デジタルカメラは、いくら撮影してもフィルム代がかからないのが大きなメリットのひとつ。大容量のメモリーカードを利用すれば、撮影できる枚数はフィルムの比ではなく、数百枚以上でも撮影できることもある。しかし大量に撮影できるだけに、画像データをきちんと管理しないと、どこに何があるかわからなくなってしまう。そこで、ここでは画像データの保存方法を考えてみよう。

オリジナルデータは二度と手に入らない

特別な写真好きでなくても、身近なものでは日常のスナップからイベントや旅行の記録まで、機会があるごとに撮影するのが普通。その場その場で何気なく撮っていると、その時々ではその写真はそれほど大事なものとは思わないかもしれない。しかし、写真を撮ったその瞬間はその一度だけで、同じシーンをもう一度撮影することは不可能だ。

たとえば、パソコンのアプリケーションソフト等は、基本的に何度でもインストールできる。設定をいじっていると、元の状態に戻すのが大変かもしれないが、復旧は不可能ではない。しかし、自分で撮った写真はそうはいかない。写真データはかけがえのないものとしてきちんと保存する習慣をつけたい。

デジタルカメラは撮影できる枚数が多いために、メモリーカードが一杯になるまで撮影し、それ以上撮れなくなったら保存するという人も多いはず。しかしメモリーカードが壊れる可能性がないわけじゃない。次の撮影の時に操作を過って、画像を消してしまうかもしれない。できるだけ、撮影が終わったらその日のうちにパソコンにも保存し、バックアップするクセをつけよう。

また、撮影現場で失敗した写真を削除する人をよく見るが、撮影現場での削除はトラブルの原因だ。プロでも間違えて全データを消してしまったという話も耳にする。まだ撮影したいのにメモリーカードの空き容量が少ないなど、特別な場合を除いて、現場での削除はできるだけ避けるべきだ。現在では、高速・大容量タイプのメモリーカードでも非常に安く購入できるようになった。容量に余裕のあるものを入手し、原則的にメモリーカードのフォーマットやデータの削除は撮影現場では行わないようにしよう。

カメラでの画像の消去。できるだけしないほうがいい

メモリーカードのフォーマット。パソコンに画像をコピーしてから行なう

カメラからパソコンへの転送

撮影の終わったデータを持ち帰ったら、パソコンのハードディスクに保存する。パソコンに転送する方法は、大きく分けて2通り。メモリーカードをリーダーに接続してコピーする方法と(ノートパソコンなどでメモリーカード用のスロットがある場合はリーダー不要)、カメラそのものを付属のケーブルなどでパソコンのUSBコネクターにつなぎ、データを吸い上げる方法だ。といっても、後者はカメラそのものをリーダーとして使っていると考えれば、同じことで、メモリーカードをカメラから抜くかどうかという違いでしかない。

また、コンパクトカメラなどでは、クレードルと呼ばれるスタンドにカメラを載せるだけで画像転送を行なうものがある。これもカメラを使ったデータ転送のひとつ。ただし、付属の専用ソフトを使ってデータを転送するものには注意したい。自分(カメラ)専用のフォルダを作ったり、画像にタグを付けて分類し、ファイル操作がしづらくなるものもある。中には、コピー後にカメラ側の画像を消してしまうものもある。こういったソフトは使わないほうが無難だ。管理のためには、画像のコピーは手動で行なうようにしたい。

パソコンをカメラとつないだ状態で、多くのカメラはパソコンからドライブと認識され、メモリーカードのデータが見えるようになる。これはUSBの「マスストレージクラス」という規格に対応しているため。中にはドライブとしては認識されないが、ファイルが見えるものもある。どちらもダメだったらどうするか? やはりメモリーカードをカメラから抜いて、リーダーを使って読み出すしかない。

なお、USB接続のカードリーダーにはUSB1.1対応のものとUSB2.0対応なものがある。現在多くの製品は高速なUSB2.0対応だが、転送速度を謳っていない製品では転送速度が遅いものが多い。しかし、カードリーダーは高速なものでも実売価格3,000円程度で購入できる。データコピーにかかる時間が長いと思うなら、少し良いものを購入しておくとデータコピーにかかる時間を数分の1にできる。

カメラのUSBコネクター(上)。違う名前になっていることもある

読み出しが高速なアイ・オー・データ機器「USB2-W12RW」。メモリーカードの容量が多いなら、買っておいて損はない

日付のフォルダ名が簡単で便利

ハードディスク内での画像の管理はどうしているだろう? 付属のソフトにグループ分けがあれば「子どもの成長」「旅行」などタグを付けて整理できなくもない。手動でも、そういったフォルダに個別に画像を分けることもできる。しかし、これらはとても面倒で、エネルギーの必要な作業だ。いろいろ試したが、結局のところ日付順のフォルダがいちばん使いやすいと思う。つまり、メモリーカードからフォルダごとコピーし、そのフォルダ名を日付に変えるのだ。それに加えて主な内容を書き加えればさらにわかりやすい。たとえば、正月に撮影したものなら「20080101_初詣」といったフォルダ名にすればいい。

