【レポート】
マイクロソフトが全国各地の自治体と共同でITベンチャーの事業をサポートする「マイクロソフト ITベンチャー支援プログラム」。2008年度の支援対象企業の決定にともない、先月、香川県で選定企業に対する同プログラム認定証授与式が行なわれたことは既報のとおり。今回は福井県下の選定企業、カマタとプログラミングファストの事業内容と認定証授与式の模様を紹介しよう。2月18日に福井市内のホテルで開かれた授与式には、西川一誠福井県知事、マイクロソフト日本法人 ダレン・ヒューストン社長らも出席、各社の今後の発展に期待を寄せた。
マイクロソフトは、中小企業におけるIT化推進施策として全国に支店を開設しており、福井県は北陸支店がカバーするエリアとなる(他は石川県、富山県)。同県でITベンチャー支援プログラムの選定企業に認定された2社と各事業概要は次のとおり。
株式会社カマタ(代表取締役 鎌田良英) …… モバイルメディカルユビキタスネット。携帯電話を活用した患者と医療機関、保険調剤薬局などをつなぐセキュアで利便性の高いネットワークサービスの提供。
株式会社プログラミングファスト(代表取締役社長 松本享) …… インターネットリサーチASPサービス「Screw.ASP」。Webブラウザ上でアンケートの作成、実施、解析サービスを、短納期、低コストで提供。
準選定企業には、Microsoft Officeとの連携性を持たせた商用CMS「infoDNN」を提供するインフォネット、独自の情報漏洩防止技術を利用したデータ共有をSaaS形式で提供するSBシステムが選ばれている。
2008年度ITベンチャー支援プログラムの選定企業中、異色といえる企業がカマタだ。同社は、いわゆるシステム開発などを手がけるようなITベンチャーではない。本業は薬局だ。代表の鎌田氏は薬剤師として福井市内で薬局を経営するかたわら、個人的にITへの関心が高かったこともあり、10年前からPCを医薬品情報の管理に利用するなど業務の効率化を図ってきたという。徐々に開発体制を整え、2006年にはiモードの公式サイト「医者からもらった薬がわかる(携帯メニュー名「医者からモラッタ薬」、月額105円)」の提供を開始。「患者さん自身が、服用する薬の管理意識を持ち、理解できるようになってほしい」(鎌田氏)との思いから開発されたこのサービスは、携帯電話で簡単に医薬品情報や健康情報をチェックできるサイトとして評判を呼んだ。現在は全携帯キャリアでサービスを展開、登録ユーザー数は10万を超える。
今回、ITベンチャー支援プログラムに選定された「モバイルメディカルユビキタスネット」は、「医者からモラッタ薬」の発展形となる、病院・調剤薬局・患者をよりインタラクティブに結びつけるネットワークサービスだ。診察予約や調剤完了通知のシステム、医薬品情報データベース、疾患管理ツールなどを活用し、医療機関利用時の利便性の向上、病院や薬局における業務効率の向上を目指す。
患者が本サービスを使うには携帯電話からのアクセスが前提となる。個人認証には端末ごとの固有IDのほか、ユーザーIDとパスワードを利用してセキュリティを確保する。「病院や薬局の各窓口で携帯電話を登録すれば、そのあとはiモードなどのケータイネットから病院の診察予約ができるようになる。薬局からの調剤完了通知もメールで受け取れる」(鎌田氏)。病気にかかるたび、何件も病院に電話を入れたり、いつ終わるともわからない調剤完了までの時間をムダに過ごしたりすることがなくなるわけだ。また、「お薬手帳」を携帯電話からチェックする機能を持たせる。お薬手帳とは、医薬品の服用履歴や過去に経験した副作用などを記録したもので、薬局で発行してもらえる。病院にとってもお薬手帳は、薬の相互作用を把握し、より適切な治療を施すのに役立つが、いまだ十分には普及していない。携帯電話からの利用を可能にすれば、お薬手帳のさらなる普及が見込めるという。
鎌田氏は、モバイルメディカルユビキタスネットには「患者さんの囲い込みという意味でも利用価値がある」と説明する。本サービスを、医療機関と患者をつなぐ"友の会"などの運営基盤にし、病院や薬局が独自のユーザーサービスを展開するというものだ。たとえば、メタボリック対策や糖尿病対策といったコンテンツを病院側が用意し、登録ユーザーに提供。病院と患者の関係をより密にするだけでなく、とくに競争の激しい地域などで他の医療機関との差別化を図る手段としても有効となる。とはいえ、業務のIT化に十分なコストをかけられない医療機関(病院・診療所・薬局)は多い。そこで初期費用、月額利用料ともに数万円に抑え、導入しやすい価格設定にする。
本サービスはASP形式で提供し、将来的には数十万から数百万の利用者を見込んでいる。まずは2008年度中にプロトタイプを開発し、福井市内の薬局を対象に提供、その後、段階的に全国に広めたい考えだ。マイクロソフトには、サーバの安定運用やセキュリティシステムの構築ノウハウのほか、マーケティング面でのサポートを求めていく。
こうしたソリューションが、薬局から提案されるのは不思議な気もするが、それは「薬剤師としての使命」(鎌田氏)だという。カマタのIT事業は、患者に薬の情報を提供することからスタートした。その基本姿勢は「医療の中で薬剤師としてなにができるかをこだわる」(同)こと。「医療をとりまく環境ではITが有効活用されているケースが少ない」(同)中、モバイルメディカルユビキタスネットは、医療機関と患者をつなげる有効なソリューションとして期待がかかる。
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