9月15日、Anders Magnusson氏によって開発された「Portable C Compiler」(PPC)がOpenBSDのリポジトリにマージされた。FreeBSDやNetBSDではソースツリーにはマージされていないが、それぞれPorts Collectionとpkgsrcに同コンパイラが追加されている。FLOSSにおけるデファクトC/C++コンパイラといえばGCC(GNU Compiler Collection)だし、*BSDでもその状況は変わっていない。しかし、いまPCCへの注目が高まっている。

PCCが注目されている理由はいくつかある。プロジェクトごとに焦点が違うが、主な理由は実行速度とライセンスだ。PCCは質のいいコードを生成しつつも高速に動作する。報告されている限りではGCCと比較して5倍から10倍高速に動作するようだ。GCCは新しくリリースされるごとに動作が遅くなっており、新しいバグも追加されている。それに比べて構造がシンプルで動作が高速なPCCが魅力的に見えるわけだ。

またライセンスも注目されている。GCCは今のところGNU GENERAL PUBLIC LICENSE Version 2のもとで公開されている。しかし、将来的にGPLv3へ移行する可能性もある。そうなった場合、リポジトリにGCCを追加しているプロジェクトなどでGPLv3がどういった影響を及ぼすのか、デベロッパには想像しにくい。ただの杞憂にすぎず特に問題はないことなのかもしれないが、法律の専門家ではないデベロッパでは判断できないし、法律家の意見もマチマチだという。その点PCCはThe BSD Licenseで提供されているので、扱いが明らかというわけだ。

しかし、よいことばかりではない。GCCは多くのプラットフォームをサポートし、たくさんのオプションを提供している。それに対してPCCは主にi386をサポートし、コンパイルオプションはあまり提供していない。それにバグもある。GCCを使って開発してきたソースコードをPCCに対応させる作業も簡単に終わるものではない。PCCはそのままではGCCの代わりにはならないわけだ。

しかしながら、FLOSSにおいては複数の選択肢を模索することは健全だ。PCCがGCCにとってかわることはないだろうが、適材適所に使い分けられる可能性もある。同コンパイラとそれに関する動向には今後も注目しておきたい。