データがちゃんとコピーできたことがわかったら、メモリーカードに残っているデータは消してかまわない。パソコンを操作していて画像を過って消してしまうこともあるので、画像セレクトなどの作業を行なうなら、それが全部終わってからメモリーカードの画像を消そう。この場合、画像をパソコンから削除したり、フォーマットしてはいけない。次にカメラで利用するときに不具合が発生することがあるからだ。メモリーカードは必ずカメラでフォーマット(もしくは全削除)するクセをつけよう。

後で詳しく解説するが、パソコンに保存する際に、CD-RやDVD-Rなどにもバックアップを取っておけば、仮にパソコンやHDDが壊れた時にも画像データを失う可能性を最小限にできる。

また、JPEGで撮影している限り、付属のソフトはなくてもほとんどの場合は困ることがない。画像管理は前述のように自分でフォルダ名を決めれば内容はすぐにわかるし、専用ソフトのデータコピー機能なども弊害が多い。画像を見るなら、画像ファイルをダブルクリックすれば、「Windowsフォトギャラリー」や「Windows画像とFAXビューア」などが起動して画像が表示できる(Windows Vista/XP)。筆者も、RAWで撮影した画像の処理や、詳細なExif情報を見る場合しか付属ソフトは使っていない。結局そのほうが早くて便利なのだ。

筆者のマイピクチャフォルダの中身はこんな具合。日付とイベント名をフォルダ名にすればとてもわかりやすい

Windows Vistaで大アイコンに設定したところ。画像のサムネイルも表示でき、表示も速く、なかなか使い勝手はいい

レタッチはコピーしたファイルに行なう

パソコンに画像をコピーしたら、できるだけ早くDVD-Rなどにコピーしてバックアップを取りたいところ。オリジナルの画像データを失ってしまうのは、パソコンやHDDのクラッシュといったトラブル以上に人為的なものが多い。操作を過って消してしまったり、作業(レタッチ)したデータを上書き保存してオリジナルをなくしてしまうような場合だ。削除しただけなら市販の復元ツールでデータを復旧させられなくもないが、同じファイル名で違う内容を上書きしてしまうと(レタッチ後のデータを保存した場合など)元のデータには戻せなくなってしまう。

こうした事態を避けるためには、写真データをレタッチする際には、かならずコピーしたファイルをいじるようにするといい。Windowsの場合、コピーしたい画像をマウスの右クリックでドラッグしながらコピーしたい場所で離すとメニューが表示される。「ここにコピー(C)」を選択すると、ファイルがコピーされる(Ctrlキーを押しながら左ボタンでドラッグしても同じ)。同じフォルダにコピーすると、ファイル名に「コピー ~ 」という名が付くのでどのファイルのコピーかすぐわかる。後はファイルネームを変えればOKだ。

右クリックでファイルをドラッグすると離した時に選択肢が表示される。誤操作しづらく、安心

画像の保存ならDVD-Rが最適

今やほとんどのパソコンに書き込み可能なDVDドライブがついている。もしないのなら、写真を撮っていくうえで必須ともいえる装置なので、ぜひ購入しておきたい。接続の簡単な外付けDVD-Rドライブでも価格は1万円前後、デスクトップパソコン用の内蔵タイプなら数千円で購入できる。注意したいのは、安価なドライブにはDVDの読み取りのみで、書き込みはできないタイプがあること。これでは画像の保存はできない。

書き込み可能なパソコン向けDVDにはいくつか種類がある。「DVD-R」がオリジナルといえるもので、データは書き込みしかできず(追記可能)、消去はできない。「DVD-RW」はデータの書き換えが可能なDVD。「DVD-RAM」も書き換え可能だが、方式が異なるため互換性が下がる。また「DVD+R」「DVD+RW」もあるが、これはDVD-R系の派生規格で、使い方は「DVD-R」「DVD-RW」とほぼ同じだ。また、通常のDVDは容量が4.7GBだが、2層構造にしてほぼ2倍の容量とした「DVD-R DL」も登場している。

