小田急電鉄はこのほど、同社の海老名駅付近にて毎年恒例の「ファミリー鉄道展」を2日にわたって開催した。同イベントは1999年から続いており、2007年は小田急電鉄80周年、初代ロマンスカー誕生から50周年という節目にあたり、小田急グループの総力を挙げて取り組んだイベントになった。特に鉄道ファンにとっては、「来年から走り始める地下鉄対応ロマンスカー60000形が初の一般公開」「保管車庫で厳重管理されている初代ロマンスカー3000形も屋外展示」など魅力的な内容だった。楽しさ満載のイベントの様子を報告しよう。

イベントは3会場で行われた。第1会場は、車両基地となる海老名総合基地の一角。ファンの目当てはもちろんロマンスカーだ。会場にはすんなり入れたが、ロマンスカーの撮影と車両見学には行列ができていた。限られた場所でスムーズに撮影ができるようにと入場制限が行われたこともあり、イベント2日目は午前中から3時間半待ちの大行列になった。

会場風景。どこかに最新ロマンスカーMSEがいるよ、探してみて!

最初で最後かもしれない横並び!?

ロマンスカー4編成のうち、最も右側で一際異彩を放っていたのが、ブルーの車体の最新型ロマンスカー、60000形だ。愛称は「MSE」で「Multi Super Express」の略。何がマルチかといえば、同ロマンスカーはロマンスカー史上初の地下鉄対応車両なのだ。流線型の正面に扉が付いているところがその象徴。これは地下鉄線内で列車が動かなくなったときや、車両火災が発生した場合の非常口である。この非常扉を含めて、60000形は国土交通省が省令で定めた地下鉄等旅客車の基準に準拠している。また、車両や内装に難燃性素材や不燃性素材が使われ、地下鉄対応車両ならではといった内容。今回は車内を公開しなかったが、おそらく内装素材も従来のロマンスカーとは異なっているはずだ。

新旧ロマンスカー勢揃い

MSEの新宿寄りは切り妻型

ちなみに展示車両の最後尾は流線型ではなく、30000形EXEに似た切り妻型になっている。これは非常口だけではなく、列車編成の分割併合に対応するためだ。今回展示された60000形は6両編成で、これとは別に先頭車が逆向きの4両編成が登場する予定である。この方式により、地下鉄線内から10両で出発した列車が、途中の駅で小田原行きと唐木田行きに別れるという運用が可能になる。現在、展望車のないロマンスカー30000形EXEが江ノ島行きと小田原行きで分割併合運転しているが、MSEは平日朝夕のビジネス特急の利用を前提とし、ベッドタウンの小田急多摩センターを経由した唐木田への乗り入れが予定されている。

MSEの隣は7000形LSEだ。こちらは現役のロマンスカーだが、いつもとは塗装が異なっていた。ロマンスカー50周年を記念して、登場当時の旧塗装に戻っていたのだ。隣の引退した3100形と同じ塗り分けで違和感がないので気付きにくいが、この塗装も2008年3月末までなので、やはり今のうちに写真に残しておきたい。

続いては3100形。小田急で初めて先頭車に展望席を設けた記念すべき車両で、1963年から2000年まで活躍した。「ロマンスカー=展望席」というイメージを定着させた車両なのだ。現在は、当初の11両編成から6両編成に短縮されて保存されている。

一番左にある車両が、久々の屋外展示で話題となった3000形。1957年に登場した小田急初の特急専用設計のロマンスカーだ。実はロマンスカーという呼称は、この車両よりも前の1950年から使われていた。2人掛けでシートの間に肘掛けのない座席が恋人同士に似合うとして「ロマンスシート」と呼ばれた。ロマンスシートを装備した列車がロマンスカーで、3000形以前にも通勤電車を改造して走らせた経緯がある。しかし、当初から特急用として設計された3000形が"生粋のロマンスカー"として歴史に残っている。2007年は3000形の登場から50年が経った年なのだ。

9月から走り始めた千代田線乗り入れ用の4000形

なお、ロマンスカーばかりに気を取られてしまいがちだが、MSEから線路1本を開けたところに、地下鉄乗り入れ用の最新型通勤電車4000形が置かれていた。偶然かと思ったが、2日間とも同じ場所にあり、電車ファンへのさりげないサービスだと感じ、ありがたくカメラに収めさせていただいた。