中国家電メーカー最大手の海爾集団(ハイアールグループ、以下「ハイアール」)が今年6月初めに大幅な組織再編を行った。白物家電、個人向けデジタル製品、ユーザーソリューション、基幹部品、金融、物流という6つのグループを編成。その目的を、「海爾全球化品牌戦略(グローバル・ブランド戦略)が目指すところを実現し、グローバル化と情報化の時代における業界最強の競争力を築き、持続可能な発展を可能にするため」としている。

大掛かりな組織再編を行い、いまハイアールが実現させようとしているグローバル・ブランド戦略とは一体いかなるものなのか、そしてその成否はどうなるのか、本稿で占ってみたい。

中国最高級の迎賓館で新戦略を発表

2005年12月、世界各国から国賓を招く最高級の迎賓館である北京釣魚台国賓館で、創業21周年記念式典を兼ねたハイアールの発表会が開催された。席上、同社CEOの張瑞敏氏は、2006年からの新戦略である「グローバル・ブランド戦略」を実施すると宣言した。

同戦略を展開する背景について、張氏は次のように語った。

「新しい戦略は経済のグローバリゼーションに対応するためだ。わが国がWTOに加盟する前、ある企業の責任者が私に対し、『外国企業が中国に入って来れば大都市を彼らに譲ってやり、自分は農村へ行くつもりだ』と言った。だが、WTO加盟後の状況をみれば、都市か農村かを問わず、中国市場全体がすでに国際市場の一部として組み込まれている。世界で最も貧しい国の1つとされるバングラデシュでさえ、世界中の有名ブランドが熾烈な競争を繰り広げる国際市場になっている。国際市場での競争を勝ち抜けるのはブランドだけだ。国際市場での競争を制するため、われわれはグローバル・ブランドを作らなくてはいけない。新たな戦略を立ち上げる目的はまさにここにある」。

ハイアールは3つの戦略に従って発展してきた。第1の戦略として1984年~1991年は「名牌戦略(ブランド戦略)」を掲げ、品質最重視を貫くことで業界最強の競争力を育み、「海爾」というブランドを中国家電業界のNo.1ブランドにした。

第2の戦略として1992年~1998年は、サービス向上を要とする「多元化戦略(多角化経営戦略)」を掲げ、ブランドと競争力をともに強化した。第3の戦略として1999年~2005年は、「国際化戦略(グローバル戦略)」を推進した。第3の戦略を遂行していたこの時期、ハイアールは経営のスピード化で国内でのリーディングポジションを強化。積極的な海外進出を果たし、本格的な国際競争に打って出た。今後展開しようという「グローバル・ブランド戦略」は、ハイアール第4の戦略なのだ。

各国での"ナショナル・ブランド"化が目標

CEOの張氏は、第4の戦略に関し、「私達はこれまでグローバル戦略を展開してきた。グローバル戦略とグローバル・ブランド戦略は多くの共通点を持っているが、根本的なところで違いがある。グローバル戦略が目指したものは、中国を中心に据えて全世界へ製品を輸出することだったが、グローバル・ブランド戦略は、世界各国でナショナル・ブランドとしてのハイアールブランドを浸透させることを目指している」と説明している。

グローバル・ブランド戦略に至るハイアールの戦略は、同氏が日ごろ強調している「3つの段階論」で実現を図ってきたものだ。3つの段階論とは、「走出去(外に出る)」「走進出(入り込む)」「走上去(上昇する)」の「三歩走」で構成される。

走出去とは、ハイアールブランドの製品を輸出し、世界各地の主要市場に切り込ませること。走進出とは、同製品を世界各地の主要販売チャネルに乗せ、主な販売品目のひとつになるまで市場に食い込むこと。走上去とは、同製品を世界各地で主要ブランドにまで高めることだ。

この三歩走という段階論からみれば、走上去を目指すグローバル・ブランド戦略は、明らかに走出去、走進出を達成したグローバル戦略の延長線上で展開されるものと言える。では、ハイアールはいかなる具体策をもってグローバル・ブランド戦略を展開しようとしているのだろうか。