【レポート】

ThinkPadのテクノロジー、熱設計のコダワリを知る

1 ThinkPadの熱設計の歴史

 
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ThinkPadには、「秋葉原で新モデルが発売になると、最初の購入者はいつもパソコンメーカー」という逸話があるのだという。ともかく、ThinkPadは常に高品質と高性能、なにより"テクノロジー・リーダーシップ"を期待されている製品であるし、レノボ・ジャパンも、その追求を同製品のコンセプトとして挙げている。

そのThinkPadのテクノロジーについてレノボ・ジャパンは、プレス向けのブリーフィングを実施した。以前、こちらの記事でお伝えした催しに引き続くもので、今回のテーマは「熱設計」について。同社の基礎研究・基礎開発 テクニカルマスターの中村聡伸氏が、ThinkPadの熱設計の"コダワリ"を語ってくれた。

同社テクニカルマスターの中村聡伸氏。ThinkPadの"コダワリ"を語ってくれた

中村氏は、2004年から3年間ほどThnikPadの熱設計でチームリーダーとして活躍し、現在は熱設計、耐衝撃設計の全般を担当している。以前はThinkPad Tシリーズの機構設計を手がけていたそうで、常にシビアな高性能が要求されるTシリーズに係わっていただけに、熱設計に関する熱意も随一という人物だ。

ブリーフィングの冒頭、TinkPadの熱設計における4つの重要な設計要素として紹介されたもの。4つの要素はそれぞれ、ひとつとして欠けてはならない要素であり、逆に言えばひとつでも妥協すれば熱設計が格段に容易になると言うほど、ThinkPadの熱設計にとっては重要なものなのだという

ヒートパイプ冷却システムの誕生

ThinkPad熱設計の歴史を一覧にしたもの。冷却ファンの採用と並行してLiquid Cooling、つまり水冷システムの研究も進められていたことにも驚く。水冷に関してはコストや信頼性の課題からまだ実現していないが、将来もしかしたら……

中村氏はThinkPadの熱設計の歴史を振り返り、大きな変化のキッカケになったトピックとして、90年代の前半、Intel 486DX4プロセッサを搭載したThinkPad 755Cの登場を紹介する。従来モデルであるThinkPad 750Cが搭載していたCPUは動作周波数33MHzのIntel 486SLで、CPUに冷却ファンなど利用する必要がなかった世代である。755Cに動作周波数75MHzの486DX4を搭載する際、486SLのおよそ2倍という、当時としては高発熱な3.3WというTDPが大きな問題となった。

実は、CPU冷却ファンを内蔵して486DX4搭載製品を発売するPCメーカーも存在したのだが、「当時の冷却ファンは信頼性などの面で問題が多く、採用しようとは思わなかった」(中村氏)という。しかしながら、TDPが上昇したからといって、486DX4を採用しなければ、前述の4つの要素にある「CPU性能」を妥協することになってしまう。そこで中村氏が考案したのが、現在では定番となっている「ヒートパイプ」によるCPU冷却である。

ヒートパイプは当時、宇宙ステーションの外皮冷却などで知られた技術ではあったが、それでも「まさかノートパソコンに使うとは思わなかった」(中村氏)。転機となったのは、有効な冷却技術に苦心する中村氏がアメリカ出張の際に見かけた調理用品「アイスクリームサーバー」だ。意外なものだが、全体が中空のヒートパイプ構造になっており、手の熱が握り部分を伝わりスプーン部分を温めることで、硬いアイスクリームが溶けてスムーズにすくうことができる仕組みとなっている。中村氏は「これはThinkPadに使える!」と衝撃を受けたのだという。

まさかのアイスクリームサーバーがノートパソコン初のヒートパイプ冷却に繋がった

そのような経緯もあり、1994年、ノートパソコン向けには世界初となるヒートパイプ冷却装置が登場する。透過熱伝導率に優れたヒートパイプを利用し、熱を効率良く拡散して冷却する冷却システムを採用することで、755Cでのファンレスを実現した。

サーマルヒンジの開発など、ヒートパイプを利用した冷却はこの後も発展を続ける

ヒントはフクロウの羽根

その後も熱設計の追及は進められたものの、1997年の初代Pentiumプロセッサの頃から、上昇を続けるCPUのTDPに対応するため、ついにThinkPadも冷却ファンを利用することになる。当時冷却ファン採用を決定した理由は、「Hydro Dynamics Bearing」、いわゆる流体軸受けファンの信頼性に可能性を感じたからだそうだ。早速研究を重ね、ThinkPad 600から実際に流体軸受けタイプの冷却ファンの利用を開始する。

最初に掲載した「4つの重要な設計要素」のスライドにもあるように、騒音ノイズレベルはThinkPadにとって妥協してはならない要素である。冷却ファンを搭載するということは、それまでのファンレスの無音に比べれば、騒音が格段に増してしまうということだが、これについて中村氏はThinkPadが採用するユニークな解決策を紹介してくれた。

「Owl Blade」と名付けられた静音技術で、ThinkPad T60で初めて採用され、現在のThinkPad T61では第2世代のOwl Bladeが採用されている。冷却ファンのブレードを特殊な形状にすることで、風量を確保しつつもノイズを低減するという技術で、名前からもわかるとおり"フクロウの羽根"が開発のヒントとなっている。

静かに獲物を狩るフクロウの羽根が、現在のThinkPad静音ファンの原型。実際のファンではブレード先端に細かな突起が設けられた形状になっている

フクロウは静かに獲物に襲い掛かるために、飛翔時の風切り音を非常に小さくする特徴的な風切羽を持つという。風切羽周辺の細毛が小さな渦を作り出すことで、翼が起こす大きな渦による騒音を低減する効果があるというもので、それをThinkPadのファンに活かせないか、「雲の中を進むような試作と実験の繰り返しだった」(中村氏)。ちなみに、同様アイデアは新幹線のパンタグラフでも使われ、騒音低減に一役買っている。

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インデックス

目次
(1) ThinkPadの熱設計の歴史
(2) ユーザーが快適な道具を目指して
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