【レビュー】

ブラピ&A・ジョリー共作、衝撃の実話 - 『マイティ・ハート/愛と絆』

 

どうも、いつもは「こんなDVDありますけど?」で変なDVDばかり観ている熊方と申します。今回は11月23日に公開される『マイティ・ハート/愛と絆』をレビューさせていただきます。2002年のパキスタンで実際に起きたジャーナリスト誘拐殺人事件を基にした、かなりシリアスな作品です。

この映画、あのハリウッド一のラブラブカップルと言われる、ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリー共作がウリとなっている作品です。ブラピ率いる映画会社プランBエンタテインメントが製作を担当し、最愛のパートナーであるジョリーが主演をするという、まさに愛の映画。

身重のマリアンヌ(アンジェリーナ・ジョリー)を待ち受ける過酷な運命とは……?

入籍はしていないものの、ほとんど夫婦のようなピット&ジョリー。子供もいますしね。でも映画業界では実際の夫婦共作物はわりと鬼門です。マドンナとショーン・ペンが夫婦で共演した『上海サプライズ』や、夫ガイ・リッチーが監督し、妻であるマドンナが主役を務めた『スウェプト・アウェイ』など、割と駄作が多いです。なぜか2作品ともマドンナがそれぞれの時代の夫と絡んでいます。どちらもラジー賞で最悪主演女優賞受賞作品になってしまった事実も、"夫婦共作=鬼門"であるということを裏付けているような気がしますね。

このような過去の例から、夫婦共作映画に対する不安もありましたが、この作品はそんな夫婦モノのダメなイメージなど吹き飛ばす作品でした。と言うか「夫婦」とか「愛」とか「感動」とかいう安易なキーワードではいっさい語れない、真実の重みがあります。

監督は『ひかりのまち』、『日蔭のふたり』、『24アワー・パーティー・ピープル』などで知られるイギリスの実力派マイケル・ウィンターボトム。歴史、恋愛、戦争、サスペンス、SF、音楽と、あらゆるジャンルの映画を監督してきたウィンターボトム監督は、ボスニア内戦を描いた『ウェルカム・トゥ・サラエボ』や、アメリカによる捕虜虐待の真実を取材したノンフィクション『グアンタナモ、僕達が見た真実』など、世界の悲惨な現状をリアルに伝える作品で特に高い評価を得ています。また『ひかりのまち』や『24アワー・パーティー・ピープル』で見られるような、手持ちカメラを多用した、ドキュメンタリーさながらの臨場感あふれるリアルな映像も得意です。『マイティ・ハート 愛と絆』はブラピ夫婦というよりも、そんなウィンターボトム監督の持ち味が全開となっていました。

本作は実話を基にしています。2001年9月11日のアルカイダによる同時多発テロ以降、テロとの戦いと称して中東では激しく悲惨な戦争が繰り広げられています。パキスタンはアフガニスタンにおけるタリバン政権樹立までは、タリバン側を支援していた国でした。ところが、アメリカのアフガニスタン侵攻時、パキスタン政府はアメリカ支持を表明し、パキスタン国内はイスラム教徒による激しい抗議行動が起こり、テロも多数勃発。治安は非常に不安定な状態になっていきます。

2002年、この国でジャーナリストとしてテロリストの取材活動(かなり危険な仕事です)を行うウォールストリート・ジャーナルの記者ダニエル・パール(ダン・ファターマン)が何者かに誘拐されます。ダニエルは帰国前の最後の仕事として、アルカイダのテロリストと関わりのある男とどうにかコンタクトを取ろうとしていたのです。

アンジェリーナ・ジョリー演じるダニエルの妻マリアンヌは、お腹に愛するダニエルの子を宿したまま、夫を救出するために、ある行動を起こします。その様子が本作では緊迫感溢れるドラマとして描かれます。ダニエルの行方を巡り、パキスタン政府のテロ対策組織のリーダー、アメリカ領事館の安全保障担当官、FBI、ダニエルの同僚など、様々な立場の人々がマリアンヌと共に昼夜を問わず奔走します。

帰ってこない夫の足取りを掴むため情報収集に奔走する

その厳しい捜査の様子が、完全にドキュメンタリータッチで描かれていて、一瞬も気を抜くことができません。また、ウィンターボトム監督お得意の、手持ちカメラの荒れた映像も多用され、観ているだけで伝わってくるヒリヒリした緊張感がずっと続きます。これ、ものすごいストレスでした。だからこそ、現実にこの事件に関わった人々は、この数倍、いや数百倍のストレスに曝されていたであろう事が、容易に想像できます。

たとえ、当時の世界情勢やパキスタンの現状に詳しくなくても、緊迫したサスペンス映画として見ごたえ十分です。実話の映画化という事もあり、誘拐されたダニエルを奇跡的に救い出すヒーローなど何処にもいませんし、事態がドラマチックに好転する事もありません。ひたすら地道な捜査を続けて、捜査関係者たちはほとんどないに等しい手がかりを頼りに、犯人グループに迫っていきます。

愛する夫と再び会える日はやってくるのか

マリアンヌも夫同様にジャーナリストですが、テログループとそれを追う捜査関係者の前では、完全に傍観者でいることしかできません。夫の安否を心配して、いくら感情をむき出しにして泣き叫んでも、なにも事態は進展しないのです。このどうしようもない現実を、なんの救いもないままに、ウィンターボトム監督はただリアルに描き続けます。

こういうシリアスで重い題材をあえて選んだブラピ&ジョリーの表現者としての真剣さに、深く考えさせられるものがありました。それを夫婦、愛、感動という言葉で簡単に括ってしまうのには、かなり抵抗があります。その宣伝文句を信じて劇場に足を運んだOL達が観ているだけで激しいダメージを受ける様子が想像できます。娯楽という地平からは一番遠くにある映画ですが、これを観なければ、この誘拐事件や9.11以後のパキスタン情勢すら知らないという人も多いのではないでしょうか。そういった点から見ても大変意義深い作品だと思います。

余談ですが、『マイティ・ハート/愛と絆』は『E.T.』や『ジュラシック・パーク』、『トランスフォーマー』などで知られる映画配給会社UIP最後の配給作品でもあります。日本で37年もの長い歴史を誇るUIPですが、米メジャー映画会社の業界大再編の流れの中で、今年いっぱいで解散することとなりました。スクリーンに映し出されるUIPのロゴマークを観るのもこれが最後かと思うと、少し感慨深いものがあります。

『マイティ・ハート/愛と絆』は11月23日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズ他にて全国ロードショー

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