チャイルドシートはクルマに乗車中、子どもの安全を確保するための幼児用拘束装置の総称です。そのチャイルドシートの基準が2006年10月1日から改正され、取り付けが簡単な汎用性ISO-FIXチャイルドシート規格が導入されました。しかしこの新しい規格は、ちょっとわかりづらいことも確かです。そこで基準の改正によってなにが変わったかを解説したいと思います。また、今回の記事はチャイルドシートメーカーであるタカタと国土交通省のお話を中心にまとめました。

チャイルドシートは体に合ったものを

新基準の説明の前に、チャイルドシートを選ぶときの基本を考えてみましょう。チャイルドシートを選ぶときは、「子どもの体格」と「車両」が、チャイルドシートに適正にあっているかが重要になります。この2つの条件が適正でなければ、どんな安全なチャイルドシートでも子どもを守ることはできません。チャイルドシートの種類は、新生児から1歳頃までの「乳児用(ベビーシート)」、新生児から4歳頃までの「乳児・幼児兼用」、3歳から11歳頃までの「学童用(ジュニアシート)」などに分けられます。また、1歳から11歳頃までと対称年齢を広く取った「幼児・学童兼用」といったものもあります。取り付け方は、シートベルトで固定する「汎用タイプ」と、専用金具で固定する「ISO-FIXタイプ」に分けられます。固定方式については後ほど説明します。

乳児期は首がすわっていないため、後ろ向きで角度を低くした状態、もしくは寝かせた状態の姿勢で使います。チャイルドシートの種類は、後ろ向きに固定する「シート型」と、横向きで使用する「ベッド型」があります。日本では多く見られるベッド型も、世界的には例が少なく、アメリカでは、呼吸系に疾患を持った赤ちゃんや、低体重で生まれた赤ちゃんに、医師の了解を得た上で使用する、特殊なチャイルドシートと認識されているようです。

幼児用は、赤ちゃんの首がすわり、ひとり座りできるようになってから使い始めます。また、乳児・幼児兼用は、リクライニング機構と取り外し可能な乳児用プロテクターが用意され、長期間使えるように考えられています。これが現在もっとも多いモデルです。最近では、シートの固定が簡単にできたり、乗り降りがしやすいようにシートが回転するモデルなど、使い勝手を考慮したものが増えています。

学童用は、座面を上げて背の高さを補い、大人用のシートベルトを子どもでも使えるようにする補助装置です。「座面だけのタイプ」と「背もたれまで付いたタイプ」があり、3歳ごろから使用できます。ただし、本来は肩にかかるベルトが子供の首に掛かると、衝突時に首を痛める可能性があります。正しい位置にシートベルトが掛かる体格に成長するまでは使用しないでください。また、コンパクトで安価な「着衣タイプ」もありますが、チャイルドシートの安全性を評価するアセスメント結果(後述)では「推奨せず」と出ているので、避けた方がいいでしょう。また、幼児・学童兼用は、背もたれ部と座面部とを分離でき、子どもの成長に合わせて座面部だけでも学童用シートとして使用できるものです。

5歳まで(6歳未満)はチャイルドシートの着用が義務づけられています。新生児から4歳ごろまで使用できる乳児・幼児兼用タイプを6歳まで無理に使い続ける人もいるようですが、たいへん危険なので絶対にやめるべきです。子どもの成長に合わせて使い分けてください。また、子供だけでなく、来年6月からは後部座席のシートベルト着用が義務づけられます。シートベルトはそれだけ重要なのです。

各チャイルドシートは、メーカーが取り付け可能なクルマの一覧を出していて、販売店やホームページで確認できます。購入前に必ず自分の車に取り付けが可能かどうかをチェックしましょう。

お話を伺ったタカタ 広報室の菱川豊裕氏

チャイルドシートの種類

乳児・幼児兼用のタカタ「takata04-neo」。これは乳児用インナーパッド使用時

同じく「takata04-neo」。インナーパットを外して幼児用とした状態

3歳から11歳用の「takata312-neo junior seat」。ヨーロッパ基準(ECE R44/04)に適合している

座布団タイプの学童用ジュニアシート、カーメイト「エールベベ・フルーツジュニア」(オレンジ)。2003年基準適合

幼児・学童兼用のジュニアシート、カーメイト「エールベベ・サラット3ステップII」。2003年基準適合

左と同じ「エールベベ・サラット3ステップII」。座面部のみ使用すれば学童用となる

レンタル用品と中古品

チャイルドシートをレンタルやオークションなどで探す人もいると思います。レンタル用品の安全性はまず問題ありませんが、もらい物やオークションなどの中古品は止めたほうがいいでしょう。

チャイルドシートはヘルメットと同じように、一度強い衝撃を受けると使えなくなります。親族から譲り受ける場合は、事故に遭ったかどうかなど使用状況を確認できますが、オークションなどではどのような使われ方をしていたかわかりません。中古品はまず使わないようにしましょう。

チャイルドシートはリヤシートに設置

チャイルドシートの正しい取り付け位置は後部座席です。よく、助手席にチャイルドシートを着けている車両を見かけますが、危険なのでやめましょう。運転するお母さんからすれば赤ちゃんが隣にいたほうが安心かもしれませんが、もし事故に遭ってエアバックが作動すると、赤ちゃんにとって非常に危険です。エアバッグが膨らむスピードは、新幹線と同じ程度、200km/h以上といわれています。とくに助手席にベビーシートを後ろ向きに固定した場合、エアバックの展開エネルギーを受けて助手席シートに叩きつけられてしまいます。実際にアメリカでは何十人という子どもが命を落としています。

では、前向きの使用は良いのでしょうか? もちろん前向きでも助手席のシートが前方にスライドしているときなどは、エアバックの衝撃を受ける可能性があります。チャイルドシートメーカーは助手席の使用は、前向きでも後ろ向きも推奨していません。後部座席なら、左右どちらの席でも安全性は変わりません。ただ、日本の場合は乗り降りを考えると左後方が便利です。