携帯電話からインターネットへのアクセスが増える中、携帯電話向け標準OSの戦い、次世代のモバイル技術を巡る戦いが激しくなっている。ハンガリーのブダペストで10月9日まで開かれた年次技術イベント「ETRE 2007」では、現在この市場で最大手の英SymbianのCEOであるNigel Clifford氏が登場し、米Microsoftとの競争、モバイルブロードバンドの課題などについて語った。

英SymbianのCEOであるNigel Clifford氏

Clifford氏が語る3つの戦略

2年半前にSymbianのCEOとなったClifford氏は、Symbianに入社してすぐに、3つの戦略の柱を掲げたという。1つ目はリッチなモバイルマルチメディアエクスペリエンスの実現、2つ目はスマートフォンの量産を促進する新しい価格体系の導入、3つ目は市場でのプレゼンス拡大だ。

2つ目の新価格体系では、モバイル端末を開発・構築するプロセスでのコスト削減を図るもので、ライセンスボリュームが増えれば1台あたりの単価が低くなるというもの。これにより、スマートフォンの価格を下げ、量産を促し、普及を狙う。端末価格はスマートフォン普及の障害の1つとなっており、ここを解決することは重要となる。3つ目の世界展開では、現在、中国などの成長市場で拠点を立ち上げているという。中国市場については、固定ブロードバンドの前にモバイルブロードバンド技術が普及するとClifford氏は見る。このタイミングで中国市場を強化しておくことは不可欠となる。

成長し続けるSymbian

Clifford氏によると、Symbianは現在、年成長率15%程度で成長しているという。3G、さらにはHSDPAのサービス開始が世界的に相次いでおり、モバイルブロードバンド時代が幕を開けようとしている。(Symbianの成長は)「はじまりにすぎない」とClifford氏は自信を見せた。

モバイルブロードバンドで重要となるスマートフォンだが、OSでは、最大手の同社のほか、米Microsoft、Linuxなどが争っている。「Windows Mobile」を提供するMicrosoftは脅威ではあるが、「見方をかえればパートナー」という。Symbianは自社の開発目標に合わせてOSのイノベーションを続けている、とClifford氏。Clifford氏はさらに、市場の70~80%の携帯電話を供給する数社のベンダーがSymbian OSをライセンスしている点、Symbianのシェアはこれまでのところ縮小していない点などを挙げて、優位を保っている余裕を見せた。また、携帯電話ベンダー最大手であり、同社の大株主でもあるNokiaについて、「成功した関係」と述べた。Symbianのガバナンスモデルは成功している、とClifford氏は続けた。

携帯電話市場の展望

3Gが普及期に差し掛かり、すでに次なる無線通信方式が浮上しつつある。HSDPA/HSUPA、LTE(Long Time Evolution)、固定側から発達したモバイル技術のWi-Fi、WiMAXもある。このような状況について、Clifford氏は「標準をめぐる争いはあるだろうが、少なくとも3~5年はこれらすべての技術が共存するだろう」との見解を示した。

だが、モバイルブロードバンドの離陸には、ネットワークだけでは不十分だ。「ネットワークキャパシティ、料金プラン、使いやすい端末、アプリケーションのすべてが揃う必要がある」とClifford氏。中でも、アプリケーションについては、経済モデルをいかにはやく確立するかがかぎを握るという。

「ヘテロジニアス(異機種混在)なモビリティが当面の将来であり、(Symbianは)複雑な状況を喜んで戦い抜くつもりだ」(Clifford氏)。