BitTorrent日本法人代表取締役社長 脇山弘敏氏

BitTorrentは22日、都内のホテルを会場に「BitTorrent Conference 2007」を開催した。ここでは、日本法人の代表取締役社長を務める脇山弘敏氏の講演の模様をお伝えする。

同氏はまずBitTorrentの日米での状況の違いを紹介し、「日本を除く全世界では、BitTorrentはインターネット・ファイル配信のデファクト・スタンダードといえる地位を占めており、トラフィック量の40%程度を占めるが、日本国内でのトラフィックは5%以下」とし、日本国内ではまだまだこれから市場を開拓していく必要があるとの認識を示した。

コンテンツ配信に適した「BitTorrent」

BitTorrentは、P2P(Peer to Peer)技術に基づくファイル配信システム。技術的な発展経緯として同氏は、ファイル配信モデルを「サーバからのダウンロード」「従来型P2Pでの配信」「BitTorrent」の3段階として示した。サーバからのダウンロードでは、ファイルの改ざんや不正コピーコンテンツの流通といったリスクは低い一方、サーバの転送能力が制約となることが多い。従来型のP2P技術では、ネットワーク上に多数分散したPeerノードからファイルが配信されるため、転送帯域を大幅に拡大できる一方、内容が不正に改ざんされたファイルが流通するリスクがあったり、不正に配布されたファイルの流通を止めることが困難といった問題がある。BitTorrentはこの両者のメリットを組み合わせる形で構成されており、中央に置かれた「トラッカー」と呼ばれるサーバがファイル配信を行なうPeerを管理する形態となっている。トラッカーはファイルのハッシュ値に基づいて同一性の確認などを行なうため、不正な改ざんなどを防止できるという。

コンテンツ配信モデル

同氏はBitTorrent以前の技術による大量ファイル配信の問題点として、「大規模なソフトウェアのアップデートなどでは、ユーザーにアップデートが行き渡るのに数カ月かかる例も珍しくない」「ニュース・サイトなどでは、社会的に注目を集める大事件などが起こった際にはトラフィックが急増し、1年分のCDN(Contents Delivery Network、コンテンツ配信ネットワーク)の使用料予算を1日で使い切ってしまうこともある」などの例を紹介し、利用可能な帯域幅が狭いことや、CDNを利用する際のコストが高いといった問題をBitTorrentが効果的に解決できるとした。

従来のコンテンツ配信の問題点

角川グループなどと提携

なお、米国ではBitTorrentは「自社Webポータルによるコンテンツ配信サービスの運営」「ASPとしてコンテンツ・ホルダーに対する配信サービスの提供」「クライアント・ソフトウェアのOEM提供」を事業の3本柱としているが、国内では独自Webポータルは手がける予定はないとした。

また、同日付の新発表として、「総務省が支援する業界団体であるP2Pネットワーク実験協議会に参加し、実証実験を開始」「国内CDN事業者であるJstreamとの協業によるCDNとBitTorrentのハイブリッド配信の提供」「角川グループホールディングスがBitTorrent日本法人に出資」の3つのニュースを発表した。最後に同氏は、同社がコンセプトとして掲げる"ALL TOGETHER NOW"を紹介し、「パートナー各社などを含め、将来のコンテンツ配信をみんなの力で実現していきたい」として締めくくった。

米BitTorrentのビジネスモデル

角川グループやJstreamをパートナーとして事業展開することを発表