燃料電池の展示会としては国内最大の「国際水素・燃料電池展(FC EXPO)」が27日、東京ビッグサイトにて開幕した。開催は今年で4回目。環境問題に対する意識が高まり、燃料電池への期待も大きくなる中で、今回は過去最多の467社が出展。多くの来場者が詰めかけていた。
燃料電池は、住宅用(コージェネレーションシステム)や自動車用など大型のものもあるが、ここでは主にモバイル向けの製品・新技術について注目してみたい。
固体状のメタノール燃料
ダイレクトメタノール型の燃料電池(DMFC)では一般的に液体のメタノールが使用されるが、固体状のメタノール燃料を開発しているのが栗田工業。同社は2年前から固体状メタノール燃料を出展しているが、今年はより製品イメージに近い試作機を展示しており、来場者からの注目を集めていた。
外観はまるで、カセット時代のウォークマン(懐かしい)。燃料電池本体にカートリッジをガチャッと入れてフタを閉じると、発電を行うスタイルになっている。この燃料カートリッジからは10cc程度のメタノールを取り出すことができ、携帯電話のフル充電を1~2回行うことが可能だという。
この固体燃料には、同社独自の「包接化合」という技術が採用されている。ホスト化合物の中にゲスト化合物(メタノール)を取り込むもので、この固体化により、安全性が高くなるなどのメリットがある。一昨年の展示ではメタノールの取り出しに水が必要だったが、昨年からはこれも不要となっていた。
ちなみにメタノールの重量密度は60%(100gの固体状燃料から60gのメタノールが得られる)程度とのことだが、このくらいだと引火点も高く、法律的には非危険物扱いになるのだそうだ。モバイル用途だと海外渡航も大いに考えられるが、液体メタノールと違って、この固体状燃料は非危険物なので、「航空機内への持ち込み制限もない」(ブース担当者)。
カートリッジの流通をどうするかといった問題は残っているものの(まぁこれは各社とも同じ問題を抱えているわけだが)、「2008年度中には製品化したい」とのこと。すでに様々な企業と話はしているそうだ。
燃料電池搭載の一眼レフも
米MTI Micro Fuel Cellsは、純メタノールを使用するDMFCを出展していた。デジタルカメラや携帯電話などの充電用途を想定したカートリッジ交換式の製品で、来年半ばくらいに、まずは米国で発売したいとのこと。出力は1W程度で、25ccで25時間の発電が可能だという。
主に大きさの問題から、携帯電話などの小型機器では、DMFCはこのように外付けの充電器となることが多いが、同社は今回、DMFC一体型のスマートフォンのコンセプトモデルも展示していた。あまり本体からはみ出さずに薄くできていたが、この発売時期は未定。
そして同じく発売未定ながら、一眼レフカメラのバッテリーグリップの代わりに使えるDMFCの試作機も展示。同等の体積ながら、通常のリチウムイオンバッテリよりも2倍の持続時間があるとのことで、プロのカメラマンなどにニーズがありそうだ。
フジクラも燃料電池を試作
フジクラは出力2.5WのDMFCを試作したということで、その簡易モデルを展示していた(試作機の展示はなかった)。また同社はヒートパイプのメーカーでもあるが、燃料電池スタック内部の熱を均一化するために、ヒートパイプの応用も検討しているそうだ。