2007年はSkype(インターネット電話サービス)の共同設立者として知られるNiklas Zennstrom氏とJanus Friis氏にとって大きな節目の年となった。2人は今年初めにPtoP技術を基盤とした動画配信サービス「The Venice Project」(開発コード名)で業界の注目を集め、秋には米eBay傘下で率いてきたSkypeを退任した。

Zennstrom氏とFriis氏は、KaZaa(ファイル共有ソフトウェア)、Skype、そしてJoost(動画配信サービス)を立ち上げた名コンビだが、Zennstrom氏はよく表舞台に出て来るのに対し、Friis氏は公の場であまり発言しないことで知られている。12月12日、フランスのパリで開催されたWeb/メディアのイベント「Le Web 3.0 '07」ではそのFriis氏が登場。KaZaaとSkypeでの経験、JoostとAtomicoが目指すもの、Zennstrom氏とのチームワークなどについて語った。

Janus Friis氏(左)とLoic Le Meur氏(右) - ブロガーとして有名なLe Meur氏は動画サービス「Seesmic」を立ち上げている

Zennstrom氏との出会い、KaZaa立ち上げへ

Friis氏のスピーチは、同イベントのホストであるフランスの起業家Loic Le Meur氏との対談形式で進められた。

話はまず、Zennstrom氏との関係からはじまった。Friis氏はデンマーク人、Zennstrom氏はスウェーデン人で、2人はZennstrom氏がデンマークでISPを立ち上げたときに出会った。「もともとNiklasは僕の雇用者。彼が実績のない子供だった僕を採用してくれた。ラッキーだった」とFriis氏は言う。2人はその後、1999年にスウェーデンのテレコム会社Tele 2に移り、新サービスを共同で開発する。そのころから2人の関係はビジネスパートナーとなる。

「当時、時代はドットコムブームに沸いており、これから何をしようという具体的な目標はなかった」とFriis氏は振り返る。興奮と期待を胸に、2人は当時の勤務地だったオランダのアムステルダムで会社を立ち上げることを決意する。それが、後のKaZaaだ。

PtoPを利用したファイル共有ソフトウェア「KaZaa」は、音楽業界に大きな影響を与えた。これについて、Friis氏は、「Napster、Gnutellaなどの状況を見て、直感的に(PtoPは)クールな技術だと思った。決して新しい技術ではないが、ファイル共有にとどまらない潜在性があると信じていた」と語る。またISPに勤務した経験から、ストリーミングサーバーのスケール、コストなどの問題を認識していたともいう。

だが、KaZaaは技術だけでなくビジネスモデルが問題となる。「技術チャレンジとしてスタートしたが、結局はビジネスの可能性に技術で挑戦した結果となった。技術は、結局は(ビジネスの)エネーブラーに過ぎない」。そのKaZaaでは、音楽業界を敵に回すことになり、訴訟問題に発展した。「レコード業界とは対立ではなく、協業するつもりだった。ライセンス、広告モデルなどを考えていた。だが、広告モデルは当時まだ早すぎた」とFriis氏。

「ユーザーをどうやって集めたのか?」というLe Meur氏に対して、Friis氏は「基本的にはソフトウェアをリリースしただけ。PtoPはマルチダウンロードなどの技術優位点が多く、それが人気をよんだ。もちろん、使いやすいインタフェースをつねに意識した」と答えた。Friis氏がもうひとつ強調したのが、時代、つまりタイミングだ。