をめどに正式に設立する計画だ。

設立されるのは「OpenIDファウンデーション・ジャパン」(仮称)。発起人としてはシックス・アパートに加えて日本ベリサイン、野村総合研究所が参加する。ファウンデーションに参画を表明しているのは、現時点でアセントネットワークス、イーコンテクスト、インフォテリア、テクノラティジャパン、ニフティ、ミクシィ、ヤフー、ライブドアの各社。主にコンシューマ向けOopenID技術の実装と国内普及を支援していくという。

OpenIDは、米Six Apartが2005年に開発した、共通のユーザーIDを複数のWebサービスで利用できるようにする技術。対応サイトでIDを取得すると、他の対応サイトの新IDを取得しなくてもログインできるようになり、複数のIDを取得する必要がなくなる。

ユーザー側にとっては複数のIDとパスワードを管理する必要がなくなり、自分の個人情報も対応サイトひとつに提供すれば、後は別サイトで入力しなくてもサービスを利用できるようになる。提供する個人情報も、属性ごとに提供する・しないを選択できる。ほかにも、たとえばワンタイムパスワードや携帯電話認証といった、より強固な認証を提供し、信頼できると思うサービスにのみ情報を登録する、といった選択ができるようになる。

OpenIDの仕組み

サービス提供側にとっても、ユーザーが利用登録を嫌って登録しないといった状況を避けられ、ユーザー登録が促進できる、パスワードを忘れて利用をあきらめてしまうようなことがなくなり、サイト利用率が向上する、常時個人情報を保管しておくのではなく、必要なときに情報を取得することで、情報漏えいのリスクが低減できる、といったメリットがある。

野村総研の調査では、回答者の35%が5~9のサイトに対してほぼ毎日ログインしていた。回答者の半数がパスワードを忘れて困った経験があると回答したほか、6割強が個人情報の入力を理由にサービスへの登録を避ける場合があるなど、複数のID、パスワードを使い分けることが難しく、個人情報の入力が新たなサービス利用の障害となっている現状が明らかにされている。

ログインするサイト数。「ほぼ毎日使う」「たまに使う」を合わせると、3割以上が10サイト以上を利用している

ほぼ半数がパスワードを忘れて困った経験があり、9割がパスワードを忘れた経験がある

利用者登録が必要な際に、必ず登録をしたのは1割程度。6割強は登録しない時もあり、4人に1人はまったく登録しない

自分で登録した個人情報がどんなものだったか管理できているのは2割程度

それに対して、OpenIDを使うことで、ひとつのID、パスワードで複数のサービスを利用できるようになり、個人情報を1サービスごとに登録する必要がなくなる。すでにOpenIDは、現在全世界で1万を超える対応サイト、2億5,000万にも及ぶIDを抱えており、特に1月に米Yahoo!がサポートを開始したことでIDが急増。米国ではIBM、Yahoo!、VeriSign、Microsoft、Googleといった大手IT企業も理事メンバーとして参加していることから、今後さらに拡大していくことが期待されている。

OpenID Foundationの副会長David Recordon氏は、OpenIDについて「ユニークな点は、1つのサイトや企業によってコントロールされていない点」を挙げ、オープンなスタンスで運営されていると話す。

OpenIDファウンデーション・ジャパン発起人代表の崎村夏彦氏(野村総研)によれば、日本支部設立の動きは昨年10月から始まった。OpenIDに関する日本語の資料が少ないことなどが設立の端緒となっており、「日本の法制度、文化を熟知したうえで日本語で活動し、日本での普及を加速させる」(崎村氏)ことが目的だ。4月の設立以降は、OpenIDに関する仕様と知財関連書類の日本語化、エンドユーザーとサイト管理者向けのハウツーやヘルプをWebサイト上で公開。日本語のメーリングリストを解説するなどし、米国へのフィードバックも行う。

David Recordon氏

崎村夏彦氏

現在、参画企業は11社だが、米国でOpenIDに参加し、日本に活動拠点のある企業には基本的に参加を促していきたい方向。これにはグーグルやIBM、マイクロソフトといったメンバーが挙げられるが、たとえばマイクロソフトもOpenIDに関して活動を開始しており、今後OpenIDファウンデーション・ジャパンへの参加が見込まれている。