シリコンバレーの一角にComputer History Museumという博物館がある。有名なENIACを始めとして、コンピュータの歴史に登場するマシンのかなりのものが揃っており、コンピュータの博物館としては世界でもトップクラスではないかと思う。

シリコンバレーを訪れる機会があれば、コンピュータに興味のある方は、是非、一度は見て頂きたい博物館である。場所はシリコンバレーを貫く国道101号線沿いで、サンノゼ空港からサンフランシスコ方向に向かい、巨大な飛行船の格納庫が並ぶMoffett Field海軍基地を過ぎると、その次の出口がMoffett Boulevardである。この出口は、NASAのAmes Researchに行く道で、その次の出口であるNorth Shoreline Boulevardの北方向への出口を降りて、出口の信号を右折して次のブロックの右側という便利な位置にある。

この博物館は、DEC社でPDP-10やVAX11/780などを開発したGordon Bell氏の個人コレクションに端を発し、当初、DEC社のスペースや東部のボストンの博物館のスペースを借りて展示されていたが、2000年にカリフォルニアに移転してきた。そして2002年にはMountain Viewに建物を購入し、現在に到っている。

なお、本稿に使用した全ての写真は、Computer History MuseumのMarketing & Communication DirectorであるBob Stetson氏の許可を得て掲載しているものである。

Mountain View市にあるComputer History Museumの建物。

博物館は、カリフォルニアに移ってからも収蔵品を大幅に増加させており、現在では2万点以上の収蔵品、2万点以上の写真、そして、大量の文書やソフトウェアを収蔵している。

それでは、Computer History Museumの展示室であるVisible Storageを見ていこう。

コンピュータの先史時代

まず、入り口を入った右手のコーナーには、電子式のコンピュータが開発される以前の計算機械が展示されている。勿論、一番最初の展示はそろばんであり、日本や中国のそろばんが並んでいる。そして、その隣には各種の計算尺が展示されている。昔、筆者も使ったことのある横方向にスライドするものだけでなく、円盤型や円筒型の珍しいものも多数展示されている。

そして、その次に、コンピュータの歴史では自動制御の最初のものとして登場するジャカードの自動織機の展示がある。この機械は1801年にJoseph Marie Jacquard氏によって発明された。

Jacquardの自動織機の展示。上段中央が制御用のパンチカード。左はSalesman's Modelと呼ばれる小型のデモ用マシンである。

下段はCharles BabbageのDifference Engineの部品のギア(右)とDifference Engineで計算して作った数表(左)である。実は、Difference Engineの実物が展示されるという噂を聞き、是非、この目でみたいと思い同博物館を訪問したのであるが、まだ、到着しておらず、展示開始は来年にずれ込むのではないかとのことであった。また、Difference Engineの展示は1年間程度で、その後は、また、別の博物館に移るということなので、本物を見るにはタイミングを合わせて訪問する必要がある。

そして、その次に各種の手回し式計算機が展示されており、ここまでが、コンピュータの先史時代である。

各種の手回し式計算機の展示。