横並びの写真撮影の他にもうひとつの行列が伸びていた。何の行列かと思えば、車内見学と親子記念撮影。新型のMSEは見えないけれど"規制線"がないので、お蔵出しの3000形をはじめ、3100形、7000形を間近で見られる。特に3000形と7000形は車内も見学できるという大サービス。子供が車体に触っても、危険でない限り職員さんはニコニコと見守るのみ。まさに鉄道との触れあいを満喫できる粋な計らいだ。

見学会の行列からも並びが撮れた。先頭車の形状の違いがよくわかる

順路通りに3000形の車内に入り、撮影会とは逆側の先頭車を眺め、7000形の車内を見学。3000形と7000形の設計には約20年の隔たりがあり、室内の居住性が確実に進歩している様子がわかる。小田急伝統の「走る喫茶室」の設備も大きく変わり、簡素な3000形に比べて7000形では大きな冷蔵庫やビア樽形ビールサーバーが置かれるなど、サービスの向上ぶりも一目瞭然。しかし、古い設計とはいえ初代3000形のシートの前後スペースが意外と広いことも興味深かった。

3000形の室内。小さなテーブルが懐かしい

3000形は当初新宿 - 小田原・箱根湯本間の特急用に使われていたが、その後編成両数を短くして国鉄御殿場線に乗り入れる「あさぎり」号専用列車となった。展示されている3000形は、小田原方向の先頭車がSSEと呼ばれる「あさぎり」専用タイプ。新宿方向の先頭車がSEと呼ばれる登場当時の姿になっている。

3000形の登場当時の姿

3000形は小田急だけではなく、戦後の鉄道車両すべてに大きな影響を与えた車両だ。先頭形状の流線型は国鉄の協力で風洞実験を重ね、空気抵抗を少なくするために採用された。この美しい形状は新幹線車両へと引き継がれた他、低速車両のデザインにも影響を与えた。また、車両と車両の間に台車を置く連接構造も特徴の1つ。曲線区間のスピードアップのために採用された方式で、50000系VSEにも採用されている技術だ。

連接車体の特徴的な台車構造

その台車部分を室内から見る。客室に比べて床が高くなっている

ロマンスカーを外から見せるだけではなく、車内を公開するところが乗り鉄心をくすぐる。嗚呼、シートに座りたい……。ロマンスカーに乗りたくなってしまった。見学者の多くも「旅に出たいなぁ~」なんて感想を持ったことだろう。

バスも4台。そして2007年初の展示がもうひとつ……

第1会場では他に保守車両の実演、バスや写真の展示なども行われていた。保守車両は、線路の砂利を固める「マルチプルタイタンパー」と、架線の保守を行う「タワー車」が登場。マルチプルタイタンパーの砂利突き固め作業は大迫力だ。線路の砂利は枕木とレールを固定するだけではなく、車体の振動を吸収するクッションの役目もある。ただし列車の走行回数が増えると、石積みが崩れて効果がなくなる。そこで、砂利を補正するためにマルチプルタイタンパーが出動するというわけだ。

マルチプルタイタンパーはメカ好きにはたまらない車両だ

タワー車のリフトアップ。タイヤにも注目

タワー車は、線路も道路も走行できるトラックタイプの軌陸車。荷台に昇降機を搭載し、作業員が架線の点検や保守を行う。JR北海道が開発した道路と線路を走行できるバスDMVは、軌陸車を旅客用に転用したものである。

保守車両は他に、レールを削って滑らかにする車両やレールの傷を検査する車両があった。これらの車両は深夜に活躍するため、鉄道の沿線に住んでいたとしてもめったに見られない。昼間に見られるとは、実に貴重な時間だった。

展示ブースには小田急の歩みを紹介する写真コーナーや、環境保全のために沿線の植樹を体験できるコーナー、小田急社員の鉄道クラブが主催する模型運転コーナー、沿線の子供たちによる電車デザインコンテストなどがあった。

その中でも注目は、電車運転体験コーナーだ。小田急車両工場のスタッフが実際の電車の運転台部品を使って作った運転シミュレータが登場していた。なんと初公開!! 「パンタグラフを上げないと電源が入らないなど、実際の電車と同じ本格的なものです」と担当者も胸を張っていた。運転体験が子供限定とは残念! しっかりと講習を受けないと運転席には座ることができないだけに、子供たちも真剣な表情で先輩運転士の話に聞き入っていた。

初公開の運転シミュレータ

運転士になりたくなったらこの説明を読もう!

次はバスのコーナー。展示されているバスは4台で、立川バスの「リラックマ」塗装車は子供たちに大人気。箱根登山バスの「箱根施設めぐり」車体には、富士山やかわいらしい大名行列のペイントが施してあり、楽しい雰囲気だ。伊豆東海バスのレトロ調バス「リンガーベル号」は、1989年から伊東駅発伊豆高原方面の路線に投入されている。全国で走り始めたレトロ調バスの元祖ともいえる存在だ。リンガーベルとは、"思い出を誘う"という意味。なお銀色の神奈川中央バスは、木炭バスのレプリカ「三太号」で、戦中戦後に活躍した代用燃料車である。ノスタルジック!

立川バスの「リラックマ」バス

箱根登山バスの「箱根施設めぐり」

伊豆東海バスのレトロ調バス「リンガーベル号」

木炭バスのレプリカ「三太号」