オリジナル画像のバックアップを考えると、スタンダードなDVD-Rが最適だろう。撮ってきた画像を保存するのだから書き換えできなくても困らないし、広く使われているので値段もこなれている。もちろんドライブが対応していれば大容量の「DVD-R DL」もいい。DVDディスクには「8倍速」「16倍速」といった表記があるが、これは書き込みの速度。ドライブに合わせて選べばいいが、たとえば16倍速のドライブで8倍速のディスクが使えないわけではない。それに合わせて書き込み速度を下げればちゃんと記録できる。また、CDタイプの記録可能なディスクとして「CD-R」もあるが、これは容量が650MB~700MBと少ない代わりに多少安価なのが特長。撮った画像をセレクトして人に渡す場合などに向いている。使い方は基本的にDVD-Rと変わらない。

USB外付け型DVDドライブ、ロジテック「LDR-MA18U2」。価格は1万1,500円。ノートパソコンでも使えるUSBタイプは汎用性が高い

内蔵用DVDドライブのバッファロー「DVSM-XL20FBS-WH」。取付けに手間はかかるが8,500円と安価だ

実際のDVD-RやCD-Rへの書き込みは、書き込み(ライティング)ソフトを使用する。Windows VistaやWindows XPはOSそのものに書き込み機能が備えられているが、決して使いやすいとはいえない。市販の書き込みソフトにはディスクのコピー(バックアップ)機能などもあり、便利なので1本手に入れておくといいだろう。Windows用書き込みソフトとして有名なものとしては、BHAの「B's Recorder」シリーズなどがある。

Windows Vistaのパソコンに何も記録していないDVD-Rを挿入すると自動的にメニューが表示されるので、「ファイルをディスクに書き込む」を選ぶ

次にディスクに名前をつける。標準では日付が入っているのでそのままでもいいだろう

書き込みたい画像をフォルダごとディスクに入れたら[ファイル]メニューから、「セッションを閉じる」を選べば、ディスクに書き込みが行われる

DVD-Rは冷暗所に保管

DVD-Rに保管したからもう安全……といいたいところだが、DVD-RやCD-Rは直射日光や高温多湿が苦手。そこで保存のためにコピーしたディスクは、きちんとした場所に保管しておきたい。

まずケースだが、DVD-RやCD-Rの枚数が少ないなら1枚1枚プラスチックのケースに入ったディスクを購入し、同じケースで保管すればいい。しかし数が多くなるとケースだけでもかさばるし、なによりプラスチックケースは割れたり欠けたりする可能性もある。オススメなのは、50枚セットなど、スピンドル(バルク)と呼ばれる筒状になって販売されているディスクだ。中身は1枚売りと同じで、若干は安く購入できる。ただし、スピンドル(バルク)状態で極端に安く売られているノーブランドの製品は、経験上、信頼性がとても低い。半数近くが書き込みに失敗したこともあった。長期保存には多少値段は高くても、原産国が日本のディスクを使うようにしたい。

スピンドル(バルク)になったDVD・CDディスクは当然ケースが付属していない。そこでバインダー(アルバム)状になったCDケースを手に入れよう。バインダー状になっていれば、枚数が増えても目的のディスクを探し出すのが簡単。またバインダーは、1ページ1枚の小型なものから、1ページ6枚ほど収納できる大型なものまでたくさん用意されている。パソコンを売っている家電ショップなどで購入できる。また、最近はケースが一体型のディスクも売り出されていて、便利である。

ディスクは直射日光の当たらない場所に保管しよう。ディスクの記録面は色素でできているため、紫外線で徐々に分解される可能性がある。直射日光に当ててはいけないと言われるのは、これが原因だ。長期保存を考えるなら、完全に日光を遮ることができる冷暗な場所が最適だ。ただし、冷蔵庫や冷凍庫での保管は取り出したときに結露するので不適切だ。

ていねいに保存しても、残念ながらディスクの寿命は永遠ではない。面倒でも数年おきに保存し直したほうが安全だ。たとえば次世代ディスクである「ブルーレイ(Blu-ray) ディスク」が登場しており、徐々に安くなっている。ドライブやディスクが納得できる値段まで安くなったらこれを購入し、DVD-Rなどから画像データを移すという手もある。

写真を撮った瞬間は二度と戻らない。いざ、欲しい写真を探して見たらデータが壊れていた、なんてことのないようにしっかりバックアップして、楽しい写真をたくさん残して欲しいと思う。

パソコンがなくてもバックアップ

バックアップといえばパソコンからCD-RやDVD-Rに焼くのが一般的だが、パソコンが苦手という人もいるだろう。そんな人に便利なのが、CD/DVDドライブを搭載したプリンターだ。たとえばセイコーエプソンの「E-720」は、メモリーカード用スロットとCD/DVDドライブを備え、パソコンを使わなくてもデータの保存やプリントが可能になっている。液晶モニターも装備していて、プリントしなくても画像が確認できる。

セイコーエプソン「カラリオE-720」