カーナビゲーション、いわゆる「カーナビ」の装着率が上がっています。最近では新車の半数以上がカーナビを装着しているとも聞きます。最新のカーナビは機能が豊富で、どれがいいのか迷うことも多いと思います。ちょっといいものは20万円以上しますから失敗しないカーナビ選びをしたいところ。ここでは初めてカーナビを購入するユーザーを想定し、カーナビの選び方をまとめてみました。なお、本文などで記した実売価格は2007年末時点のものです。価格は随時変化しますので注意してください。

日産オリジナルナビゲーション

道案内と検索がカーナビの主役

「カーナビ」は"カーナビゲーション"の略。簡単にいえば、クルマを運転していて道案内してくれる機械のことです。"次の交差点を右折してください"といった案内は、テレビコマーシャルでもよくやっているので、だいたいイメージできるでしょう。現在位置を中心にした地図表示と、音声ガイダンスによる道案内です。

この道案内、最近ではものすごく親切になっています。地図+矢印などの表示だけでなく、交差点が近くなると立体表示や鳥瞰表示(上から見たような表示:バードビュー)になったり、分割画面になって標識などをわかりやすく表示したりします。初期のカーナビでは「間もなく右折です」という案内で右車線に移ったら、実はオーバーパス(測道が左側にある)になっていて曲がり損ねたなんていう笑い話のようなものもありましたが、最近のカーナビではほとんどそういったことはありません。

もうひとつ、格段に機能アップを果たしたのが検索機能です。現在いる場所の近くにあるコンビニやガソリンスタンドなど、カーナビを使えば実に多くのお店やランドマークが検索できますし、長年住んだ街でも新しい発見があります。毎日違った場所へ向かうような仕事なら道案内が重要ですが、普通のドライバーにとっては、道案内より検索機能のほうが便利かもしれません。

これら道案内や検索のためには、膨大なデータが必要になります。各縮尺別の地図はもちろん、立体表示のためのデータ、お店などのデータなど、必要なものは多岐にわたります。CDからDVD、そしてHDD(ハードディスク)へと、カーナビのメディアが大容量化してきた理由のひとつはここにあります。

地図を表示し、自車位置を矢印などで表示するのがカーナビの基本(画像:クラリオン・2対1画面)

高い位置から見たようなバードビュー表示は、自車の位置をつかみやすい(画像:パナソニック)

道路の分岐に近づいたら、標識を画面に表示し、わかりやすく表示する(画像:クラリオン)

住所やコンビニ、駐車場などの検索は、都市部でとても重宝する(画像:クラリオン・近隣県絞り込み検索)

時間短縮と安全のための道路情報

道案内は基本的に静的なものです。夜と昼で道が変わるということは特殊な例を除いてありません。しかし実際には、時刻や状況によって大きく変わるものがあります。それは"渋滞"です。夜間や昼前後は何ともないのに、朝夕だけはびっしりクルマが詰まるという道路も珍しくはありません。単に最短ルートだけ表示しているだけでは十分な道案内とはいえなくなっているのです。

そこでカーナビの多くには渋滞などの情報を入手し、迂回路を指示する機能が搭載されています。もっとも多く使われている渋滞情報システムは「VICS(Vehicle Information and Communication System)」で、これは国が行なっているサービスです。VICSは道路に埋め込まれたセンサーで情報を集め、渋滞、所要時間、事故、工事、規制などの情報をクルマに送信します。送信には、道路上に設置された電波ビーコンや光ビーコン、FM多重放送などが使われます。カーナビの多くは、このVICS情報を受ける機能を備えています。

しかしVICSは交通量を測るセンサーなどの固定装置が必要なため、裏道などの細い道はほとんどフォローされていません。つまり、VICSで主要道路が渋滞だと知って裏道に回ったら、そっちのほうがひどい渋滞だった、なんて状況にもなるわけです。そこで最近ユーザーを増やしているのが、道路を通過したクルマから渋滞などの情報を収集し、これからやってくるほかのクルマのために活かすシステムです。走行しているクルマの情報を「プローブ交通情報」といいますが、これを収集し、最速ルートなどを判断するわけです。

