【レポート】
「エミリー・ウングワレー展~アボリジニが生んだ天才画家」が2月26日より、国立国際美術館(大阪市北区中之島)で開かれている。世界的に認められているエミリーの芸術世界を、故郷への賛美に溢れた主要作品114件によって、日本で初めて本格的に紹介する。開催期間は4月13日まで。なお、東京会場として5月28日~7月28日には、新国立美術館(東京都港区)で同展が開かれる。
エミリー・カーメ・ウングワレー(1910年頃~1996年、以下エミリー)は、オーストラリアを代表する画家。作品は、過去10年余りの間に100を越える展覧会に出品され、世界各地のコレクションに納められている。また、ヴェネツィア・ビエンナーレのオーストラリア館で特別出品されたほか、1998年にはオーストラリア国内の主要な美術館を巡回する大規模な個展が開催されている。
エミリーは、数十年にわたり身体や砂の上にアボリジニの物語を描いた後、1997年からバティック(ろうけつ染め)の制作を始め、1988年から亡くなるまでの8年間に、3,000~4,000点という超人的な数の作品を生み出した。
エミリーは終生、儀礼や歌、踊り、絵画制作を行うことを通じて故郷であるアルハルクラを称え、作品は土地に深く根ざしていた。国立国際美術館の建畠哲館長に「私にとって奇跡の画家」と言わしめるのは、エミリーがオーストラリア中央部の砂漠で生涯を送り、西洋美術との接点が全くなく画集すら見ることのなかったことがなかった中で、絵画に驚くべき近代性を示している点だ。一方で、建畠館長は「彼女の文化圏の外にいる我々には近代的な抽象画に見えるが、彼女にとってはアボリジニの自然と文化の具体的な意味を持っている。彼女の世界に触れることは、自然の確かさに触れることでもある」と話している。
同展は、エミリーの作品に初めて触れる観覧者のために、年代やテーマに沿った章によって構成されている。B3Fの会場入口を入ると、まず最初に「神聖な草」の章として、エミリーの最晩年にあたる1996年に制作された作品群から始まる。エミリーが「神聖な草」と呼んだアクション・ペインティングは、スピード感とエネルギーに満ち溢れ、厚く量感のある線がもつれた糸の塊としてカンヴァスになぐり描きされている。その中には、エミリーが亡くなる数週間前に手掛けた作品も含まれる。わずか3日間で仕上げられたそれら24点の作品は、それまで支配的であった線と点描による表現から逸脱し、幅広の刷毛で描かれた動きのある色面で広がっている。エミリーの終わりはまさに、新たな前衛的スタイルの始まりだったのである。
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