マイクロソフトは、米国で発表されたWindows Vista Service Pack(SP)1の提供スケジュールに関して国内で説明会を開催した。RC版は、MSDNおよびTechNetの購読者には7日から提供を開始、ダウンロードセンター経由でのダウンロードは来週提供されることになっている。正式版は2008年第一四半期後半を予定。

1ファイルで10億GB以上が扱えるようになるVista SP1

Vista SP1は、これまでに提供された更新プログラムを集めたほか、安定性や信頼性向上などを図る新機能を追加したもので、新ファイルフォーマットの「exFAT」やRDP署名/圧縮アルゴリズム、BitLockerのマルチボリューム/マルチファクター認証サポートなどが追加されている。

Vistaの提供スケジュールと追加される機能

exFATは、Windows 95時代のFAT16、Windows 98以降のFAT32に続くファイルフォーマット。1ファイルあたりの容量制限がそれぞれ2GB、4GBだったところを、1ファイルあたり10億7,374万1,824GBという巨大なファイルサイズでも扱えるようになる。また、書き込み速度と削除速度も向上させているという。

大きく進化を遂げたファイルフォーマットexFAT。ただし、システムドライブなどには、セキュリティに優れたNTFSを今後も推奨していくようだ

わかりやすく言い換えると16エクサバイト(ギガバイトの100万倍)という大容量になる

このフォーマットはUSBメモリやUSB接続のHDD、ハイビジョンカメラ、デジタルカメラといった外部接続機器向けのフォーマットが想定されており、特にハイビジョン映像のような大容量データでも扱いやすくなる点がメリットとなる。ただし、フォーマットの下位互換はなく、exFATでフォーマットされた機器はVista SP1以外では扱えない。Windows本部プロダクトマネジメント部の中川哲部長によれば、Vista SP1以外にexFATのサポートを提供する予定はないということだ。

スマートカード向けの認証方法にも新機能が追加された。従来はスマートカード挿入後にPINコードの入力が必要だったが、新たに指紋認証などの生体認証をサポートし、PINコード入力の代わりに生体認証でログインすることができるようになる。同様にドライブ暗号化機能のBitLockerでも、USBメモリ+生体認証での暗号解除が行えるようになり、PCとUSBメモリを同時に紛失したり盗まれたりしても危険性が低減できる。BitLockerではさらに、従来のブートボリュームの暗号化に加え、別ボリュームも暗号化できるようになるので、別ドライブにデータを保存している場合でも安全性が向上する。

従来の方式では、セキュリティは高いが手間の軽減はできなかった。生体認証でセキュリティと使い勝手の両立が実現

別ドライブの暗号化にも対応したBitLockerでも生体認証をサポート

リモートデスクトップで使われるプロトコルであるRDPは、ホストPC(リモートでアクセスされる側)から、クライアントPC(アクセスする側)に対してデスクトップ画面の画像を送信していたが、これを圧縮した上で送信することが可能になり、通信量が25~60%減少。より効率的な通信ができるようになるという。ただし、画像の圧縮と解凍が必要になるため、どちらのPCでもマシンのリソースを消費することから、従来の方式も選択可能となっている。

デスクトップ画像は、ホストで圧縮、クライアントで解凍する作業が必要なため、いずれもVista SP1を搭載しておく必要がある。SP1以外であれば従来の方式を選べばいい

こうした機能は、特に企業ユーザー向けの新機能となるため、同社では企業ユーザーによるRC版の評価を求めていく。Windows XP SP2では、大幅な機能追加と仕様変更で互換性が失われたが、Vista SP1では「互換性に最大限配慮」(中川氏)したことで、SP1適用で動作しなくなるアプリケーションなどがないようにしたそうだ。とはいえ、企業のポリシーでSP1の適用を当面見送る場合もあるため、Windows Update経由でSP1がインストールできないようにするブロッカーツールも提供する。マイクロソフトでは、ブロッカーツールの利用も含めて、企業ユーザーにはまず、SP1を評価してもらいたい考えだ。

なお、Windows XP SP3についても「Vista SP1と同様のスケジュールで」(同)作業が進んでいるという。Internet Explorer 7やWindows Media Player 11は提供されず、新機能の追加よりも、安定性、信頼性向上を重視したサービスパックになる模様だ。

SP1で「トップ5の問題」をすべて修正した「Office」

同様に準備が進められている「2007 Office System SP1」については、Vista SP1と同様、2007 Office System RTM版以降にリリースされたセキュリティアップデートやホットフィクスをひとまとめにしたもので、安定性やパフォーマンスの向上、セキュリティの強化が一度に図れる。一部、新規で提供されるホットフィクスモジュールもあるという。

具体的なホットフィクスとしては、(1)Office IME 2007に存在する漢字変換ができなくなったり、変換精度が極端に悪くなったりする問題や、(2)PCやアプリケーション起動直後に日本語入力して変換するまでに時間がかかる問題が解消されている。

Office IME 2007の問題と原因

(1)に関しては、PCが強制的にシャットダウンした場合など、特定の環境で辞書が破損したり、辞書コピー時に例外的な状況でコピーが完了せず、辞書が破損してしまったりといった問題によるもの。そうした場合でもユーザー辞書や学習情報が破損しないようにしたほか、辞書が異常な場合に自動復旧したり、手動で復旧したりする機能も追加した。

(2)は、PCやアプリケーション起動直後に辞書を読み込むのに時間がかかっていたことが原因で、これを改良することで問題を解消。起動直後以外のパフォーマンスも向上したということで、同社内の実験では、「きょうはよいてんきです」を変換するまでの時間が、起動直後で約1/5の時間に短縮され、通常時でも約20%の時間短縮が実現したという。なお、この問題については、すでにマイクロソフトから提供されているホットフィクスを適用することで解消できる。

それ以外に関しては、特にマイクロソフトのレポーティングツールで報告された問題について、「トップ5の問題をすべて修正した」(インフォメーション ワーカー ビジネス本部オフィス製品 マーケティング グループ飯島圭一シニアプロダクトマネージャ)ことで安定性が向上。ここのOffceアプリケーションに関してもパフォーマンスが向上するホットフィクスを開発したという。

Windows本部プロダクトマネジメント部 中川哲部長

インフォメーション ワーカー ビジネス本部オフィス製品 マーケティング グループ飯島圭一シニアプロダクトマネージャ