このプローブ情報システムには、ホンダの「インターナビフローティングカーシステム」、トヨタの「G-BOOK mX」、日産自動車の「カーウイングス」、パイオニア(カロッツェリア)の「スマートループ」などがあります。これらに対応したカーナビを搭載していれば互いに情報をやり取りし、より快適なルートが選択できます(実際の使用には会員登録や携帯電話の接続などが必要)。

カーナビは、現在地を調べて道順を教えるただの道案内から、情報共有システムなどによって快適で安全なルートを提示する高度なシステムに変化しつつあるのです。

VICSによる経路誘導の指示例(画面:ソニー)

プローブ情報による交通量の表示。点線が交通量を表している(画像:ホンダ)

プローブ情報システムの概念。これはホンダのインターナビ・フローティングカーシステム

トヨタのプローブ情報システム。VICSのみより詳しい指示が可能

VICSのみを使った場合の経路指示(画像:ホンダ)

ホンダ・インターナビを使った場合の経路指示。左とは違うルートを指している

エンターテイメントとしてのカーナビ

カーナビのもうひとつの面は、エンターテイメント性です。カーオーディオは非常に進歩していて、クルマそのものの静粛性が高くなったこともあり、クルマでも音楽を十分に楽しめるようになりました。カーナビの多くもラジオやCDをかけられるようになっていますし、より高音質のために外部アンプなどとの接続機能を備えているものも少なくありません。

最近増えているのはiPodを始めとした携帯型MP3オーディオとの接続です。特にアップルの発売するiPodシリーズプレーヤー(iPod Shuffleを除く)とは、現在市販されているほとんどのカーナビが接続可能です。もちろんHDDなどに録音した音楽データの再生も可能ですが、USB端子などでポータブルオーディオと接続し、カーナビ側から操作して音楽を再生できるのです。それだけポータブルオーディオプレーヤーが普及しているということでもあります。

また、HDDカーナビは30~40GBのハードディスクを備えていますが、地図などのナビゲーションで使うのは20GB前後のようです。つまり10~20GB程度の空きがあるわけですが、これをミュージックサーバなどの名称で、音楽データのストックに使うカーナビが多いようです。これなら数千曲はストックできますから、CDなどを入れ換える手間は不要になります。

もうひとつ、エンターテイメント面で急激に増えているのが地上波デジタルやワンセグ機能、つまりテレビ放送の受信です。携帯電話でワンセグ対応が増えるのと同じように、カーナビでもこれに対応する機器が急増しています。ただ携帯電話と違うのは、ドライバーは運転しているということです。運転中にモニターなどを注視するのは禁止されていますし、第一、とても危険です。"同乗者が見るから"という理由もありそうですが、目の前で映像が動くとついそちらに目を取られがちです。それもあり、富士通テン(エクリプス)やトヨタ自動車のカーナビには、運転席と助手席から異なる映像が見られる「デュアルディスプレイ」の製品も登場しています。

最近のカーナビはモニターを増設して、リヤシートの乗客向けにテレビを映すことが可能なものもあります。これなら問題ありません。また、リヤシートでむずかる子どもをあやすのにDVDをかけるという使い方もあるようです。また、外部入力を備え、ゲーム機をつないで子どもを遊ばせることも可能なものもあります。しかし移動する車で小さな液晶モニターを注視することはクルマ酔いの原因になります。サッカー中継のようにどうしても見逃せない番組があるなら、クルマをどこかに停めて、思いきり見たほうが精神衛生上いいでしょう。仕事の関係で車中泊しなければならないような場合、テレビは暇つぶしに最適です。クルマを停めて存分に楽しんでください。

ミュージックサーバ機能は、HDDカーナビのほとんどが備えている(画像:クラリオン・ミュージックキャッチャー)

カーナビの多くがiPod接続可能になった。写真はiPod用コネクターをもつボルボ車

携帯電話でも受信できるワンセグ。一般的な地デジよりも簡単な装置で受信できる(画像:クラリオン)

後席の乗員向けに、モニターを追加できるカーナビもある(写真:ホンダ・リアエンターテインメントシステム)